夢日記 第一夜   おーい、と鳴く猫 menu Next
 夜道を家に向かっていた。黒板塀の続く寂しい道だ。月が異様に明るい。
 蒼みを帯びた影が自分の前をするすると這ってゆく。ときおり街灯の光でその影がゆっくりと後ろに回り、また足元から黒い影がむくむくと成長する。その動きが自分自身よりも活き活きとしているようでイライラする。しかし、外灯が近づくたびに気になって自分の影から目が離せない。
 ふいにどこかから、おーい、という長く尾を引く声が聞こえる。脅かすためにわざと低めたような、潰れた声だ。
 再び、おーい。声のした方角に目をこらすと、闇の中にうずくまっているものがある。はっとして足を止めると、闇を取り込んだような色の大きな猫がいる。こちらを見て、おーい、と鳴いた。
 私は思わず怒鳴った。コラーッ! 自分の声で目が醒めた。