『時間の利得』について 2

保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一

危機管理において時間の感覚を持つことは結果の成否にかかわる大切なことです。 事象が発生して被害になるまでに活かせる時間を『時間の利得』、活かせない時間を『時間の逸失』つまりタイムロスと定義づけて、危機管理(リスクマネジメント)の第2段階『クライシスマネジメント』を説明します。

前回は踏切事故での短い時間について記しました。今回は、台風襲来の比較的長い時間について記してみます。

大島町では40人近い命が台風豪雨の土石流により失われました。この災害ではどれくらいの時間が失われたのでしょうか。大島町の防災担当職員の目で見れば72時間も無駄にしたのではないかと思います。専門職の観点から台風進路予想図を見て直撃を予測し被害想定、対策を立てられ得たのではないかと思うのです。
また、当日は直撃が確実になり、勢力もまれにみる大きさとなり、特に雨雲レーダーの画面では、赤と黄色の長い帯が映し出されその長さは台風の進路に並行して135km、その下の時間雨量は122o、当時の台風の速度は毎時35kmでこの雨雲に飲み込まれると3時間以上降り続くだろうと予報士は解説していました。

この時点でタイムリミットと被害規模を想定して公民一体となって備えを強化して事前対策を行っていたら少なくとも人的被害を皆無にすることができただろうにと悔やまれます。夜半には台風上陸との予報が出ている中で、役場は台風に備えるためとしてほぼ定時に退庁をして土砂災害情報のFAXや警察署からの避難指示発令要請などを取得できませんでした。定時退庁の理由は雨が激しくなったら午前1時に非常召集する(実は午前2時でしたと訂正)とした。また、国、都から気象警報や特別警報が発せられてなかったからとのことでした。更に、登庁してハザードマップを探したが見つけられず、そのうち土砂崩れが起きたとのことでした。住民は午前1時には激しい風雨で不安におののき自主避難を開始した人もいました。
過去に今回のような大災害が発生したことがなかったのが甘い判断につながったと町長は見解を述べていました。

 ・過去には狩野川台風で山津波被害があった。(歴史的教訓はあった)
 ・3日前・1日前・1時間前・直前対策のための『時間の利得』は十分にあった。
 ・過去の遺訓を守り、自己判断・自己完結で避難した住民家族は助かった。
 ・マップを活用できなかったなど、執務感覚が『正常性バイアス』に陥っていた。

避難指示や勧告をするのは首長責任です。気象情報等は単なる判断材料です。

 ・『想定外想定』をして与えられた『時間の利得』を活用しましょう。


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