災害避難 1、首長の責務と公務員の作為義務

保土ケ谷区災害ボランティアネットワーク 委員 佐藤榮一

 危機管理において時間の感覚を持つことは結果の成否に関わる大切なことです。
事象が発生して被害になるまでに活かせる時間を『時間の利得』、活かせない時間を『時間の逸失』つまりタイムロスと定義づけて、危機管理(リスクマネジメント)の第2段階『クライシス(事象発生)マネジメント』を説明します。との書き出しで昨年の11月号に投稿しました。

  昨年10月の大島土砂災害について書いたのですが今年になって記録的豪雨により長野県南木曽町、広島県ほかで大きな被害が発生し、人的被害が発生した事象の多くは「避難の指示」が不適切であったことが報道され、政府も遅まきながら検証すると表明しました。避難行動と時間の関係について、大島町の被害に対しては雨雲レーダーの映像から来襲時間や雨量の予測など被害状況の推測も可能な情報を得ることができたと思います。今回、広島ではバックビルディング現象で一か所に積乱雲がわき上がったことで予測不能と気象専門家も言っていますが、雨雲レーダーの黄色・赤色の範囲を見ていれば異常に気付くはずです。被害が発生するかしないかは判断できませんが「もしかすると…」と感じることができるのです。
その時点が『早めの避難』の判断のタイミングです。災害対策基本法では『住民の安全確保は首長の責務』と定められています。気象庁や政府機関ではありません。気象情報は参考情報であって根拠にはなりません。「警報や特別警報が出なかったから避難勧告ができなかった。」という説明は大きな誤りです。

  また、首長を補佐する危機管理や防災を担当する職員は豊富な知識と熱意を持って参謀役を務めなければなりません。任命されて日が浅いとか経歴が未熟だとかは正当な理由にならないと覚悟しなければなりません。首長以下三役には統帥としての役割を果たしてもらうのも危機管理・防災担当の主な役割だと思います。  私は、消防署長時代に消防局長と区長の参謀であると自覚し、意見具申を怠らぬようにしていました。現在では、消防局から危機担当係長が区役所に出向しており安心しております。ただ、彼らが力を発揮できるかどうかは区長や幹部職員の度量・力量にかかっていると思います。更に一般職員も防災業務は自分の事務分掌に無いということではなく、客体である住民の生命を守るのは主体である行政職員全体の責任であることを公務の基本として認識していただきたい。元横浜市職員として「横浜市には起きてほしくない」気持ちを記しました。

  次回、区民の皆さんに「災害避難2『行政依存』『行政主導』では自分も家族も守れない。」につづきます。


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