ホーンブロワーに出てくる馬のメモ 海洋物というか帆船物に、はまったばかりの超初心者なので、船の名前も種類も構造も何にもわかっていないのですが、お船に関しては、他の皆様のページに詳しいので、誰も作らないページをひとつ……
★「ネタバレ」について★
ここでは、馬に関してはネタバレになりますので、馬が出てくる意外性を期待して読みたい方は、原作を先にどうぞ。物語の展開や結末などに関することは、出来るだけ避けて書いていますので、ご安心ください。◆ ホーンブロワー・シリーズ〈1〉「海軍士官候補生」〜『蛙と海老』
ここに馬が出てくることはさすがに誰でも覚えておいででしょう。フランス革命の後、亡命貴族の軍隊をフランスへ輸送し、さらに手助けもすることになる、というお話です。
まず冒頭で陸軍少佐エドリントンが軍馬に乗って登場して来ます。ただし彼は「少佐=メイジャー」と呼ばれるより「伯爵=マイ・ロード」と呼ばれるほうを好んだようです。そして「フランス人外人部隊」にも騎馬将校がいます。蛙がフランス人の蔑称で、海老というのが赤い服を着た英国兵士の蔑称なのだそうです。この海老ってシュリンプかと思ったら、ロブスターなのね。
ともあれ、馬はソフィア号に乗せられます。6頭収容できたそうです。といっても、お馬たちは「メイン・マストの前の特設の厩」にいると書いてありますから、やはりめったに馬を乗せることはなかったのでしょうか。それとも偉い人の馬だから「特設」なのでしょうか? 食料の牛や羊は乗せているから、馬の居場所も船倉にあると思うのですが、その辺は良くわかりません(牛は塩漬けになっている物が普通なのかな)。通訳をおおせつかったホーンブロワーもソフィア号に乗ります。彼らはインディファティカブル号と二隻のブリッグ型砲艦、四隻の輸送船で、フランスへ向かったのでした。上陸の場面には、英国の遠征隊は、荷馬車など普通必要なものを現地で調達すると書いてあります。ここでもフランス人が農家から無理やり持って来ていますね。
さて、いよいよ、我らが士官候補生ホーンブロワーくんの乗馬シーンです。エドリントン伯爵から、葦毛の馬を与えられた彼は、何とか鞍に跨りますが、手綱を持ったとたんに歩き出した馬の上からの眺めは「メイントガンスルの帆桁から見下ろすように地面が遠く思われた」そうです。そんなあ。馬の上なんて、視線は1メートルも上に上がっていないのにね(笑)彼って高所恐怖症なんですよね、でもそれよりさらに馬は苦手だったらしいです。(メイントガンスルは帆船の上から2番目の帆です)
追記:原語版では、ホーンブロワーの乗ったお馬は「the roan」と書かれています。葦毛と訳されることも多い毛色ですが、実際は「粕毛(かすげ)」ですね。茶色などのからだに白っぽい差し毛がある毛色です。(翻訳だけ読んで、そのまま「葦毛」としていました。失礼いたしました。2007.APR)
クリックで「馬の毛色いろいろ〜粕毛」別窓で開きます。2009.JAN.
