海を感じる時

海を感じる時
「海を感じる時  中沢けい  講談社文庫」


中沢けいのデビュー作です。
みずみずしい作品です。
高1の私が、同じ高校の2学年先輩の高野さんにキスされてから、
高野さんに心ひかれていきます。
高1の私の父親は亡くなっていて、母親と二人暮らしです。

さがった前髪を、そっとかきあげてくれ、、唇があわされた。
案外に唇はつめたかった。
おそるおそる、舌がしのびこんできたかと思うと、歯のすき間をなめて出ていった。
「初めて」
「うん」
「僕もだ」


これって不良のする事じゃんか。
私は、中学、高校一貫教育の、横浜のカトリック系の男子校にいたから、
男子学生と女子学生が、学校でキスするという高校生活なんて、想像もつきません。
(本当は羨ましいです。)
私の高校は、男しかいなくて、授業の間の10分休憩はシーンとしてました。
なぜかというと、皆が、休憩時間に、勉強のために、参考書を読んでいるからです。
こんな恐ろしい高校生活を送りました。
勉強が大変で、毎日の睡眠時間は、3時間30分でした。(H.P作者)


私と高野さんは、肉体関係をもつようになります。

「あたし、あなたが欲しいと思うなら、それでいいんです。
 少しでもあたしを必要としてくれるなら身体でも」
自分が、だんだん恋愛劇のヒロインになることに、前のめりに酔っていく。
「やっぱり、帰れよ、俺は四時の電車で帰るよ」
カバンを持って、扉のノブに手をかけた、その手の上にすばやく、
私の手をかさねた。
「いや」
「どうしてもか」
「ええ」
「部はやめるの、もう俺に会わないかい」
「うん」
高野は深いため息をついて「俺、だめだからなあ」と口の中で言い、カバンを置いて、
長イスのはしを、指さし、「そっちを持ちなよ」と言った。
私と高野で二つの長イスをあわせた。

これって、許されるの、学校でやるんだよ、信じられない。
はい、私の高校生活ですか、3時間30分睡眠でふらふらなのに、
体育の授業で1500m走をさせられ、ゴールしたあと、苦しくて、胃液を吐いて、
グランドに倒れ込む毎日を送っていました。(H.P作者)

高野は私を避けるようになるが、私は高野を追いかける。
「あなたは、私に会えば身体を求めてしまうことをおそれているようですが、私はそれでもいいんです。
あなたが、私を何らかの形で必要として下さるならば、それで。」

ああ、女はこわいなー。

私と高野の関係を知った、私の母はおこり、私とのバトルの毎日が始まります。
母は自分の娘が男と肉体関係があるなどとは汚らわしい、考えただけでぞっとする、
いやらしい、淫らだ、といった。
きったならしい、顔をみているのもいやだ。お母さんはちゃんと生活してきた。
それもこれもあんたがだめにしてくれた。生きてた意味がないと言います。

川上未映子の「乳と卵」でも、母と娘がバトルしていたけど、母とバトルする娘って
多いようですね。
「乳と卵」紹介はこちらへ
私が、いつ、どこで海を感じたかは、読んでのお楽しみです。
中沢けいの、みずみずしい感性があふれた小説です。
好きな本でおすすめ本です。

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