宇多田ヒカルは歌っている姿が非常に魅力的である。たとえば、肩で大きくリズムを刻んで「 だから for you 」とやるときの、その横顔にエロティシズムさえ感じる。しかも、声質も曲調もけだるいハード・ボイルド系である。独特の日本語の扱い方が耳につくからか、歌詞の意味まで深く伝わってくるような気がする。ウマイとほめるしかない。
宇多田ヒカルは、ネット上でも存在感がデカい。たとえばライブの実況録音らしい椎名林檎とのデュエットが比較的容易に手に入ったりする。アカペラのスキヤキソングも出回っている。こんなものまである。
夜もヒッパレで宇多田ヒカルの歌に当たる歌手がときどき言ったりするが、日本語の発音やアクセントの置き方が特殊で難しいということだ。そうかもしれないが、「だいたいきみもずるいんじゃないかい」などと聞こえたとしても、言語感覚的に理解してはカラオケでは歌えない。
巧い歌手は皆そうだが、言葉の響きを楽器の音色として扱っている。「誰を想ってるんだろう」を「誰を想ってるん、ダイハード」と発声してもいい。実際、彼女の場合は歌詞もいいのだが、歌詞でない部分も聴きどころであったりする。
曲作りもいい。『 Addicted to you 』のサビもいいが、直前のこういうところなんて心地よい期待感がある。『 Wait & See 〜リスク〜 』のサビの前の部分もそうだ。
総じて完成品だ。したがってこれで終わりかもしれないとも思う。