夢日記 第九夜   ハロウィン Previous Menu Next
 ハロウィンの夜で、私は悪魔に仮装していた。家を出ると待っているはずの友達がいない。
 祭の会場までの道がわからないので困っていると、魔物の格好をした行列が前を通った。半人半獣の面をつけて、私と同じような白いマントを羽織っている。行列の最後尾にひそかに混じってついてゆくことにした。彼らは楽しげに艶話に興じながら歩いてゆく。内容からはどんな年齢の人達なのか見当もつかない。仲間だけに通じる隠語なのか、時々聞きなれない言葉も混じっている。
 やがて古い洋館に辿り着いた。中へ入ると羊の頭をかたどった燭台がたくさんあり、蝋燭が灯っているほかは真っ暗だ。急に誰も口をきかなくなった。並んだまま静かに階段を昇ってゆく。階段は玄関の広間からゆっくりとカーブを描き二階に通じている。壁面には飾り棚がいくつかあり、棚の一つにコケシに似た木彫の人形が三つ、燭台からの不安定な灯りで気味悪く揺らめいている。
 その前を通りすぎようとしたとき、どうした弾みかカタカタと音を立てて人形の首が回りだした。
 皆がその音に立ち止まる。緊張したような空気が張り詰めた。三つの人形はさらに音を立てて首を上に伸ばしはじめ、もとの高さの二倍ほどにもなった。そしてその人形はまっすぐに私を見て、確かに、にやりと笑ったのだ。
 すぐ前にいる白衣の者がさっと振り返った。
「おまえ、人間だな」
 そのとき白衣の下から生えているしなやかな尻尾に初めて気がついた。