夢日記 第二十九夜   土産物街 Previous Menu Next
 夢の遊園地行きの船はかなり大きな客船である。どこかからの連絡船というわけではなく、あくまで遊園地行きの船だ。船内には映画館や演劇場、銭湯などの施設が揃っており、宿泊もできる。遊園地を利用せずにゆっくりと船だけで過ごす人もいる。どちらかと言うと高年齢向きに出来ている。

 この船が実は改造された戦艦だったという夢を見たこともある。最終的にはプールサイドの桟橋に着いたので同じ船だと思ったわけだが、違う船なのかもしれない。

 その時は船の中で可愛い女の子と知り合いになった。二人で船内を探検した時に船員用の特別な出入口を見つけた。ただの入口ではなく気密室のハッチになっていて、狭い部屋の反対側のハッチを開けると、まるで宇宙船のような造りである。怪しげな部屋や仕掛けをいろいろと見ていくうちに屈強な船員に一度は捕まってしまうが、彼女の愛嬌のおかげで逆に二人とも可愛がられる。そして国際問題解決のための航海に参加する。

 大掛かりなストーリーだったが、残念ながらディテールを忘れてしまった。
 この船の出航場所も何度か夢に出てきた。

 たぶん房総半島の内房あたりだと思う。海辺の観光地らしい店がところどころ並んだ狭い道路を抜けていくと、突然海が開けて遊園地行きの船着場がある。見かけはさびれたフェリー乗り場のようで、たいてい非常に淋しくて船も着いていない。それより、近くの土産物街に入ってしまうことが多い。そもそも遊園地は船に乗らなければ行けない島にあるというわけではなく、地続きなのだ。
 土産物街というのは、たとえば浅草の仲見世や京都の京極通りのような感じで店がぎっしり並んだアーケード街である。通路が非常に狭く土産物屋ばかりなので、知っている人は坂道のない江ノ島を思い浮かべたほうがイメージは近い。ただし、どの十字路を曲がっても店が限りなく続く、果てしのない土産物街である。
 観光客のために辻ごとに案内表示がある。屋根からぶら下がっているのだが、わざわざ数ヶ国語で書かれている。しかも書かれているのは観光地の名前だ。「宮島⇔松島」「秋吉台⇔八ヶ岳」「摩周湖⇔奈良」などという感じで、その看板の周囲からそこの特産品を扱った店や郷土料理屋などが並んでいるのである。
 あるとき「巌流島⇒」という看板を見つけ路地を覗いて見ると、青空が見えた。路地の先がボート乗り場になっていて昔風の船頭が乗った小さな舟がいくつか横付けされていた。角の土産物屋では木製の櫂がたくさん立てかけてあり、柄のところに宮本武蔵と太い墨で書かれていた。
 ここではたいてい仕事の同僚とか、昔の友人たちとかと一緒になることが多い。最初はみんなで楽しく買い物をしているのだが、そのうちみんなで出口を探して迷うか、一人だけはぐれてしまって延々と迷うことになる。迷いだすとだんだん看板も少なくなり、人も少なくなってくる。そのうちただの飲み屋街みたいになり、いつかあの「夢の洞窟」にいることに気づくのである。
 ふと看板を見上げるとインドか中近東にでもありそうな地名が書かれていることもあった。店も土壁で出来ていたり、見慣れない壷や奇怪な仮面が並ぶ店ばかりになっている。いつの間にか歩いている人も白い布をまとっていたり、妙にカラフルな民族衣装を着た人ばかりである。このときは慌てて引き返してなんとかまた仲間と顔を合わせることが出来た。