夢日記 第六夜 パーティ |
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玄関灯の下で招待状を確かめた。 〈今夜八時きっかりにおいで下さい〉 時計を見るとまだ八時にまでにはだいぶ間がある。しかし、中からは陽気な会話が聞こえていて、パーティはすでに始まっている様子だ。私はしばらくためらっていたが、思い切って呼び鈴を押した。 遠くで鐘の鳴る音がして、会話が止んだ。しばらくすると、どうぞ、と男の声がした。この家の主、Kだった。 中へ入ると、小学校以来の旧友たちは温かく私を迎えてくれた。 「これで十人全員がすっかり揃ったわけだね」とKが言った。 私を入れて男女五人ずつの集まりだった。なぜ〈八時きっかり〉と指定したのかが気になってはいたが、誰も何も言わないのでそのうち忘れてしまった。中央の真っ白なテーブルクロスの上には薔薇の花が飾られ、並んでいる御馳走も申し分がない。仲間たちは最高だった。私たちは、大いに飲み、食い、かつ語り合った。 柱時計が八時を打った。同時に呼び鈴が鳴る。全員が怪訝な表情になり、会話がぴたりと止んだ。 「ごめんください」とドアを通して男の声が聞こえる。「Sです。こんばんわ」 Sは私の名である。 「おい、お前が来たぞ」とKが言うと、皆も笑った。 私も笑おうとしたが、なぜか口許が引きつってしまい、声が出ない。 私のパートナーが悪戯っぽく覗き穴から外をうかがった。 「まあ、本当にあなたよ」 皆の視線がいっせいに私に集まった。呼び鈴がもう一度鳴る。 「開けて下さい。Sです」 私の声によく似ている。 「そういえば、そいつは薔薇の花を持ってきたか?」 「九本しかなかったわ」 誰かがテーブルの薔薇の数を報告した。Kがドアを開けた。 薔薇の花を一輪手にしてドアから入ってきた人物は、私自身だった。 もう一人の私が、人指し指を突きつけてきた。 「お前は誰だ?」 私は後ずさりした。無駄なことだった。たちまち両腕をがっちり押さえられた。皆の目付きが変わっていた。人間ではない。魔物の目だ。 「殺せ」 ヒュン、と耳元で空を切るような鋭い音がした。とたんに首筋に焼けつくような痛みが走り、目の前が真っ暗になった。 |