藤木ゆりこのホームページ 花遊戯
古典芸能&文学・表紙/ 平家物語/ 歌舞伎/ 落語/ 和歌/ リンク


 落 語 
OPEN DEC.19.1998/UPDATE JAN.05.2003


落語、大好きです。でも、寄席にはほとんど行ったことがない。もっぱら、テープやCDです。落語の芸は、表情や身振りも含まれる事を考えると、邪道ファンですね(笑)
私の場合、考えてみると、芝居の録音を聞くように、落語を楽しんでいる節がある。まあそれも、いいんじゃないかと、開き直って、落語のコーナーです。

一口に落語といっても、数限りなくあって、どこから手をつけて良いのやら。関東のとか、関西のとか分け方もあるだろうけど、私としては、どっちも好きだし、、、。
ということで、やっぱり、芝居ネタと馬ネタをとりあえず選んでいます。

参考にした市販のCD、カセットを書いておきました。

※今更ですが、ネタバレ率を低めにしてみました。ところどころ反転にしてあります。ネタバレを気にしない方は、クリックドラッグでお読み下さい。でも、ブラウザによっては効果が出ない場合があるそうです、ごめんなさい。



【馬が出てくる話】
蝦蟇の油馬の田楽厩火事

【芝居の話】
お神酒徳利中村仲蔵淀五郎七段目蔵丁稚かけとり猫忠



【馬が出てくる話】

今の時代は、日本では馬というと、競馬場か乗馬クラブでも行かないと、見られませんが、少し前までは、交通手段として、また農家などの働き手として、普通に使われていたものです。
落語の時代は、そんな時代、馬がどんなものかはみんな知っていたし、もっと身近に感じられたんでしょうね。



厩火事(うまやかじ)
厩焚けたり。子、朝より退く。
曰く「人を傷えるか」と。
馬を問わず
           論語・郷党第十

このおはなしは、「厩焼けたり」ともいうそうです。
髪結いのおさきさんが、仲人の旦那のところに、「あの人には愛想もこそも尽き果てた」から別れる、と訴えにきます。そのご主人はいわゆる「髪結いの亭主」。そんなに言うなら、別れてしまえ、と言われると、おさきさんは本当は別れたく無いらしい。ご主人に優しくして欲しい、本当に自分に惚れてくれているかどうかを確かめたい、ということなんですね。
そこで、旦那さんは、おさきさんに知恵をつけてやろうと、たとえ話をします。まず唐土(もろこし)今の中国での話だと前置きして、上の論語からの話をします。孔子の外出中に厩が火事になってしまった。主人の大切にしていた白馬が死んでしまい、使用人達はきっと叱られると思っていた。しかし、帰った主人は使用人達の安否を聞くだけで、馬の事は何も言わなかった。というもの、「んまあ、えらいですねえ、そのモロコシは」とお調子者のおさきさん。
これと反対の話として「麹町にさる旦那様がいたんだ」「まあ、毛が三本足りないなんて言いますけどねえ、猿が旦那なんですか?」と混ぜっ返す。その話は、高価な瀬戸物を大事にしていた主人が、瀬戸物を持ったまま階段から落ちた奥さんに『瀬戸物は無事か』としか訊ねず、奥さんの体を一言も心配しなかった、後日奥さんがいなくなって、仲人を介して離縁になった。というもの。「んまあ、やな奴ですね、その麹町の猿は!」

さて、ご亭主の大事にしている瀬戸物を壊してみて、どういう反応をするか、試してみろと言われたおさきさんは……。

というわけで、馬が直接出てくる訳ではないんですが。「猿は馬の守り神」という民間信仰がありまして、絵馬などでも猿が馬を引いている図も多いようです。また「午」は火を「申」は水を表していて、正反対という見方もあります。「馬」と「猿」の組み合わせが出てくるのって、そういうことも、ちらりとふまえているのかなあ、と思ったのでした。

ビクターCD落語特選13春風亭小朝(二) 



蝦蟇の油(がまのあぶら)

「馬ってどんな・・?」へ

御存知「蝦蟇の膏薬売り」の大道芸人が主人公です。
『ここに取り出だしたるは、筑波山の麓でしかとれない「四六の蝦蟇の油」』と弁舌さわやかに、見事な居合い抜きの技を見せ、名刀の切れ味を見せます。
『一枚が二枚、二枚が四枚…』これほどきれる業物でも、蝦蟇の油をひとつけつければ、切れ味はぴたりと止まる。拭き取る時はまた、切れるようになると、自分の腕を切ってみせます。
『しかし、こんな傷は造作もない、この「蝦蟇の油を」ひとつけつければ、痛みが去って血はピタリと止まる!さあお立ち会い!!』
…と、この大道芸は見せ物の中でもすごい人気があったそうです。

