夢日記 第十夜 鰐 |
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道のあちこちに屋台が出ている。たこ焼きや焼きそばを食べながら歩いている人たちが大勢いて、自分も何か買い食いしようか迷っている。日本人だけではなく外人も多い。国際的な祭典か何かがあるのかもしれない。ほとんどの人が同じ方向に向かっている。 石畳の道に沿って等間隔で柳が植えられている。黒い金属製の柵の向こうは堀で、石垣の三メートルばかり下を流れている。幅は六、七メートルばかりあるだろうか。しゃれた感じの古風な橋がところどころに架かっていて、向こう岸の歩道にもやはりたくさんの人が行き交っている。 堀の中には大きな鯉がぎっしり詰まって泳いでいる。ぬらぬらした黒い背ビレが見渡す限り水面に並んでいる。折り重なって、巨体の半分ほどを空気にさらしている鯉もいる。大きさはどれも大人ぐらいはあり、三メートルを超える巨鯉もいる。 思わず立ち止まって覗き込む。橋の上にも鯉を見物している人たちもいるが、ほとんどの人は横目で眺めるぐらいで祭見物に忙しい。巨大な鯉を見て驚いている外人がいて、カメラを構えている。なんとなく日本人として誇らしく思う。 堀はやがて直角に曲がった。祭の会場は堀沿いではないらしく、人の流れはまっすぐ続いて、遠く横断幕がかかっている公園の中に吸い込まれていくようだ。何か書いてあるが、字がかすんで読めない。そもそも何の集まりなのか気にはなったが、私は鯉に興味を奪われており、堀を追って賑わいから離れていった。 歩道は普通のアスファルト舗装に変わり、堀があるほかは普通の町並みになっている。さらにしばらく行くと堀は急に行き止まりになった。水は黒々として深そうで、鯉の姿も見えなくなっていた。ただ、ときどき水面がざわめいて、たくさんの生き物がいることはわかる。 いつの間にか側に大川君がいる。何か釣ろうとして撒き餌をしている。すると巨大なものが近づいてきて、水面を弾くようにしてそれを食った。 さらに撒き餌をしていると、石垣を這い上がるようにして真っ黒な生物が姿をあらわした。まるで巨体を休めるように石垣に寄りかかっている。 それは真っ黒な頭部だった。頭だけでたっぷり四メートルはあり、柵を超えて口の部分が真上に突き出している。一瞬カエルだと思った。しかし、明らかにそれはワニで、たぶんアリゲーターだった。ワニは大きな口を開けて、大川君が投げた餌をばくりと食った。 |