大災害時『一人ではできないお葬式』
保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一
日本文化の中での禁忌事項はいくつかあり、災害時に関係あるものとして排泄行為やトイレ問題を取り上げてきました。もう一つ避けて通れないのが『お葬式』です。最近ではお葬式にかかわる映画が国民の共感を得られるようになり、お葬式の禁忌感は少し変化したようです。しかし平常時のお葬式は専門家が執行してくれるのでのんきに構えていられるのだと思います。
しかし、大災害時に葬祭業と被災者数のバランスが崩れたときのお葬式はどうなるのでしょうか。霊柩車や火葬炉の能力にも限界があります。阪神淡路大震災では2週間を経過しても葬送できない亡骸を、兵庫県は『野焼き』やむなしと判断し厚労省に打診しました(NHKアーカイブス、2009年放映)。幸い横浜市の葬祭業を営む経営者が理事長を務める全国葬祭業ネットが全国から約1000台の霊柩車や寝台車を集合させて亡骸を遠方の火葬場に搬送して野焼きを回避することができたということです。地域の努力も耳にしております。ある商店主は自分のトラックで30体ほど域外の火葬場にお連れしたそうですが、
震災が落ち着くとそのトラックに積んだ商品は購入したくないとの言葉により、やむなく新車に買い替えたそうです。自宅の被害と合わせ痛い出費でしたとのことでした。
大災害時のお葬式は家族だけでできることではありません。しかし、行政力や地域企業力にも限界があります。今でも隣保共同の中で野辺の送りをしている地域が多くあります。しかしその習慣がない都会では地域のボランティアシップが試されることになると思います。昔のこと、『村八分』という社会制裁がありました。残りの二分は、『お葬式』と『火災消火活動』です。この二分は村八分の制裁を加えている最中でも地域の掟として支援を怠ってはならないと認識されておりました。
大災害時の被害者の尊厳を傷つけないよう個人、地域、行政、すべての人たちで大災害時のお葬式を考えなければならないと思います。また、逝く候補者も「お迎えが少し早く来たと思えば…」などとおっしゃらずに気持ちよく迷惑をかけずに送られるよう地域防災に積極的にご参加していただきたい。
今年のような猛暑の中で2週間も亡骸を『野ざらし』にはできない。