もし生物がいなかったら、地球は太陽が成長するにともなってずっと温暖化し続けたはずだ。ところが、現実にはこの36億年のあいだに太陽の出力は25%上がったのに対して、地球の平均気温はほとんど変化していない。地球に住むあらゆる生物、海洋や陸地や大気。これらがすべて一つの生き物のように自然に体温調節をしている。温度に関してばかりではない。大気の組成も同じように一定に保ち、海の塩分も均質に保ち、宇宙からの光を有害なものと有益なものに分け続け、生命の水を循環させ続けてきた。
巨大集団であるヒトという生物種は、増殖しすぎて深刻な惑星病の病原になってしまった。ガイアは「過剰性霊長目病」、すなわち人間感染症を患っているのである。
地球を一個の生物としてみた時、人類の一人一人は病原菌として捉えられる。主症状として「皮膚剥離」があらわれているとラヴロックは言う。人間は七割の皮膚に火傷を負うと死に至る。熱帯林の伐採、砂漠化、表土の浸食。これらは、経済活動が主因で起こるものだ。そのほか核皮膚炎、炎症、発熱、メタン遺伝子病、消耗、酸消化不良症など、すべて人間が病原菌として地球に引き起こしている諸症状である。
結末は4種。@地球の防衛機構に人類が撲滅される。A地球と人類が長期にわたる消耗戦で慢性病となる。B地球が人類に殺害され人類も死滅する。C地球と人類が相互利益に基づき共生協定を結ぶ。