いらっしゃいませ。ご来訪ありがとうございます。藤木ゆりこです。
このページには、私が今までに読んだ帆船関連の小説や、見た映画について、感想などを書き留めてあります。NEW 番外編として「シャープのタイトルリスト」を作りました。
★シャープ・シリーズ ★オーブリー・マチュリン ★映画マスター・アンド・コマンダー ★ピーター・シムプル |
★ホーンブロワー ★パイレーツ・オブ・カリビアン |
★おろしや国酔夢譚 ★戦艦バウンティ号の叛乱 |
◇◇◇ シャープ シリーズ ◇◇◇ 日本では、知る人ぞ知るシャープ シリーズ。バーナード・コーンウェルの原作はまだまだ新しい作品が増えていますが、日本では12冊ほどが翻訳されただけ、それもほとんどハードカバーだけで、それも手に入りにくい状態。イギリスでは、ショーン・ビーンの主演でドラマ化されて大ヒットした作品でもあります。日本のファンは、あの訛りのきつい英語のドラマをがんばってみていたのです。いえ、言葉が全然わからなかったとしても、とっても面白いのですが。しかし先ごろ、ミステリー・チャンネルなるテレビで放送され、さらにDVDも発売になりました。!!これを機会にさらに人気が出てくれると嬉しいです。
ここでご紹介するのは、日本語訳もされていず、ドラマにもなっていない一冊です。
「Sharpe's Trafalgar」
シャープは陸軍さんで、第95ライフル銃連隊の将校です。濃い緑の制服を着ていて、とってもかっこいいです。でも、95thに入る前は、みんなと同じ赤いジャケットを着ていました。この「Sharpe's Trafalgar」はまだ彼が赤いジャケットを着ている頃のお話です。シャープはインドのアッサエで、サー・アーサー・ウェルズリー(後のウェリントン将軍)の命を救い、一般の兵士から将校に昇進します。そして95thに加わるべくイギリスに向かう船に乗るのです。そして、成り行きから「名誉海兵隊員」として、トラファルガー海戦に参加することになるのでした。
この本は、残念ながら邦訳されていません。でも、英語の本が読める方、もしくは読んでみようと考えている方にはぜひおすすめです。もし、私のように半分くらいしか読み取れなくても、お話がわかりやすいし、キャラクターも魅力的なので、楽しめると思いますよ。
シャープは東インド会社の船に乗り込みますが、英国は戦争に負けると思い込んでいる船長たちの陰謀でフランス艦に拿捕されてしまいます。その船をさらに、英国海軍のピュセル号が捕まえて、シャープはその74門艦に乗り込みます。この艦のチェイス艦長がまた、楽しい人で私はとってもお気に入りなのです。金髪だし(笑) お話には、回想シーンにウェリントン将軍、そしてトラファルガー沖ではネルソン提督が登場して、なんだかとってもお得な物語でもあります。アマゾンjp.へリンク→ペーパーバック Sharpe's Trafalgar(本文も少し読めます)
シャープ・シリーズのほとんどがカセットブックになって出ています。縮約版なので、お気に入りのところが入っていない〜〜というもどかしさもありますが、明るいチェイス艦長の様子などいい感じです。朗読は、ドラマ「ホーンブロワー」でブッシュ海尉を演じた、ポール・マッガンです。「ホーンブロワー」のカセットは音楽が少し入ってうるさいのですが、このシリーズは本当に朗読だけなので聞きやすいです。
アマゾンjp.へリンク→カセット Sharpe's Trafalgar
シリーズの他のお話にはほとんど船は出てきません。ウェリントン将軍(小説のホーンブロワーでは彼のお義兄さんですね)のもとで戦う、英国陸軍のライフル隊のお話なのです。ただ、ナポレオニックという点において、またドラマは制服を眺めるのもまた一興ということで、もちろんお話自体が面白いので、海洋冒険小説ファンの方々にも、人気の高いシリーズです。イギリスでテレビドラマ化されているのですが、映画「ロード・オブ・ザ・リング」のボロミア役のショーン・ビーンの当たり役なので、その頃から日本でもにわかに人気が高まったようです。原作の小説が、文庫にはなっていないのが残念です。