しかし彼は、いきなり走り出す馬にも何とか落ちずにがんばって乗っていました。さすがに翌日は体中が筋肉痛だったのは当然のことですね。これは、馬に乗ったことのある人なら誰でもわかるでしょうけど、しがみついて乗るから本当に体中ぎしぎしになるのです。でも、翌日もちゃんと彼は葦毛に乗って任務を遂行するのでした。
筋肉痛で歩くのもつらい状態でしたが、砲弾の音に驚いて躍り上がった馬からも、落ちないで何とか抑えています。体裁を重んじる彼ですが、さすがにこの時は馬から下り、手綱を引いて、仲間のブレイスガードルのところへ戻っています。次に乗るときは、馬を道に引いていって、行く方向に向けてから乗ったようです。敵軍を見つけた時は、英軍に知らせるために、鞍の上で大きく弾みながらも、必死で馬を駆けさせています。彼は背が高くて足が長かったので、馬の体を抱えるようにしてしがみつくことができたのでしょう。本当に落馬しなくて良かったです。
ラストのほうで、彼の馬と伯爵の馬がどうなったか、覚えていますか? ああ、戦争なんだなと思う結果でした。ホーンブロワーくんも、改めて実感したようです。そうしてまた、成長していく彼でした。C.S.フォレスターの、海に浮かぶ艦の動きの描写はとても臨場感がありますが、馬の動きの描写もやはり丁寧です。歩かせて進む、速歩で進む、ゆるく駆けさせるなど、その時の状況とそれぞれの乗り手の心理までが馬の動きでわかるようです。また、速歩で進む馬の上で、ホーンブロワーが跳ね上がりながらついて行った、などというところは、乗ったことのある人でないとわからないリアルさです(お尻痛そう…)
◆TVドラマ◆
TVドラマのほうでも、ちゃんと彼の馬の苦手なところは表現されていました。初めに馬に乗るところなど、鐙に足をかけたら馬がくるくる回りだして、一緒にくるくるする羽目になったり(笑)…これって普通、馬を持ってきた兵士は「乗り手が乗るまで馬の手綱をもって、足をかける方の反対側の鐙を手で押さえる」位のことはするものです。でも、見ている人はそんなこと思わない、演出の上手さですね。それとも、いぢわるな兵士だったのか? エドリントン伯爵には、君が海軍を選んだわけがわかったよ、なんて言われてしまうし。さらにホーンブロワーくんは、途中で馬を曲げられなくて「舵をつけたい」とぼやき、すっかりあきれた伯爵は無言で彼の馬の手綱を引っ張って連れて行ってくれたりしています。
ちなみに、馬はおとなしそうな鹿毛でした。伯爵は栗毛。マイ・ギロチンを持ったフランス貴族が、すまして葦毛に乗っていましたね。「いい蛙」が馬に乗って走ってくるのも心憎い演出でした。
◆ ホーンブロワー・シリーズ〈3〉「砲艦ホットスパー」
ここでは、生きたお馬ではなく、馬毛のかつらがでてきます。
ホーンブロワーが尊敬する、司令長官、海軍中将ウィリアム・コーンウォリス卿は、『今日ではすでに流行遅れとなり、もっぱら貴人の御者が使ってる馬毛のかつら』を愛用していたそうです。ある場面で彼は、『粋に傾けてかぶって』います。かつらのかぶり方にも、いろいろあったのですね。
この時代は、ほとんどみんながかつらをかぶっていました。今では考えられませんが、男性の身だしなみの必需品だったようです。ジャック・オーブリーシリーズの、あの奔放な服装をするマチュリン先生でさえ、普段はかぶっているようです。TVドラマでは、あまりかぶっていませんけれども、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」では総督が、命が危ない時なのに、立派なかつらを必死で幽霊から取り戻そうとしていました。かつらは、とても高価なものだったのだそうです。でも、コーンウォリス卿が買えないわけはありません。昔から使い慣れたものを、頑固に使い続けるというのも、人柄を表しているんですね。
