夢日記 第十七夜 ヘリコプターで引越し |
![]() ![]() ![]() |
私は砂漠のほとりにある小さな町に家族で住んでいる。町といってもほとんど人影はない。日本でよく見かけるような木造住宅が、主のないままただ並んでいるばかりである。 私がいるのは木造二階建のアパートで、壁面にはモルタルも塗られておらず、屋根は瓦葺きだ。それにかなり年数も経っており、あちこち破れている。二階は中央に廊下があり、両側に部屋が並んでいる。一番奥の左側、六畳一間がわが家だ。住人はみんな貧乏そうな者ばかり。どの部屋のドアも暑いからか、あるいはだらしなさのためか、開けっ広げである。 窓からは砂漠のほかには給水塔のような白い塔が一つ見えるだけで、それも錆びれたまま長く放っておかれている。 私たちはみんな世間から見捨てられていると自覚している。食料は、どこかの空家に入って缶詰類を調達してくればいい。この頃ではずいぶん遠くまで行かなければならなかったが、仕事もなく、なすべきことも分からない毎日では、それもいい暇つぶしになっている。結局のところ、ほとんどの住民が部屋でごろごろして毎日過ごしている。 急に外が騒がしくなった。砂の下にヘリコプターが埋もれているのを妹が見つけてきたのである。みんな見違えるように動き出した。アパートの住民全員でそれを掘り出す。燃料はどうか、計器はどうか、てきぱきと修理し、使えるようにしていく。皆の考えは一つ。引越しだ。 何日も経たずに、すっかり新品同様の大型ヘリコプターが出来上がった。今度は手荷物の積み込みが急ピッチで進んでいく。けれども、私だけは何を持っていこうか考えて、もたもたしている。やっと積み荷を終えたところで、部屋に鍵を掛け忘れたことに気がつく。 皆は鍵なんて役に立たない、早く乗れと言うが、どうしても気になって、忘れ物があるからと嘘をついて部屋に戻る。戻ってみるともう持っていくべきものは何もなかった。鍵だけでも掛けていこうと思ったが、長く使っていなかったので錆びついていてなかなか掛からない。エンジン音が聞こえる。どうして戻ってしまったのだろう。 待ちきれなかったのだろうか、ヘリコプターは飛び立ってしまう。自分は白い塔に登って、ヘリコプターが遠ざかるのを茫然として見送っている。 |