雑感78 〜 同姓同名の不思議 Previous 雑感メニュー Next
 最近のことだが、母が手芸品を或る店で委託販売する機会があった。その準備で忙しいのを理由に、秋分の日には誰も墓参りに行かなかった。わが家としては珍しいことだ。手芸品フェアには十数名が参加して、それぞれの品を別々のワゴンに飾り付けた。ワゴンには自分のブランド名をつけることになっていて、多くの人は自分の苗字をブランド名としたが、母は「夢物語」に決めていた。
 販売当日、「夢物語」の隣に、自分と同じ苗字のブランド名を付けたワゴンが並んでいて母は戸惑った。それほどありふれた苗字ではないので親戚かと思ったが、まったく知らない人で単なる偶然であるらしかった。しかし、偶然はそれで留まらなかった。さらにその隣のワゴンにまたしても見覚えのある名前を見つけた。それは売約済の名札で、そこには「江原勇」と記されていた。それは旧姓であり、しかも戦病死した母の実兄の名だった。
 母にはこんなことがよく起こるが、興奮して皆に話してから一ヵ月も経つと、すぐに忘れてしまう。つい先だっても、火事の夢で飛び起きたおかげで、偶然お風呂の火が点けっぱなしである事に気がついた。すでに空焚き状態で、本当の火事になるところを助かったのである。