馬の尻尾は、バイオリンの弓など、いろいろなものに使われていますが、かつらも馬の毛だったとは、この巻をよんで初めて知りました。そのあと、テレビドラマのシャープを見ていたら、彼の部下になるライフル隊のキャプテンがやっぱり馬毛のかつらをかぶっていました。追記:かつらの着用はフランスでは、1989年の革命の後、急速に廃れました。王侯貴族中心の流行でしたから。イギリスにはその影響がどの程度の速さで広まったかはわかりませんが、このお話は1803年ですから、上記の『今日ではすでに流行おくれ』というのは、「馬毛」にかかるのではなく「かつら」にかかるのかも知れません。ネルソン提督、ロード・コリングウッド、サー・ジョン・ジャーヴィスなど同時代の軍人を描いた絵画には、白いかつらをかぶっているのとないのがありますね。(さすがに絵が描かれた日は解説に無いのでわからない)
現在でもイギリスの法廷の裁判官のかつらは馬毛だそうですね(これをやめるべきだという話もあるそうですが)。また、日本でもお能に使うかつらの一部は馬毛を使っているそうです。◆ ホーンブロワー・シリーズ〈5〉「パナマの死闘」
今回の任務は、スペイン領アメリカで「エル・スプレモ様」という反乱の指導者にあうことから始まります。われらがホーンブロワー艦長は、一番上等の軍服に真っ白なブリーチ(半ズボン)とストッキングで海岸に降り立ちますが、なんとそこには、馬が用意されていたのでした。ショック。彼は、ただでさえ乗馬が苦手なうえに、この時期はまだ経済的な余裕がなかったので、一張羅のズボンやストッキングの心配まですることになってしまいました。交渉はなんとか上手くいったものの、やはりズボンはしわしわ、ストッキングはほつれてしまっていました。というより、ブリーチは鞍にこすれて真っ黒になってしまったのではないでしょうか?(ちなみに、最近乗馬ズボンのことをブリーチと言いますね。以前はキュロットと言っていたけど。長さはくるぶしまであります)
この反乱軍は、士官でもかなりぼろい服装をしていたようです。馬も多分やせた小さい馬だったのではないでしょうか。
◆ ホーンブロワー・シリーズ〈6〉「燃える戦列艦」
注:ちょっとネタバレ度高いです
英国海軍の戦列艦サザランド号のホーンブロワー艦長は、ヴィリェナというスペイン軽騎兵の大佐を艦に迎え入れます。彼の部隊は戦いでほぼ全滅状態でしたが、上等の馬に乗っていた彼だけが遠くまで逃げて来ることができたようです。もちろん、馬は乗りつぶしてしまって、単身で艦に乗って来たのです。
ホーンブロワーは、その大佐の情報から、スペインの海岸の道を通るフランスの軍隊を海から砲撃することにします。敵は、フランス軍といってもイタリア人部隊でしたが、海から攻撃されたことがないので、初めは美しい帆船に手を振ったりしていたようです(気持ちがわかるだけに気の毒だわ)。その部隊は、先頭が抜き身のサーベルを持った騎兵大隊、その後ろに重騎兵、大砲を引いた輓馬砲兵隊、その後に長い歩兵隊が続くというものでした。それを、優秀な英国艦の砲手が狙うのだからたまりません、多くの敵が倒れ、残ったものは、茫然として立ち尽くし、動ける者は山側へ逃げ込んだりしました。しかし、重い大砲や砲弾を積んだ馬車に縛り付けられている、牛や馬、重い荷物を積んだ何百頭もの騾馬は道に取り残されたままでした。戦争で疲弊したスペインでは、馬や騾馬は人間より貴重な資源であることを知っているホーンブロワーは、砲撃を命じますが、砲手たちからは嘆きの声が聞こえてきます。敵の兵士たちが倒れるのを大喜びする彼らですが、動物を撃つのはやはり気が咎めたようです。何も知らず、人の都合で使われていることがわかっているからでしょうか、それは敵の兵士も自分たちもある意味では同じなのですが、きっと自分たちへ銃口を向けたりしないからかも知れません。それとも、動物愛護のイギリス人だからかしら。ともあれ、ホーンブロワーはそんな彼らが、わざと的をはずすことのないように、一斉射撃でなく、一門ずつ撃たせています。情に厚いホーンブロワーですが、戦闘になると物凄くクールです。ところが、その目標の馬車のなかには、負傷兵がいることがわかると、即刻攻撃中止の命令を出しています。負傷兵は攻撃しないという、戦争のしきたりには、逆らえないのでした。別の場所では、ホーンブロワーは上陸作戦の指揮をとります。重い大砲十門と弾薬を岸へ上げ山の中を馬や騾馬と水兵たちの人力で引き上げます。ホーンブロワーとロングリイ士官候補生、そして艇長のブラウンにも馬が用意されます。また馬に乗ることになってしまったホーンブロワー艦長でありました。そのあと、かなり上へ下へ馬を駆けさせることになります。ロングリイ少年は乗馬の心得があり、巧みに駆けさせては伝令役を務めています。艦長も苦手などとは言ってはいられない状況で、何とか乗りこなし命令を出しています。が、もっと乗馬の下手なブラウンが一緒なので、相対的に上手く見えるのではないか、なんて考えている場合ですか、艦長…