ところが、商売が上手く行き、一杯引っかけて、もう一稼ぎしようかと欲を出した膏薬売りさん、酔った仕事は上手くいかない物で、『前の手の指が三本後ろが八本…』見物がいつもと違うとヤジを飛ばすと『いいんだよ、こんなのは何処にでもいるんだ…』(笑)紙を切りながら『一枚が三枚、三枚が四枚…』見物は呆れるやら笑うやら。
『…蝦蟇の油をひとつけつければ、刀の切れ味はぴたりと止まる…』ところが、腕が切れて血が流れ出す(笑)
『しかし、こんな物は造作もない、蝦蟇の油をひとつけ…』つけても止まらない、あせって『止まらないときは、めちゃめちゃにつける〜薬の重みで止める〜〜…』大笑い。お客さんからは野次がとぶ。半べそになった膏薬売り、最後には『なんと、お立ち会いに、血止めはないか?』

というお話なんですが、馬は何処に出てくるかと言うと、その前の別の大道芸人の「弘法さんの石芋売り」なんです(笑)
こちらは、の〜んびりした話し方で、『これは、弘法さんの石芋と言うて、胆石、溜飲、食あたりには、よ〜く効きます』そして、石芋の由来を話します。
また、他にも弘法さんのエピソードがあって、ある時、女の人が豆を煮ているのを見て、弘法さんが少しくれと頼むと
「坊さんこれは馬の食べる物じゃ」
と断ってしまいます。後で、その亭主が帰ってきて、豆を食べるとあら不思議、亭主の体は馬になってしまったのでした。
女房はびっくり、弘法さんを追いかけて「私が悪かった、どうか亭主を元の体に戻してくれ」と涙を流して頼むみます。弘法さんが戻って男の首を数珠で打つと元の首に戻ります。続けて手を打ち、背を打ち、胸を打ち、足を打ち…最後に足の間を打とうとすると、女房はあわてて取りすがり
『坊さんどうか、ソコだけは馬並に
!!』(大笑)

朝日カセット 特選圓生十八番集8「百年目」「蝦蟇の油」(朝日新聞社)



馬の田楽(うまのでんがく)

「馬ってどんな・・?」へ

馬に荷物を積んで、運送業をしている「馬方(うまかた)」のお話。人のいい馬方の、のんびりしたお話です。

馬方は、仕事のパートナーである馬を、とても大切にしています。 今日も、味噌の樽を二つ、馬の背につけて、峠を越えて運んできました。馬をつないで、
「ああ、汗をかいたな、すぐ楽にしてやるからな。書類にはんこを貰ったら、荷を降ろしてやるからな」
と声をかけます。近くで遊んでいる子供には、危ないから、近づくなと言って、届け先の家に行きます。

ところが、玄関で声をかけても、誰も出てきません。馬は、まだ、荷を降ろしてもらえないのかと、待っています。
「ちょっと待て、なげーつら、ふくらましてもしゃあねえだろ」
馬は、前がき(前足で地面を掻くようにして、訴えること)をして催促をします。
「待ちなせえ、そんなに、前がきしたら、地面に穴があいちまうで」
「そうだ、俺の顔が見えるから、いけねえだな、閉めておこう」
馬の様子を、直接描写はしていないんですが、馬方のセリフから、馬の様子が、ありありと目に浮かびます。馬方が、馬をかわいがっている様子も、良くわかりますね。

さて、のんびりした馬方が、時間をとってしまって、戻って見ると、なんと馬がいません。近くで遊んでいる子供に聞くと、やっぱり子供達は、馬で遊んでいたのでした。
はじめは、馬の腹の下を怖々くぐって、遊んでいたのが、だんだん調子に乗って、 馬の尻尾の毛を抜いてみたり、(馬の尻尾の毛に牝トンボを結びつけて、雄を集めて獲って遊ぶためなんだって)あげくに、馬の腹の下で鬼ごっこをはじめてしまいます。ところが、一人の子が、馬の5本目の足…後ろ足の間にある、ぶらぶらした足(笑)で、ほっぺたを蹴られたので、怒って、馬のしっぽを5−6本まとめて抜こうとしたので、馬は驚いて、駆け出してしまったのでした。

