夢日記 第二十六夜 赤い靴 |
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公園で一人海を見ていた。ぼんやりしていたらいつの間にか暗くなり、あたりはアヴェックばかりになっている。いたたまれずに欄干を離れて出口に向かう。と、子供の泣き声が聞こえる。目の前の石の台座の上で三つか四つぐらいの女の子が膝を抱えて泣いている。私は可哀想に思って声をかける。 「どうしたの?」 「降りられないの」 確かにこのぐらいの女の子では一人で降りられないほどの高さだ。 「かわいそうに」 両手で抱き上げて足元に降ろしてやる。 「ありがとう」 女の子はぴょこんとお辞儀すると、赤い靴をぱたぱたと鳴らしながら街の方に走り去った。 翌日の早朝、同じ公園のベンチで目が覚めた。私は浮浪者になっている。これから街に食べ物を求めに行かなければならない。石の台座の側を通りかかると、赤い靴を履いた女の子が待っている。 「おじさん、おはよう!」 「おはよう」 台座の上に持ち上げてやると、女の子はにこにこ笑って、ありがとう、と答えた。そうしてやるのが、いつもの習慣なのだ。 女の子が台の上で膝を抱えるのを見ると、私は街へ出かけて行った。 夢はここまで。目が覚めてから山下公園の赤い靴を履いたブロンズ像に思い当たった。 |