実は、このドラマの主人公シャープは、ショーン・Bの前に、ホーンブロワーのドラマでブッシュ君を演じている、ポール・マッガンに決まっていたそうです(一話の撮影の途中で事故で降板したそうです)。全然違うでしょ。でも、原作を読んだら、なるほどマッガンのイメージ合っているかも、と思いました。それほど、ショーン・Bはある意味原作とは全然違うシャープになっています。でも、かっこいい☆
NEW 番外編として「シャープのタイトルリスト」を作りました。あわせてご覧くださいませ。
◆「The Compleat Sean Bean」のシャープのページ http://www.compleatseanbean.com/sharpe.html
- ドラマ未見の方は、ぜひ画像だけでもご覧ください。
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0108108/
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◇◇◇ オーブリー・マチュリン シリーズ ◇◇◇
- 小説「英国海軍の雄 ジャック・オーブリー」シリーズ
- この、パトリック・オブライアン Patrick O'Brian の海洋小説(全20巻)は、ファンの間では国際的に「オーブリー/マチュリン シリーズ」と呼ばれているようです。
日本では、ハヤカワ文庫NVで出ています。シリーズのタイトルは「英国海軍の雄 ジャック・オーブリー」と、著者の名前の横に書かれています。どうも、大タイトルが無いと紹介するときに不便ですね。
特にこのシリーズは、映画化の関係で、1,2,3話が出版された後、飛んで10巻が出たために、通巻ナンバーもわかりにくくなっています。背表紙にある「NV-オ-4-××」とあるのが通巻番号になるようです。(次の9巻が出ると、やっと追いつきますね。11〜20もまだ出版されていません)
- 第1巻 「新鋭艦長、戦乱の海へ(上・下)」NV-オ-4-1,2 〜原題:「Master and Commander」
第2巻 「勅任艦長への航海(上・下)」NV-オ-4-3,4 〜原題:「Post Captain」
第3巻 「特命航海、嵐のインド洋(上・下)」NV-オ-4-5,6 〜原題:「H.M.S.Surprise」
第4巻 「攻略せよ、要衝モーリシャス(上・下)」NV-オ-4-7,8> 〜原題:「The Mauritius Command」
第5巻 「囚人護送艦、流刑大陸へ(上・下)」NV-オ-4-9,10 〜原題:「Desolation Island」
第6巻 「ボストン沖、決死の脱出行(上・下)」NV-オ-4-11,12 〜原題:「The Fortune of War」
第7巻 「風雲のバルト海、要塞島攻略(上・下)」NV-オ-4-13,14 〜原題:「Post Captain」
第8巻 「封鎖艦、イオニア海へ(上・下)」NV-オ-4-15,16 〜原題:「The Ionian Mission」
第10巻 「南太平洋、波瀾の追撃戦(上・下)」NV-オ-4-19,20 〜原題:「The Far Side of the World」
- この物語は、艦長ジャック・オーブリー Jack Aubrey と、親友で軍医のスティーブン・マチュリン Stephen Maturin の絶妙の関係と、周りの人々の人間関係がとてもきめ細かく描写されています。また、スティーブンのもう一つの専門分野で歴史的にもこの頃盛んになってきた博物学、二人の共通の趣味である音楽、医学、料理、神話、もちろん艦に関する説明、などなど、とにかく、作者の知識と教養がちりばめられた、冒険小説としては異色の作品です。
実は、1巻の前半は、お船の構造の話がたくさん出てきて、帆船初心者としてはちょっとつらかったです(「指輪物語」の1巻のはじめの頃のよう(笑)?)でも、ジャックと相方のスティーブンがバイオリンとチェロを弾くあたりは、私のツボでもあるのでした。何しろ出会いのシーンが音楽会だし。陸では、馬やら馬車やらに乗っているし。
