14 web写真展「岩泉線 山峡の細き道」 15 16

「小本川を渡る」

岩泉〜二升石

岩泉線で一番最後に開業(昭和47年)した浅内〜岩泉間は、谷底や断崖絶壁にへばりつくように敷かれた浅内までの貧弱な線路とは対照的な、高規格の鉄道だ。喘ぎながら峠を越えてきた旧型気動車キハ52も、この区間だけは、複雑な地形を堅牢なコンクリート橋とトンネルと長大な築堤で楽々乗り越え、終着駅・岩泉を目指して突っ走る。

こういう線形は長閑な山里の雰囲気と調和しにくいものだが、小本川を渡るこのポイントだけは、大きなYの字を描く川と幾何学的な岩泉線の線形のミスマッチが面白い。

普通に撮ると終日逆光気味になるので、北西方向からのライティングが得られる夏の夕方に上ってみた。太陽が山の端に沈むのが先か、列車が通過するのが先か、冷や汗ものの撮影だったが、狙いは的中。サイドを夕陽で輝かせながら、国鉄色気動車がコンクリート橋を渡っていった。