これは楽屋オチなのだが、
解答を募集しても、なかなか寄せられないことがある。難しいから解答が寄せられないのはいいとしても、間違えて書いているとか、解がない欠陥問題である場合がある。あまりにも反応が鈍かったら、問題文を読み返したほうがいい。解ければ反応はあるが、解けなければ報告はほとんど寄せられない。当HPでは、問題文を間違えて書いてしまったのに、ちゃんと解答が寄せられ正解だったという場合がある。
新問題になってしまったわけだ。このように
新問題作成への道は、断たれているわけではない。
クイズを作るに当たっては、
『天才パズル』(三笠書房・王様文庫所収)や
マーチン・ガードナーの『aha!』『Gotcha!』(日経サイエンス)などの基本文献は知識として押さえておきたい。そうした上で
多胡輝『頭の体操』シリーズを読むと、その応用の仕方を学んだりすることもできる。
そういえば、
社会思想社文庫には押さえておきたい文献が多かったと思うが、最近は新刊書店で全刊そろっていることはあまりない。しかし、
クイズ本をたくさん読んで勉強することを勧めたいわけではない。ある程度のクイズのパターンや提出の仕方を頭に入れ、とりわけ
クイズの遊び心をわかれば十分だと思う。
クイズ本の読みすぎは、どちらかと言えばクイズ創作の敵である。しかしながら、
クイズ本を浴びるほど読んでもなお創作意欲を燃やせる人は、もはやクイズ職人とでも呼ぶしかない独自の才能と自信を併せ持った人である。
なお、クイズネタとして意外と気づかないのが
就職試験問題集や
国家試験問題集にヒントを得るというものである。特に公務員向きの問題集にはきっちりと分野別になっているものがあり、中でも
教養一般知能問題集はほとんどクイズ本と言っても過言ではない。クイズを解く基礎演習としてもいいかもしれない。
秘書向きの社会常識問題集も同じだ。中でも常識的言動や行動、マナーに関する設問は、ときどき大笑いできるものがある。しかし、考え込んでしまうような設問も見かける。マジメに取り組むと退屈だとは思うが、この
退屈さを面白さに変える力こそクイズ職人に求められる資質だと思う。
こんなことが書けるようになったのは、
ここや、
ここや、
ここ、それから最近できたての
ここなどにお世話になっているおかげである
(その他たくさんありますが、もしあなたが入っていないと思われるならば、それは忘恩ではなく、遠慮によるものです)。
クイズに大切なのは“ひらめき”と“手応え”である。
主として
“ひらめき”を要するのがなぞなぞ(RIDDLE)で、“手応え”を感じさせるのがクイズ(LOGIC PUZZLE)という分類もできると思うが、もちろん、両方の要素を持った問題も多いのできっちりとは分類できない。
解けた人に「お、ひらめいた!」という
知的興奮を与えられれば、それは面白いクイズである。類題ではあっても、新たに“ひらめき”を加えることで、ずいぶん印象が異なるし、解いてみたいと思わせるものだ。「時間をかければ解ける」と思われる問題は、数学の練習問題と同列になってしまう。それでも、覆面算や橋渡りの問題に代表されるようなクイズが廃れないのは、
暇つぶしに十分な“手応え”があるからだろう。
“手応え”のある問題を作るためには、やはり
数学関係のエッセイや
論理学の本がネタの宝庫だろうし、クイズの基礎知識としてどうしても必要なものである。しかし、それだけではお堅い数理パズルとなってしまう可能性が高い。
“ひらめき”をいかにして得るか。手っ取り早くネタを得るなら、やはり書物だろう。
たとえば、ひまつぶしの雑学本の類。中でも、
偶然の一致の事例を集めた本や、
常識のウソといった本、
おばあちゃんの知恵的な本、
サバイバル読本、昔と今・外国と日本の
習慣的違いについて書いた本などなどである。これらの書物はいずれも
固定観念から脱するヒントが並んでいる。
日常生活の中で閃いたことをクイズにすればいいのだが、そうそう閃かないし、クイズにできるとも限らない。だからこそのネタ探しなのだが、そもそも自分の“ひらめき”感覚が鈍ければ、どんな本からもろくにネタは拾えない。
本当に重要なことは自分の“ひらめき”感覚を磨くことであろう。
というわけで、
固定観念をひっくり返す理論書にあたるのも一興だろう。特に
認知心理学関係の本は面白く読める。既成概念までひっくり返すのなら
科学哲学者・村上陽一郎の著書もいい。人間までひっくり返したければニーチェで
超人気分になるのも悪くない。要するに、
自分自身をいつでも、どうにでも飛ばせると思い込めるぐらい色々な考え方や捉え方を知っておくということも大事だと思う。むろんクイズ作者としては、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』で舞い上がった後で、筒井康隆の『火星のツァラトゥストラ』(中公文庫の短編集に所収)で大笑いできることが望ましく、なおかつ、こういうパロディを自分がやりたかったと悔しがるぐらいの大自意識家であることが望ましい。
なお、哲学思想全般を手っ取り早く知りたいからといって、入門書を買ってはいけない。少なくとも哲学に関する入門書は面白いと思ったことはない。参照用としてなら『現代思想事典』(講談社現代新書)がいいが、
哲学に関しては本人が書いているものの方が圧倒的に面白い。『ソクラテスの弁明』や『パンセ』ぐらいまでの古典ならそう難しいところはないし、ショーペンハウエルでも、エッセイ『読書について』あたりを読んでみるとか、カントでも『美学について』はわりと接しやすいと思うし、役に立つ。
だいぶ脱線してしまった。そんなに時間をかけたくなければ、ビジネス書は割とお得だ。
発想法や
企画術の本には頭を柔らかくする例題としてクイズが引用されていることも多い。