海洋冒険物ではあるけれども、艦に乗っている時間は意外と短いこと、この物語の醍醐味は人間関係としゃれた会話にある、という予備知識があれば、何とかクリアできると思います。もちろん、艦に乗ったジャックは、まさに水を得た魚で一番生き生きしています。映画の公開後に出版されたシリーズ4巻は「攻略せよ、要衝モーリシャス」という派手なタイトルになっています。原作の4巻にあたる作品です。(訳者あとがきの映画についてのコメントはちょっと違ってますのでご注意を)
シリーズ5巻「囚人護送艦、流刑大陸へ」も、いつものように陸の生活が、上巻の半分を占めていましたね。今回は、マチュリン先生の裏稼業の仕事も入って面白かったです。その分、自然観察の描写はあまりなかったのは残念ですが。お金持ちになったジャックは、やっぱりアマーティのバイオリンを買ったのですね。そして、それは家においてあるというのがわかりました。なんだか安心してしまった私です。
翻訳の方が変わったので、いままでとまた印象が少し変わりました。わたしは、ボンデンのイメージが一番今までと違うと思ったのですが、いかがでしょうか?陸の生活に出てきた、馬の部分にいくつか薀蓄を書いてみました。良かったら「飛魚亭の裏庭」をごらんくださいませ。
「ボストン沖、決死の脱出行」は、シリーズ6巻です。いつもに増して、陸にいる時間が長いです。その上、ジャックは自分の艦には乗っていないので、直接戦闘の指揮をとることも無いという異色の巻ですね。アメリカとの戦争がはじまり、英国海軍は思いのほか苦戦しています。ジャックは負傷して捕虜になります。今回は、スティーブンのもう一つの顔、スパイとしての活躍が目覚しい巻です。ダイアナも今回は大変。早くも次巻が待たれます。
7巻は「風雲のバルト海、要塞島攻略」、相変わらず派手なタイトルですね。そして相変わらず、音楽もお馬も出てきます。早く家にたどり着きたいジャックに乗られた、大きな牝馬は気の毒なことに、ジャックを振り落とすことも出来ないまま早駆けをさせられていました。でも、ジャックは家に着くと自らブラシをかけ汗で濡れた体が冷えないように布をかけてあげています。また、音楽でも、懐かしいクレメンティやフンメルのソナタが演奏されています。
8巻は「封鎖艦、イオニア海へ」、今回はすごい!サープライズが沢山ですね、乗組員の有志の皆さんで「メサイア」をやることになります。それも、ピアニッシモの箇所でさえ大音声なのだそうで、ぜひとも拝聴してみたいものです。また、スティーブンが艦が揺れるので、演奏がしにくいとか、音楽に関する繊細な描写がいろいろでてきます。ドラムが「ロースト・ビーフ・オブ・オールド・イングランド」のリズムを奏でていたり。いつも思うんですが、ドラムのリズムだけで曲がどのくらいわかるのでしょうか、これも聴いてみたいです。お馬の描写ありますね。ジャックは16ハンズの大きなトルコの鹿毛馬を見せてもらったと、ソフィーの手紙に書いています。
任務はともかく、おなじみの面子に囲まれて、ご機嫌なジャックの様子が楽しいです。それよりさらに、読んでいるこちらのほうが嬉しい巻です。上に戻る
◇◇◇ オーブリー・マチュリン シリーズ ◇◇◇ 映画「マスター・アンド・コマンダー」
アメリカや諸外国では2003年11月公開、日本では2004年2月28日から4月9日まで(一部延長)の上映でした。
海洋冒険小説や、帆船ファンには、本当に何度見ても見飽きることの無い凝った作りの、素晴らしい作品でした。またキャラクター設定などもきめが細かく、映画だけを見た方にも評価が高かったようです。ただし、今時のハリウッド映画的な派手さ、たとえば火を噴く爆発シーンとか、いかにもワイヤーを使った大胆なアクション、見せるためのマーシャルアーツなどは無い、おまけに女性も出てこないので、そういう意味での娯楽性を期待する向きには、肩透かしの映画だったかも知れませんね。この映画は、パトリック・オブライアンの20巻からなる「オーブリー/マチュリン」シリーズと呼ばれる小説が原作です。映画のタイトル「マスター・アンド・コマンダー(原題:Master and Commander The Far Side of the World」は、1巻の「Master and Commander」と10巻の「The Far Side of the World」から採ってあり、主なストーリーは10巻を使ってあるものの、他の巻のエピソードもいろいろ盛り込まれています。
