危機事案、その瞬間は自分だけ

保土ケ谷区災害ボンティアネットワーク 委員 佐藤榮一 

 前回、一人も死なない死なせない、令和時代の危機管理を提唱する決意を固めたことについて触れた。

 災害・事故・事件から命を守ることは誰もが思っている理想の希求であるが、なぜ犠牲者は発生するのであろうか。最近の生命危機事象を考察してみると共通点が見いだされる。危機事象に関して自己防衛の意識も実践力も欠落しているのである。 確かに自助・共助・公助は浸透してきているが真髄がなくお題目に過ぎない。
特に本当の自助を正しく理解できている人はどれくらいいるだろうか。自助とは自己防衛つまり自衛である。多くの人たちは、自分が周囲の人たちから『助けてもらう自助』の意識が強い。例えば、「指示が欲しい」「どうすればよいか」「情報がない」 など、他人任せの発言が目立つ。それらに対し、私の考えは「自分のことは自分でしなさい」の一言である。地震の時、揺れが収まるまでは家族も近づけないし、風水害や土砂災害でも一瞬のうちに予告もなしに襲ってくるのである。事故や事件も隣にいる人の援助や保護も受けられずに被害に遭遇するのである。

 私は祖母から5歳くらいの時に『天は自ら助くる者を助く』をカルタ遊びを通じて、また、生命確保の大原則として『津波てんでんこ』を教育された。さらに、母からは『・・・末の松山波越さじとは』のうたになぞらえて巨大津波の怖さを教えられた。3歳の時の空襲や艦砲射撃の体験に重ねて5歳児へのしつけがその後の私の身についていることは祖母と母に感謝している。当然、娘たち孫たちにも伝わっていてイザの時は『テンデンコ』にゆだねることができる。

 最近の災害避難は大きく変わろうとしているが、従来の『自助・共助・公助』では、生命の安全を確保することができない。都下江戸川区のハザードマップの「ここにいてはダメ」の表現により、浸水域(区のほとんど)の大多数が避難を要するとの考え方が示されるなど、全国の将来を示唆するような動きが出ている。横浜市においても、土砂災害警戒情報等により『即時(避難)勧告地域』が指定され、区域内の全員が避難をすることになっている。この時、自分と自分の家族の命を守るのは隣人でも地域組織でもなく、また、行政機関でもなく自分自身が守らなければならないのである。