参考:騾馬(らば)というのは、馬の母とロバの父のあいだに生まれた、馬より小柄で少し耳が長い動物のことです。とってもかわいいです。馬の力強さと、ロバの従順で辛抱強いという、両方の良い面を持ち、粗食にも耐えるので、荷役などにはとても重宝され、乗用にも使われます。ちなみに父母が逆転すると、反対の特徴が出る「ケッテイ」と呼ばれる別の動物になります。どちらも繁殖能力はほとんどありません。
参考:アレグザンダー・ケントのボライソー・シリーズ2巻9章にも似たような話題のエピソードがありました。ボライソーたちが敵の砦を占拠したとき、彼は馬小屋に馬がいなかったことに安堵しています。もしいれば、敵に渡らないように馬を殺さなければならず、それを水兵たちにやらせる事になったからでした。ここでも、敵や味方の人間が傷つく事には慣れっこでも、動物にはとても神経質だったらしい様子が描かれていました。(2003.DEC.08追記)
◆ ホーンブロワー・シリーズ〈7〉「勇者の帰還」
フランスの捕虜になっている、ホーンブロワー艦長とブッシュ副長は、銃殺刑になることが決まっている裁判を受けるべく護送されます。ホーンブロワーは当番兵に艇長のブラウンを選び、3人を乗せた六頭立ての馬車は、騎馬の護衛に前後をびっしり守られてパリへ向かうのでした。
護送の担当官陸軍大佐カイヤールは、悪玉ナポレオンの部下らしく、冷酷無比なタイプです。その馬も、大きな黒鹿毛の威勢のいい落ち着きのない馬で、はみを噛み鳴らし、さかんに斜め横足に歩き回っています。ほんの一文ですが、大佐の性格とあいまって、捕虜の不安な気持ちと、護送隊のぴりぴりした様子がよく伝わって来ます。
一行は宿駅ごとに馬を換えながら何日も旅を続けます。途中で、馬が蹄を落とし(蹄鉄のことでしょう)歩けなくなって、三頭で馬車を引くようになったりしています。多分何処かで、四頭立ての馬車になったのでしょう。冬の旅で途中から雪に見舞われ、道ははかどりません。馬車を時々止めては、氷の玉になった雪を、馬の蹄から靴底で書き落とさなければなりませんでした。蹄鉄をつけていない野生馬などは、雪が蹄に詰まることはありませんが、仕事をする馬の蹄の保護のためにつけてある蹄鉄は雪を溜め込んでしまい、蹄の下に厚く固まってしまうのです。日本では「下駄を履いてしまう」などと言います。足は重くなるし上手く歩けないし、おまけに遅くなるから鞭で叩かれるしで、馬はいい迷惑ですね。
艦の波に揺られる描写も見事ですが、陸に上がっても、フォレスターの情景描写は、ありありと目に浮かぶ巧みなものです。ドラマもさることながら、絵画的とも言えるこの描写力が、シリーズを読む醍醐味のひとつだと思います。
◆ ホーンブロワー・シリーズ〈9〉「セーヌ湾の反乱」
伯爵の娘で、ウェリントン公爵の妹である、レディ・バーバラは、ご多分にもれず乗馬も巧みだったのでしょう。その点には特に触れていませんが、「(激しい乗馬と長距離強歩の賜である)見事な筋肉」の引き締まったプロポーションをした美女と書かれています。当時は、狐狩りは貴族の楽しみでしたからね、馬に乗れないとお話になりませんが、きっと彼女の性格と同じく、見事な手綱さばきだったのではないでしょうか。
それにひきかえ、われらがサー・ホレイショー・ホーンブロワーは、医者の息子とはいえ、庶民の出で、どうも乗馬は苦手だし好きになれなかったようです。