また、10巻が原作といっても、同じなのは航路、捕鯨、ヨナの話題くらいで、敵艦はアメリカからフランスに変えられているし、登場人物や物語も、ガラリと変わっています。それなのに、なぜ原作ファンがこんなに喜んで見るかといえば、とりもなおさず「原作のスピリット」が生きているからなのです。
美しい帆船の姿、水兵さんたちの生活、士官たちの会食、轟く砲声、流れる音楽、波の音、そして、魅力的な艦長ジャック・オーブリーと軍医スティーブン・マチュリンの性格などなど、すべてが原作を映像と音で表現したと納得出来るものだったのです。1年以上前から期待していてなお、期待以上の作品でした。さらに言えば、原作は艦に乗っていない、陸で過ごす時間がかなり長く、女性問題でごたごたするシーンが多いのですが、映画では大胆にもそのあたりをばっさり切り捨て、終始艦の上で話が進むのも、帆船ファンには嬉しいところなのでした。(ちなみに、映画の脚本製作の過程では、原作にあるような女性がからむ三角関係などのエピソードもあったそうです)
主演のジャック・オーブリー艦長が「グラディエーター」のラッセル・クロウ、軍医スティーブン・マチュリンが「ロック・ユー」のポール・ベタニー(この二人は「ビューティフル・マインド」でも共演した絶妙のコンビですね)。ジャックの艇長バレット・ボンデンが「ロード・オブ・ザ・リング」のピピン役ビリー・ボイド、ほかにも、キリック、プリングス、カラミー、ブレイクニー、雌山羊のアスパシア、名前の無い猿、などなど原作とは身長や年齢が変わっていはいるものの、魅力的な癖のあるキャラクターがたくさん出てきます。原作ファンには、思わず口の端がほころんでしまうシーンも盛りだくさん。
もちろん、大熱演の主演女優サプライズ号役のローズ号も美しいです。艦のミニチュアは「ロード・オブ・ザ・リング」のWETA製作。
特筆すべきは音楽です。予想以上にジャックとスティーブンのバイオリンとチェロの演奏シーンがありました。BGMにも効果的に彼らが好んで演奏していた、当時の音楽、モーツァルトやボッケリーニ、バッハの曲が使われています。今時のハリウッド映画には珍しい、音楽が自然に物語に溶け込んだ作品になっています。
(上記映画3作は「馬の映画&本」で紹介してあります)
映画未見の方は、トレイラー(予告編)が物凄くかっこいいので、ぜひ見てみてください。公式サイトにはメイキング映像もあります。要Quick Time
◆映画「Master and Commander The Far Side of the World」のトレイラー
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0311113/
「マスター・アンド・コマンダー」DVD発売中!!本編と特典映像の2枚組みの物はすでに売り切れているようです。特典映像には本編には使われなかった、ボンデンが先生に字を習っているシーンや艦長の水泳のシーン、メイキング映像、役者たちの素顔もよかったのですが。心配だった予告編も、英語版のネットで流れていたのと同じ音声に字幕付でした。
アマゾンjp.へリンク→マスター&コマンダー
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◇◇◇ ホーンブロワー シリーズ ◇◇◇
- ネット友達のとーこさんの紹介でテレビシリーズを見たら、とっても面白くてすっかりファンになりました。NHKBSで放映したので、ごらんになった方も多いと思います。小説の方もさらに面白いです。
