13 web写真展「岩泉線 山峡の細き道」 14 15

「はさがけと国鉄色」

岩手和井内〜中里

岩泉線沿線を旅していてまず目に飛び込んでくるのは、農家の軒先や田んぼの中に据えられた、この地方独特の高いはさ木である。はさ木を高く作るのは、日照時間の短い谷底で日と風が当たる表面積を確保するための知恵に他ならない。中には農家の屋根より高いものもあり、稲刈りの頃に訪れると、この高いはさ木にはしごを掛け、手作業で稲束を掛けてゆく作業を見ることができる。

線路端の田んぼで、ちょうどはさがけ作業の最中に遭遇したので、許可を得て撮影させていただいた。今日の車輌は「国鉄色」。2001年秋、JR東日本盛岡支社は、鉄道ファンの間で根強い人気を誇るこの塗色を一部の車輌に復活させ、以来岩泉線にも「国鉄色」気動車がしばしば入線するようになった。

私は「国鉄色」の再登場によって岩泉線の魅力は明らかに倍化したと思うし、岩泉線を訪れるファンも「国鉄色」復活によって明らかに増えた。「国鉄色」気動車による臨時列車も設定されるようになり、好評を博している。「国鉄色」の価値を認め、全国に先駆けてあえてこの色を定期列車として復活させた盛岡支社の慧眼を、私は率直に評価したい。