16 web写真展「岩泉線 山峡の細き道」 17 18

「雨上がる」

岩手和井内

朝から降り続いていた雨が上がり、乳白色の分厚い雲の切れ間から彼方の山々の稜線が姿を現し始めた。まるで水墨画のような風景に、私は圧倒された。これだから山岳ローカル線の撮影はやめられない。撮影に行く前に地図とニラメッコしながら色々考えていっても、こんな風に「いい意味」で裏切られる。「雨だから今日は早く帰ろうかな?」などと考えていた浅はかな自分をちょっぴり恥じた。

ここ岩手和井内は、昭和17年6月の岩泉線(当時の呼称は「小本線」)最初の開業区間の終着駅である。この白い木造駅舎は、開業以来岩泉線の歴史を見守り続けてきた文字どおり「岩泉線の歴史の生き証人」であったが、昨年の2月、老朽化と国道のバイパス工事のために解体されてしまった。山里の情景によく映えた、四季折々に美しい、本当に素晴らしい駅舎だっただけに、残念でならない。