雑感101 〜 クイズの作り方 Previous 雑感メニュー Next
 何度か書いていることだが、論理思考型クイズ(英語では PUZZLE と呼ばれるもの)は、ある程度パターンが出尽くしている感がある。この種の問題に馴染んでくると、特に数学的問題と論理学的問題は問題文を一読するだけで解法が浮かぶようになる。
 そうなると、単なる類題だと思って解く気が失せることもある。しかし、クイズを掲載する側で類題を排除したりすると、海外のクイズを翻案しているこのHPでさえ、いずれネタが尽きてしまうことになる。
 クイズが難しいと思ったら、クイズ自体が難しい場合もあるが、単に解法に心当たりがないということもありうる。もちろん数学的すぎたり、論理学的・科学的すぎたりする場合もある。できるものなら避けたいが、自分では絶対に解けないような数理クイズでも、解答も含めて面白いと思ったものは載せたくなってしまう。
 どこまでがクイズでどこからが専門的問題なのか線を引くのは難しいが、義務教育程度の知識で解けることが一つの基準とはなるだろう。ひらめき系の問題や、漢字や英語などの語彙力問題なども、あまりに知識が問われたりすると、それは単なる常識問題になってしまう。
 もし必要な知識があるとすれば、その旨を問題文に書かなければならないし、理想的には必要知識の解説も加えて、しかもなかなか解けないクイズであることが望ましい。そういう意味で、純粋に論理学的な思考が必要なクイズがいちばん面白いと思うし、解いてみたいと思うのである。
 全然クイズの作り方になっていないと思われるかもしれないが、何が書きたいかというと、クイズにある程度まで馴染んでいる人に対しては、もう新ネタはないのだと思ったほうが無難だということだ。
 日本では数百冊のクイズ本を集めている人のホームページを見たことがあるし、海外では1桁上の猛者のHPを見たこともある。クイズ製作をスッパリ諦めるか、そんなに新作が生まれてくるものなら私も作ろうと思うかは、まあ人それぞれだろうが。
 いずれにせよ、新作だと思っても既に存在している可能性は高い。特定のクイズ本で見た問題だと思っても、既に海外では百年も前に活字になっている問題かもしれない。そういう見切りも必要だと思う。
 というわけで、まったく新しいクイズを作る可能性については後述するが、ここでは、元ネタをいかにして料理するかについて書いてみたい。
 @元ネタをより面白く書き換える、A元ネタを発展させる、B別ネタを組み合わせて新問題を作る、という三種類の取り組み方が考えられるだろう。
 世の中にはいろいろな人がおり、オリジナル問題をそのまま載せることはいけないが、少しでも変更を加えれば構わないと思っている人がいる一方で、オリジナルに変更を加えることこそ改竄(かいざん)というもので、オリジナルをそのまま使うことが好ましい形と考える人もいる。
 たとえば「クイズ」の1で紹介している「1ドルはどこへ?」という有名な問題があるが、27ドルを2700円に書き換え、ホテルを小物屋にして、部屋代ではなくスカーフ代にするという書き換えを見かけたことがある。むろんオリジナルとは違ってはいるが、元ネタがたいへん有名で、すぐに推察がついてしまうので興ざめしてしまう。
 この場合には、オリジナルを紹介するほうが好感が持てるというものだ。出典が分からなくて正確に示せないとしても、よりオリジナルに近い形で紹介文も添えてみたい。まあ、この問題には個人的に愛着があるのでそう思うだけかもしれないが。
 ちなみに、オリジナルに近いと思われる原文は以下のとおり。たいへんシンプルである。出所は不明。
Three people check into a hotel. They pay $30 to the manager and go to their room. The manager finds out that the room rate is $25 and gives $5 to the bellboy to return.
On the way to the room the bellboy reasons that $5 would be difficult to share among three people so he pockets $2 and gives $1 to each person.
Now each person paid $10 and got back $1. So they paid $9 each, totalling $27. The bellboy has $2, totalling $29.
Where is the remaining dollar?

 元ネタが明らかだったとしても、シチュエーションを工夫するとか、解説をつけるとか、読み物として面白くなっていればばいい。そういう努力のあとが推察できないようでは、挑戦しがいがない。ホテルのクイズも、助さん角さん黄門様御一行が番頭に騙された話ぐらいにしてくれれば、少なくとも笑えるのである。短ければいいというものでもない。長くても面白ければ推理小説として売れるかもしれない。
 元ネタを発展させるという意味では、もっと多くの人に泊まらせることにして、ボーイがくすねたり、メイドが間違えて釣りを多く渡したりして複雑化させてもいい。また、それぞれの部屋は本当は何ドルだったかなどという問題にすれば、ほぼ元ネタは想像つかなくなるし、むしろ発展的な新問題となる可能性もある。
 別ネタとの組み合わせは注意が必要で、暗号問題とひらめき系クイズをミックスしたりすると、「クイズ」の「何語?」のようにまったく解けなくなってしまう。暗号を解くと文字が出てくると思い込んでいると、それはまったく別種のクイズになっていて、もはや暗号ではない。しかし、解くほうは暗号解読が失敗したのだと思ったり、二重暗号になっていると思ったりするので、せっかく答えに近づいてもそれが分からず、解けないのである。もっとも、この問題は解けた人がいるので載せている。
 当HPの「黒か白か?」に代表される自分の色を推理するクイズも、嘘吐き問題と絡ませたりすると面白く、Tok's music squareのQUIZ第3問のようになる。通常はクイズに嘘はないという前提があり、しかも白黒問題はかなり高度な部類に属する。これを嘘吐き問題とミックスすると、ちょっとした問題文の落とし穴から、パラドックスがあちこちで生じて複数の解答が出てしまったり、解答不能となることがある。上のHP管理人も誤りを発見して最近書き換えておられる。かく言う私は、そんなに難しいクイズでもないのに誤りを指摘されて書き直ししていたりする。ハハ。
 ともかく、別種のクイズを組み合わせてみると、単なる複雑化ではなく、まったく別種の問題が生まれてくる可能性はある。これはオーソドックスな発想法の一つであり、むしろ新作へのアプローチと言える。