イギリスの作家セシル・スコット・フォレスター Cecil Scott Forester の海洋小説です。主人公のホレイショー・ホーンブロワー Horatio Hornblower の物語です。主人公HHが魅力的なだけでなく、人間関係やら、歴史背景も面白い。さらに、海と波と艦の動き方などの臨場感あふれる描写がたまりません。本はハヤカワ文庫から出ています。ほぼ絶版状態になっていたのが、2003年9月に再版されました。NHKさんのおかげですね、きっと。
小説は、日本での翻訳順と、原作の発行順が違っていますが、女性には日本の一巻から読むことをお勧めします。初々しい士官候補生の時代から始まりますので。
テレビシリーズは、イギリスのドラマだけに、丁寧に作られていて見ごたえがあります。お話は原作の良さを残しつつ、かなり大胆にアレンジしています。とにかくインディ(インディファティカブル号)はじめ、帆船の映像を見るだけでもわくわくなんですが、主役のヨアン・グリフィズ Ioan Gruffudd くんがまた、かっこいいんですよ。さらに、原作にはほとんど出てこない、ホーンブロワーの同僚で親友アーチー・ケネディ役のジェイミー・バンバー Jamie Bamber くんがまたかわいい。日本の女性のあいだでも、ひそかにファンは増えているようです。(何しろこのアーチーは、一話目だけの出演のはずが、3話目で奇跡のカムバックを果たし、ホレイショーの親友として感動的な役割を務めているのでした)
- ドラマ「ホーンブロワー」のDVD発売中です。特典ディスクは第二集に入っています。やっぱり字幕つきは嬉しいです。テレビは吹き替えか、副音声で英語だけで見るしかなかったですからね。パッケージも素敵です。
←このデザインはレンタル用で、個人向けのジャケットはもっとかっこいいデザインです。
詳しくはBLANCAさんのページをご覧ください。画像が沢山見られます。
ヨアン・グリフィズファンの方には、こんなものもあります。ドラマのホーンブロワー役、ヨアン・グリフィズ君(映画「キング・アーサー」のランスロットもよかったですね)が朗読しているカセットです。どうもCDになっているものは無いようです。
私も数本買ったのですが、増刷(?)はされないようで売り切れも多いですけれども、一応ご紹介。約60分のカセット2本組みで、当たり前ですが、2時間ず〜っとヨアン君の声を聞いていられるので、ファンの人にはおすすめです。ただし、内容は縮約版(Abridged)なので、原作を楽に読めるような方には、物足りないかもしれません。私は英語が苦手なので、完全朗読でないのがかえってちょうどいいかなというところです。Mr. Midshipman Hornblower
邦訳版の1巻「海軍士官候補生」に当たります。短編集で一話が十数分ずつ。当たり前ですが、マシューズもエドリントン伯爵も女優さんもヨアン君なわけです。ヨアン君の話す、フランス訛りやスペイン訛りの英語もおもしろいです。
Lieutenant Hornblower
邦訳版の2巻「スペイン要塞を撃滅せよ」です。縮約版なので、話が始まったと思ったら、もう艦長が帰ってきた、もう落ちた、もう要塞だわ、もうホイストやってるわ、とどんどん進む2時間です。そして、ブッシュ君もソーヤー艦長もウェラードもみんなヨアン君が演じているわけです。
- アマゾンjp.へリンク↓
Mr. Midshipman Hornblower(「海軍士官候補生」)
Lieutenant Hornblower(「スペイン要塞を撃滅せよ」)
Flying Colours(「勇者の帰還」)
Hornblower and the Atropos(「トルコ沖の砲煙」)
Commodore(「決戦!バルト海」)
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◇◇◇ ピーター・シムプル ◇◇◇ これは面白いです。私はとっても気に入ってしまいました。
『ピーター・シムプル Peter Simple』は著者マリアット Frederick Merryat(1702-1848)が、自分の士官候補生から副長になるまでの体験をもとにして、1833年にメトロポリタン誌 Metropolitan Magazine に掲載した小説です。翻訳は伊藤俊男。訳者のはしがきには昭和16年秋とあります。
