自動車と環境

車は私たちにとって、必要不可欠な存在ですが、様々な問題を抱えています。

そこで、自動車が走る上で最も必要な燃料。その燃料について調べてみました。

現在、自動車には様々な燃料が使われています。主な燃料は化石燃料です。しかし石油は無限ではありません、有限なのです。そこで化石燃料に代わる地球に優しい新たな燃料が開発されています。その中でもエタノール燃料に着目しました。

エタノールとはアルコールの一つで糖類を発酵させて作るアルコールのことです。たと

えば、お酒のアルコールはこのエタノールなのです。とても身近な液体です。そしてエタノール燃料とは主にサトウキビやトウモロコシ等を原料にした燃料です。最近では技術の進歩により、産業廃棄物や藁、葉、刈り取った芝生、おが屑や古新聞など、ありとあらゆる繊維質からエタノールを作ることができるようになりました。世界各地で、たとえばブラジルではサトウキビから、アメリカではトウモロコシから、ロシアではユーカリからエタノールを作り出し実用化させているのです。

エタノール燃料は古くからあり、ガソリンが普及する前はエンジンの燃料としてエタノールも広く使われていました。あの有名なTフォード車はエタノールを燃料として走らせることも考えて設計されているのです。

ヘンリー・フォード氏は「エタノールこそが将来の有望燃料」と言ったそうです。しかし残念ならが石油会社はそう考えず、エタノール燃料はその後すみに追いやられてしまったのです。

エタノール燃料はガソリンに比べ様々な面で優れています。下記はそのエタノール燃料の特徴の一部です。

・エタノールは酸素分を多く含むため、エンジン内で燃料が完全燃焼し、一酸化炭素の排出を大幅に減らします。米国環境保護局によるとその減少率は2530%です。

・エタノール混合燃料はオゾン層を破壊する炭化水素の排出を大幅に減らす。

・エタノールの割合が高い混合燃料は窒素酸化物の排出を最高20%減少する。

・エタノールの割合が高い混合燃料は活性有機化合物(Volatile Organic Compounds: VOCs)の排出を最高30%減少できる(VOCsは地上レベルでオゾンを形成する主要因)

・二酸化硫黄や浮遊粒子状物質の排出を大幅に減少する。

 ・エタノールはオクタン価が高い(オクタン価エタノール107 ガソリン98)

・二酸化硫黄や浮遊粒子状物質の排出を大幅に減少する。

・エタノールを3%以下混合した燃料であれば、今ある車に無改造で使用可能(平成14年度の経済産業省検討結果より)

またエタノールなどのバイオマス(生物資源)はもともと大気中のCO2を取り込んだものなので、バイオマス燃料を燃焼させて排出されるCO2は新たな増加分とはみなされず、京都議定書ではバイオマスからのCO2は排出量にカウントされないことになっています。つまりエタノール燃料はCO2を出さない燃料とされているのです。

現在、世界に広がるエタノール燃料として、ブラジルは、年間155億リットル(2004年推定)を生産する世界最大のエタノール生産国です。エタノール燃料のみを使う車や、ガソリンの中にエタノールを約25%混合した燃料を使う車や、昨年にはブラジルの各自動車メーカー(フォルクスワーゲン、フィアット、GM)が、ガソリン、エタノールをいかなる割合での混合燃料にも対応可能なフレックス燃料車を相次いで販売し、現在新車販売台数の40%をフレックス車が占めているのです。また更にGMがガソリン、アルコール、天然ガスのいずれでも走行可能なマルチ燃料車を販売し、ブラジルの航空機メーカーがエタノール燃料を使った一人乗り飛行機を開発するなどエタノールの応用の範囲が急速に拡大しているのです。ブラジルではエタノールがなんとガソリン消費量の約28%を代替しているのです。そして今後も更に代替率は高まると予想されています。

またアメリカでもエタノール燃料に対する関心は極めて高く、

トウモロコシから生産するエタノールを10%混合する「E10」や85%混合する「E85」と呼ばれるエタノール混合燃料が中西部を中心に普及しておりエタノール生産量は、2004年には前年比21%増の34億ガロン[130億リットル]にも達しました。またスウェーデン、カナダ、フランス、中国、ベトナムなど世界各地でエタノール燃料への取り組みが開始されています

しかし日本では政府が来年一月から、沖縄県でサトウキビから作ったエタノールをガソリンに3%混ぜて公用車に使用する実験を開始することを決めたばかりです。環境省および経済産業省がガソリンへエタノールを10%混合した燃料(E10)への転換を2008年度を目処に実施する方針を固めましたが、日本での普及は難しいとされており、日本ではアルコール原料になるほど農産物は余っていません。また原料作物を輸入したり、アルコールを輸入することは、世界の食糧需給バランスが崩すことになります。以上の点から、日本でエタノール燃料が普及することは難しそうです。しかし、広がりつつある砂漠地帯や発展途上国に緑化や地域活性化も兼ねて新種のアルコール用穀物を大量に植えると言うことは十分考えられます。

人類はこれまで二度の大きな革命を成功させました。
一回目が農業革命。二回目は産業革命。そして三回目は地球環境への負荷を抑えつつエネルギー需要を解消する、循環型の社会の実現をテーマとする燃料革命となるのではないでしょうか。