バクシ版アニメ映画「指輪物語」感想
巷では悪名高きバクシ版アニメですが、PJ版映画人気に便乗して発売されたDVDを買って見たところ、そんなにひどく言わなくても…というところも沢山ありました。私なりの感想など書いてみたいと思います。公開になったとき、確かに映画館で見たと思うのですが、原作を読んでいなかった為もあり、全く覚えていませんでした。例の実写をアニメにしたという手法が、全然素敵では無いなあと思ったくらい。
あれが「指輪物語」だと言われたら、確かにファンは怒るだろうなと、今なら思います。PJ版がある今だからこそ安心して、アニメを冷静な目で、見られるんだろうと。《馬好きの視点》
馬はどんな風に出てくるでしょうか。アニメと、実写をトレースしてアニメにした物と、二種類です。まず、黒の乗り手の馬。アニメと、実写と二通りあります。はじめにフロドが木の根本に隠れるところ(PJが真似たと言われる構図)は、アニメの馬。鞍なしで乗っているナズグルが降りると、なんと道ばたの草を食べはじめるのでした。なんて素敵なリアリズム。これが自然な馬です(笑) このワンシーンで私はこの映画が好きになりました。
ブルイネンの浅瀬で、フロドに迫る黒の乗り手は実写です。ちょっとこのシーンはもたつくんだけど、最後に、待ち伏せしていた2騎の黒の乗り手の鼻先を、アスファロスが駆け抜けるシーンがちゃんとあったのよ。これはポイント高いです。アスファロスは、途中からフロドを乗せて、裂け谷に向かいます。でも、乗ってきたのはグロールフィンデルではなく、なんとレゴラスなのでした。手綱はつけているけど、鞍なしでした。白い、動きの柔らかなアニメの馬。対するは実写の馬で、かなりアンバランスな事は確かでしたけれども。
ビルは、ホビット庄からホビットが4人で旅立つ時にすでにひいています。途中で、サムがのって他のホビットがひいているシーンがあるのだ、なんで?(笑)
風見が丘でナズグルの剣に傷ついたフロドは、ビルに乗って裂け谷に向かいます。これは、原作に忠実でグッド。
モリアの入り口では、ビルは湖の化け物が襲ってきても驚きもしないで、ぼ〜っと立っています。これは減点。やっぱりここは驚いて逃げないとね。ガンダルフがホビット庄に来るときの馬は茶色い馬で、アニメです。その後、サルマンに会いに行く時に乗っているのは芦毛で色は灰色、これもアニメ。どうもすでにこれが飛蔭らしくって、最後までこの馬に乗っています。ヘルム峡谷に最後に駆けつけるところ、何故飛蔭より早い馬がいるのかは、不思議でした。というか、他はみんな徒歩だったはず。
ローハンの騎士達はみんな実写なのです。実写だと、黒いシルエットだけで、顔もほとんどわからない。ついでにオークも実写で、このあたりになるとストーリー展開もとっても駆歩になってしまいます。
ただ、シャグラト達を包囲する騎士達や、ヘルム峡谷の騎士が実写で、つまり本物の馬なので、馬スタントを見ているぶんには楽しいです。驚いて立ち上がった馬の後ろに、スタッと降りて、そのまま剣で戦いはじめるとか。さすがだなあ、なんて、かなり視点がずれてしまいますが…《良かったところ〜馬以外で》
バクシ監督は、「指輪物語」アニメ映画化の企画が先にあって、選ばれたんだそうです。PJみたいに自分で企画して、映画会社を探したのとは、だいぶ違いますね。ただ、彼自身は原作「指輪物語」のファンだそうです。まず、今のハリウッド映画のように、音響が過剰でないということ。映画全体が地響きをたてる様な印象は無いです。だから、素朴な伝説的な印象があっていいです。特に前半。
ちょっとしたエピソードで、入れてくれて嬉しかったところが、いくつかあります。
ビルボが旅だってから、17年経った事になっています。ブリー村の踊る子馬亭でのシーンでは、フロドがテーブルの上に乗って歌いながら踊っているし、メリーが外に出て二人の黒の乗り手を見たりしています。アラゴルンは折れたる剣を持っているし。裂け谷では、ビルボがフロドもつ指輪を見たがった時に、フロドが殴りたい衝動に駆られた、なんてシーンもある。エルロンドの会議はかなり簡単だけど、ビルボも参加している。ロスロリアンでは、サムもガラドリエルの鏡をのぞいている。
などなど、いろいろ、前半はわりと丁寧にお話が進んでいます。フロドとサムがゴクリと旅をするところなども、すねるスメアゴルなどいい感じなんですよ。しかし、それは無いだろう、というところも沢山あって、続編が作られずに終わってしまったのは、頷けるなあと思ってしまうのでありました。
《困ったところ》
まず、なんと言ってもキャラクターのデザインが悪い。きっぱり。
ホビットの3人は、つぶらな瞳でかわいい。でもサムは歯が欠けていてひどいぶ男になっている。アラゴルンは、コナン・ザ・グレートみたいな、とっても布の少ない服で、ノースリブで腕は丸出し、ミニスカート(違)の下は生足。顔もハンサムじゃないし、口元などは動物アニメみたい。ボロミアに至っては、まるでバイキング。分厚い髭だし、牛のような角のある兜をかぶっているし、やっぱりミニスカートに生足だし。
ガンダルフ、レゴラス、ギムリあたりはまだいいとして、サルマンは真っ赤な衣装なのだった…。
さらに言えば、エオメルはいない。というかいるらしいんだけど、実写のシルエットだけで、キャラクターとしてストーリーに関わっていないのよ。 お話が「二つの塔」に入る頃からものすごく駆け足になってしまって、3人がエオメルに会うシーンもないし。さらに、DVDに関して言えば、ヘルム峡谷にガンダルフが駆けつけて勝利を納めたところで「こうして中つ国に平和がもどった」とまで言ってしまうのだった。それはいけません。あおり文句に「ロード・オブ・ザ・リング」の続きがここに!ってのはまだいいとして、お話を終わりにしてはいけないよね。「指輪物語」はさらに続きますということは、どこかに示さないと…。
《その他》
私の持っているDVDは、音声が英語と仏語、字幕は8カ国語入っています。中国語などはわからないけど、見ていて面白いです。フランス語は、ビルボがビルボン、フロドがフロドン、ピピンはピパンになっているのです。なんか、変でしょ。でも、フランス語の文章に埋もれて聞くとそれらしく聞こえることは確かなんですがね(笑)
ただし、現在発売中のDVDは、日本語と英語だけかもしれません。
日本語字幕は、どういう考えでつけたのかわからないけど、え、そうなんですか?というところもありますが、馳夫とか、袴帯家とか、瀬田訳をかなり尊重しています。原作の瀬田訳ファンとしては、読みやすい事は確か。
英語の台本で、私が一番気になる、というより他は聞き取れないんだけど、ここだけはわかるという、サムのセリフ。フロドを呼ぶときに、しっかりミスターがつけてあって、聞きやすいです。そんなわけで、「指輪物語」ファンとしては、見なくても全然かまわないと思いますが、見ても、それなりに楽しめる映画だとは思います。レンタルでも十分かも。
◇「指輪と映画と馬トピック」随時更新中です。関連する話題や情報などですので、お時間のあるかたは合わせてご覧くださいませ。
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