5 web写真展「岩泉線 山峡の細き道」 6 7

「麗しき水の谷」

岩手和井内〜中里

刈屋川べりの遅い春は、水の調べとともにやってくる。山がまだ冬のまどろみから醒め切らぬころから、里の田んぼでは開かれた水口から清水が音を立てて流れ込み、谷のあちらこちらでトラクターがせわしく動き始める。

この谷には、畦にトタン板を埋め込んでいる田んぼが非常に多い。礫が多く畦を作りにくいからなのか、あるいは水漏れしやすい土質なのか、いずれにせよ稲が生長するまで水を蓄えておかねばならない水稲作には不向きな土地であることは間違いない。だが、そんな谷も、この季節だけは麗しき水の谷に変わる。