タイトルからしてそうですが、訳文は旧漢字と旧仮名遣いで書かれているので、とっつきにくく見えます。でも、読み始めたら、そんなことは気にならなくなるほど、軽快で人情味あふれるお話が、どこか淡々とした語り口で展開していきます。巨口短身砲(キャロネード)とか、二檣船(ブリガンテン)などと書かれているのは、かえって親しみ易かったり。読みどころは、海上の生活や当時の風俗などなので、切り込みや私掠船拿捕などもありますが、激しい戦闘シーンは多くありません。物語は、「私」ピーターの一人称で回想録的に語られます。14歳で海軍に入る事になったいきさつから、船に乗り込んでいろいろな個性的な人々と出会い、様々な経験をし、災難に合いながらも大団円で終わる、盛りだくさんのお話が、ほんの3冊の中にぎっしり詰め込まれています。
「水兵強募隊」について行って、役に立たないどころか足手まといになったエピソードや、嵐を切り抜ける艦長の操船術の見事な描写、乗組員たちの風変わりな身の上話もあり、セント・ヴィンセント沖海戦を体験した舵手の話を聞いたりするシーンもあり。盛りだくさんの中でピーターは、しっかり恋もしています。何よりも、先輩オブライエンとの友情、というより、保護・非保護の関係、『彼自身を除いては誰にも私(ピーター)をなぐらせぬと云っているオブライエン』の面倒見の良さ、二人の仲の良さがいいんです。ピーターを庇って、二人ともフランスの捕虜になり、そこから逃げ出すあたりは、楽しくもまた感動的です。特筆すべきは、この邦訳文の素晴らしさです。好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私は瀬田貞二の「指輪物語」に匹敵する名訳だと思います。たとえば、
『「オブライエン、君は病氣だよ、」と私が云ふと、
「そんなこたあねえんだが、ブランデー壜をからつぽにしちまつた。こまつたものだ。ともかくこれの算段をしなきあなるめえ。」』
といった口調で話すわけですね。海軍士官さんとは思えないんですが、読み物としては、これがまたテンポが良くていいんですよ。岩波文庫の初版発行は1941〜1942年で、「リクエスト復刊」による第2刷は2001年です。こんなに面白いのに、あまり読まれていないようですね。岩波ということもあり、書店に並んでいないことが多いですが、注文すれば取り寄せ可能のようです。
アマゾンjp.へリンクピーター・シムプル 上 (1)岩波文庫 赤 288-1
ピーター・シムプル 中 (2)岩波文庫 赤 288-2、 ピーター・シムプル 下 ...
◇◇◇ 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」 ◇◇◇
- この映画、お話はとってもディズニーなんですが、とにかくお船の映像が素敵です。
でも、港に停泊中に帆をいっぱいに広げていたりします。二人だけで大きな帆船を操船したりします。総督のお嬢様はやたらと船に詳しいし。何しろ海賊たちは幽霊だし。現実離れしていても、そこはディズニー、とにかく楽しい映画です。
巷で人気なのは、ジョニー・デップですが、私はもっぱら、オーランド・ブルーム(ロード・オブ・ザ・リングのレゴラス)目当てで行きました。デップは嫌いじゃないんだけど、雀船長はハズレでした。これってもしかしたら、世界中で私だけかしら。
ノリントン提督や、海兵隊さんたちの制服が素敵です。この映画で、英国海軍のインターセプター号を演じた船は、レディ・ワシントン号です。DVDの特典映像の中には、15分ほどの彼女の素顔の映像があります。撮影のためにカリブ海まで航行した記録です。クルーの人達が、楽しそうな様子がいいです。イルカも一緒に泳いでいます。
◆レディ・ワシントン号のHP http://ladywashington.linsect.com/
「パイレーツ・オブ・カリビアン 2」は、私としてはあまり面白くなかったです。蛸ばっかりで…。ノリントンさんも汚かったし。3作目では役名に Admiral がついているから、また役職に復帰するのでしょうか?