でも、この苦手意識は、実は彼の体裁を重んじる性格から来ているようなのです。というのも、今までの乗馬シーンは、すべて任務遂行中であって、威厳を保たなければいけないというプレッシャーが無意識にでものしかかっていたのです。ところが、恩人であるフランスのグラセー伯爵を訪ねた平和な一時期には、伯爵の義娘グラセー子爵未亡人と、馬に乗って楽しく森を駆けめぐっているのでした。それって、サー…(笑)ところで、この時代の女性は、横鞍だったのでしょうか? どうも資料がみつからないのですよね。(軍隊のも少ないですが。)お話の中では、短い乗馬用のスカートの下に乗馬ズボンをはいています。さすがに、鞍のことは書いていないのでした。テレビドラマのシャープでは、勇ましい母娘が同じようないでたちで、跨って乗っていました。別の女性は、横乗りでした、いろいろだったのかな。
◆ ホーンブロワー・シリーズ〈10〉「海軍提督ホーンブロワー」
ハヤカワ文庫のシリーズ最終巻にあたるこの本は、第一巻と同じように5つの短編からなっています。すでに平時なので、戦時中とは一味違った面白さがありますね。
「血迷える海賊」
ジャマイカでのお話。乗馬が苦手なホーンブロワーですが、今回はロバに乗る羽目になります。それも鞍なし。おまけに手綱は他の人が引いているので、彼はロバの短いたてがみにつかまらなければなりませんでした。背の高い彼が、短いたてがみにつかまるのって、不自然な前傾姿勢になるから、余計に乗り難かったと思います。かなり長いあいだ乗っていたので、鞍擦れ(鞍がないから背擦れ?)がひどかったみたいです。多分痩せたロバだったんでしょうね、うう痛そう。そのあと、鞍をつけた馬にも乗ることになりますが、とにかくロバも馬も、彼の意思に反して速くなったりするので、大変でした。
彼の独り言にもかかわらず、海でも陸でも頭脳明晰、行動は完璧なホーンブロワーですから、こんな弱点があるのは、人間味があってよろしいと思います。いやでも、この時は本当に大変でしたけれども。「ハリケーン」
正装をして馬車に乗っているホーンブロワーに、狩猟に向かう騎馬の一行が近づいてきます。総督夫妻や副官、民間人、憲兵隊などで、その中には白馬に乗った美しい彼の奥方もいました。総督は、ホーンブロワーに騎乗を勧めますが、絹のストッキングをはいているのに気づき、「だめそうだ」と言っています。仕方ないから「おめでたが近い貴婦人のように」馬車に乗ってついて来るようにと、ちょっとからかいも入った言葉を掛けるのでした。狩りの目的で走る馬に、馬車がついていくのは大変で、かなり揺れるので、ホーンブロワーは横にいるジェラードや前にいるスペンドラブにまでぶつかりながら乗っていました。
この時奥方は『狩猟用のベール』をかぶっています。どんなものだったのでしょうか? 話をするときは上げる必要があったようです。速く走ったり障害物を飛び越えるのに、ベールって邪魔そうですよね。
鞍はサイドサドル(横鞍=よこぐら)です。高橋氏の訳は『婦人鞍』と書いて『かたくら』と読ませています。どちらにしろ、スカートで乗る貴婦人用の鞍です。このスカートは、乗馬用に巻きスカートのような特別のデザインになっているそうです。
狩りが終わっての帰り道、ホーンブロワーは馬をジェラードに乗り変わらせて奥方に馬車に乗るように言いますが、奥方は殿方を女性用の鞍に乗せるなんて、体面を考えてあげたら出来ないと言っています。彼も、絹のストッキングをはいていたしね。結局馬は総督の馬丁が引く事になり、ホーンブロワー夫妻が馬車に乗り、ジェラードとスペンドラブも、一瞬ためらってから馬を背にした席に乗り込みました。お話の中には書いてありませんが、この若い部下たちはきっと、馬車の中でかちかちに緊張していたことでしょうね。
◆このページの内容はこれからも少しずつ増えます。またお立ち寄りください。
◆このページは、ハヤカワ文庫のシリーズを読んで書いています(原語版は読んでいません)。また、この時代のお馬の資料も探しています、何かご存知の方はお知らせいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
◆もし、馬が好きでこのページにいらしてくださった方は、こちらにメインページの馬のコーナーがありますので、合わせてご覧くださいませ。
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