釜石の奇跡と釜石の不作為
保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一
東日本大震災は、2年余りが過ぎ、様々な検証や評価が行われ始めています。
こうありたいことや、繰り返したくないことなどが見直されています。一つの地域の中で明暗を分けた事象が起きたことについて複雑な関係が発生しています。
『釜石の奇跡』として中学生や小学生たちの理性ある避難行動がマスメディアに取り上げられ、小中学生のみならず高齢者も一緒に大勢が助かった事例が賞賛されています。また、保護者たちも子どもを信頼して迎えにいくことをせず『津波テンデンコ』が完璧に目的を果たしたものです。これを防災教育の成果として参考にしようと全国的な動きが出ています。
一方、同じ市内で避難所ではない公的施設に、避難者が詰め掛けこちらは津波に巻き込まれ大勢が死亡した惨事も発生しています。この状況、この施設が津波に対して無力なことは職員の一部は承知していたようですが、『防災センター』という名称のため、避難場所に指定はしてなかったものの、避難してきた人を受け入れてしまったのがそもそもの原因です。モシカしたら?、想定外なことが?、という気持には職員も避難者やその家族も湧かなかったらしい。2年以上経過した今、被災者家族のモヤモヤした気持に配慮した市長が自らの報酬を『減給』すると表明しました。なにか切ないのは私だけでしょうか。
子どもたちの素直な『モシカ』したらと、大人たちの『マサカ』が対比的に歴然と現れた他の例を私は知らない。巨大津波の史実がある町で、津波のことについて住民に説明できなかったとしたら、施設に強引に入り込んでくる住民を制止できなかったとしたら、大津波の危険を承知で招き入れたとしたら、そして巨大津波について史実を知らなかったとしたら公務員として不作為責任に問われることになるのではないか。
絶賛される功績を持ちながら、市長は減給を申し出たという。大きな教訓を感じる。
これからもわが町で発生するかもしれない。皆で気をつけましょう。