危機管理における『時間の利得』について

保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一

災害避難に関して『時間の利得』を理解しておこうという内容のコラムを準備中でしたが、起草中に、悲しくむごたらしいニュースが飛び込んできました。

 横浜線踏切で勇気ある女性が、踏切内で動けなくなった高齢者を救おうとして、ご家族の制止を振り切り明確な意志で救援行動を起し殉難されました。
今回のコラムは津波避難に関しての『時間の利得』について記そうと仕事中でしたが緊急的にこの踏切事故で考えてみることにしました。

 軌道敷内の人身事故はたびたび発生しています。救出成功は大きなニュースになっていますし救援者が殉難された悲惨な状況も忘れられないこととなって心に刻まれます。インタビューでは、「私にはできない」「私はやらない」と答えていますが直面すると多くの人はやると思います。普段からなんらかの社会貢献活動をしている人はなお更のこと、咄嗟に瞬間的に反応するのではないでしょうか。

 危機管理上『瞬時判断』『状況即応』『臨機応変』の能力を高めることをアドバイスしてきましたがこれらはすべて『時間の管理』を基底におくことを前提条件にしております。与えられた時間を活用するのを『時間の利得』、逆に活かせないのを『時間の逸失』として危機対処行動を考察していきます。この与えられた時間内に過酷事案を回避するのが『リスクマネジメント』の次の段階『クライシスマネジメント』なのです。軌道内人身事故は時間との戦いの考え方の典型として教材にも訓練材料にもされます。例えば昔になりますがテレビのクイズ番組で、模型鉄道が一周して来るまでに回答あるいは作業終了させるという番組がありました。機関車の頭には針があってレール上の風船を破裂させるのですが破裂(衝突)する前に与えられた作業を終了したり答えなければならないルールでした。ここに教育的にヒントがありました。『安全管理』の要素が含まれているのです。チームメイトが電車を見張ってくれていて電車が近付くと大騒ぎをして警告してくれるのです。

 私たちは今回事故を尊い教訓としていただき、タイムリミットを念頭に置いたクライシスマネジメント能力を高めなければならないと思います。 更に、限界に達した時は「『撤退』『退避』『放棄』することも『勇気』である。」と若いころに教育さたことも思い出します。

 迫りくる危機と減少していく時間、そのような状況下で勇敢に活動された村田奈津恵さんに心から賛辞を申し上げご冥福をお祈りいたします。


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