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0325980/
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0383574/
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0383574/◇◇◇ 映画「おろしや国酔夢譚」 ◇◇◇ 帆船物の話ではないのですが、冒頭に日本の船、最後にロシアの船が出てきます。ちょうど、ホーンブロワーの時代と同じ頃のロシア(おろしや)のお話です。
大黒屋光太夫(だいこくや こうだゆう:緒方拳/演)という実在の人物を描いた、井上靖の小説が原作。回船の船頭さんでした。1782年に紀州藩の年貢米を積んで白子港を出航し、江戸に向かう途中で嵐に遭い、200日以上の漂流の末、ロシアの小島にたどり着き、物凄い苦労を重ねた末、ついにエカテリーナ女帝に謁見し、帰国がなったというお話です。この人の話は、以前NHKの「その時歴史が動いた」か何かで見たのですが、本当にすごいものです。乗組員18人の内、ほとんどが死亡して、2人がロシアに帰化、日本へ向かう船に乗ったのは光太夫はじめ3人だけだったそうです。難破から9年後のことでした。
この映画は、お船もお馬も出てきて、目も楽しいのでした。ロシアから帰ってくる帆船、エカテリーナ2世号は、見慣れた様式の帆船です。冒頭の嵐のシーンは、日本の帆掛け舟的な、一本マストに帆が一枚の船です。マストを切り倒して、難を逃れています。みんなで船を造るシーンもあります。
ロシアの本土に入ると、お馬がいろいろ出てきます。たいてい馬車のお馬ですが、雪深いところではトロイカを引いていて、お馬も、もこもこの毛並みでがっしりしていました。トナカイの橇も、吹雪の中をすごい速さで走っていました。日本の本土に戻って、ロシアの帆船が到着した蝦夷と江戸を往復する早馬のシーンだけは、どうしてもクウォーターホースかサラブレッドかという馬でしたが(笑)それも一興。
ロシアのお役人たちは、みんな白いかつらをかぶっていました。
goo:http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD27556/index.html
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◇◇◇ 戦艦バウンティ号の叛乱 ◇◇◇ 本当にあった、バウンティ号の反乱を基にした映画です。艦長はあくまで憎々しく、反乱を起こす副長はさわやかにかっこよく描かれています。強制徴募のシーンからはじまるので、水兵さんたちがどんな心境だったかも、状況を知らない人にもよくわかります。また、深刻な役中にも笑わせるしーんもあり、古風な作りながら、わかりやすく楽しめる作品になっています。白黒作品です。
クラークゲーブルがとってもかっこいいです。士官候補生はちょっと育ちすぎていますが、艦も海もタヒチの風景も綺麗です。この年のアカデミー作品賞をとっています。DVDには「プトケアン島の現在」(当時)というのも入っていました。反乱のあと20年後に見つかったのですが、生存者はただ一人だけでした。彼らの子孫はいまでも島でくらしていて、艦からおろした道具がまだつかわれています。艦の残骸も水のそこに沈んでいました。
goo:http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD27556/index.html
IMDb:http://us.imdb.com/title/tt0383574/
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このページの背景は「Salon de Ruby」さんからいただきました
クリップアートは「トリスの市場」さんからいただきました
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