チリ国民の防災意識と要援護者支援の実践

保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一

 2014年4月3日、チリのイキケに大津波を伴う大地震が発生しました。直後の現地の様子をテレビニュースで見ました。そのときはチリ国民も防災意識が高いのだと思う程度の認識でしたが最近ある機関で詳しく拝見する機会をいただきました。

一言で言うと、防災意識と避難行動それと要援護者に対する支援がまったく申し分なく、私にとっては理想的な避難システムが構築され行動に現れていたのでした。

 日本とチリの避難活動の状況の大きな差異から実質的防災・減災とはどういうことなのか一石を投じてみます。

地震発生直後はわが国とそう変わらない感じでした。が、屋外に避難した人たちは非常持ち出し袋を背負い、携帯電話を手にしています。携帯電話には政府から避難命令が伝えられているのだそうです。そのうち路上の群集の動きが激しくなります。若者が口々に何かを叫びます。群集は数人ごとのグループで動き出し、徐々に車いすが目立ち始め、その周りに人々が集まり車椅子を押したり高齢の人を支えたり、そのうち道路はアリの行列のようになりました。

 若者たちには緊迫した様子もなく、どちらかというとパレードを楽しんでいるかのようにかろやかに同一方向に向かっていきます。支援されている人たちも家族に支えられているかのように安心しきった様子です。

 映像を見ながら思い出したことはサンホセ鉱山の落盤事故で2ヶ月間も閉じ込められた末、33人が無事生還できたことがありました。そのとき、チリ国民は沈着冷静、まじめ、合理的、組織的そして団結力は世界に類を見ない国民性だとの評価をされていたことを思い出しました。

 知人が誇らしく語ってくれたのは1960年と2010年の大地震と大津波の教訓が今年の津波に生かされたのだという。死者行方不明者は2010年は約1000人でしたが今回は津波規模が小さかったとはいえ6人ですみました。国民総がかりになる気質は日本人にもあると思っていましたが冒頭「チリ国民・・・」と記したことは間違いであり、「チリ国民・・・」としなければならないような気がしています。大地震のたびに略奪や暴徒の様子が報道されていましたがそれも一面だと思いますが、一部の人しか動かないお行儀が良くて上滑りの『きずな』さめてしまう『絆』よりは良いものだ。と感激している次第です。

 現在の日本の若者はこぞって、そろって、要援護者支援ができるであろうか。


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