「何ちゅうことするだ、かわいそうに」「おっぽの毛え抜かれて、痛かんべえに」「早くつかまえて、荷を降ろしてやんねえと」 と言いながら、馬方は、探しに走り回ります。
耳の悪い、おばあさんに「馬しんねえか」と聞くと「うまいもの?芋に串を刺したのならあるで、味噌つけて食べれば…」「だれも、芋の田楽のことを聞いていやせん」
出会う人ごとに聞いても、埒が開きません。最後に、いつも酒に酔っているとらじゅうに聞きます。
「おめえ、馬しらねえか」
「馬ぐれえ知ってるさ、足が四本あって、顔が長くて…」
「そうでねえ、味噌つけた馬、しらねえかって、きいてるんだ」
「ははは…おらあ、今まで、馬の田楽は食った事がねえ
」(笑)

東宝名人会落語名人芸シリーズ 柳家小さん「夏どろ」「馬の田楽」(クラウン/CD)



【芝居の話】

芝居物の特徴と言うと、たいてい、伊勢屋の若旦那が出てくる。どんな人物かと言うと、芝居大好き人間、三度の飯より芝居が好きで、それがもとで、トラブルがまきおこるって筋。
芝居好きの人は、役者の声色(こわいろ)、つまり「ものまね」をするのが癖で、ほとんど病気。そして、これが、落語家さんの芸の見せ所。そして、聞き所なわけです☆

それと、役者さんの出世噺も、いいのがあります。こちらは、感動の実話を題材にしている様です。



お神酒徳利(おみきどっくり)

歌舞伎の「熊谷陣屋」へ/熊谷次郎直実/平家物語

芝居噺じゃないんですけどね。大好きなお話。(いろいろバリエーションがあるらしいんですが、ここでは圓生のです)

主人公は老舗の宿屋の通い番頭さん。大掃除の日に、将軍家から貰った大切な「お神酒徳利」を自分でしまったのをすっかり忘れて、御店は大騒ぎ。後で思い出したけど、今更言ってはいかれない。そこで、賢い奥さんの登場(笑)。奥さんのお父さんは占い者だから、その本を見て占いをする、ということにすればいいじゃないか、と言います。喜んだ番頭さん「生涯に、三度限りの易だから」と言って、もったいを付けて、「算盤うらない」で、徳利の在処をあてます。

ところが、そこに泊まっていたのが、大阪の有名な豪商「鴻池(こうのいけ)」の大番頭さん。お嬢さんの病が、医者でも薬でも祈祷をしても治らない、是非占って欲しいと頼まれて、さあ大変、、、、。

主人公が、特別徳のある人でも、それほどの努力をしたのでもなく、むしろ調子のいい事ばかり言ってるのに、なぜか上手くいってしまうんですね。ラッキーな人です。はったりが功を奏したり、でまかせで「祟りだ」なんて言った、お稲荷さんに返って助けられたり、あれよあれよと言う間に、事が進んで、出世が出来てしまう。面白いお話です。

何で平家物語にリンクしているかというと、落語で「占い者」が出てくると、たいていあまり上手くない。人が集まらないので、お客さんを、「おおーい、おおい」と、扇で招いている。人呼んで「熊谷先生(くまがいせんせい)」(笑)です。これはつまり、一ノ谷の合戦で熊谷次郎直実が平敦盛を呼んだ事に由来するわけです。
それほど、昔はみんなが、平家物語や歌舞伎を良く知っていたんですね。

この噺でも、番頭さんが奥さんのお父さんのことを、「熊谷先生」なんて、言っています。大阪の大金持ちは、鴻池さん、芝居好きは伊勢屋の若旦那、丁稚は定吉、みたいに、パターンが決まっているのが、落語のわかりやすくて楽しいところですね。

朝日カセット 特選圓生十八番集9 「お神酒徳利」他

中村仲蔵(なかむらなかぞう)忠臣蔵・五段目・山崎街道二ツ玉の場

歌舞伎役者のお話。あの、かっこいい定九郎が、こうして出来たとは、この噺を聞いて初めて知りました。

大部屋の役者から、苦労をしてやっと名代(なだい)に昇進した中村仲蔵。今度はどんないい役が来るだろう、と期待をしていると、なんと「定九郎」たったひとつ。この五段目は、四段目の緊張のあと、ちょうどお昼頃で『弁当幕』と言われているくらい、お客さんは、舞台を見ていない。その上、定九郎は赤っ面の山賊の衣装で、誰も注目しない役。

ガックリして、やめてしまおうかと悩む仲蔵を、「これは、きっと良い工夫をして、見せてくれと言う意味ですよ」と励ます奥さん。思い直して、神様に願を掛け、満願の日に雨宿りのそば屋で見た、浪人の、男っぷりの良さ。「これだ!!」と思った仲蔵、早速役作りをして、さて初日。

白塗りに、黒紋付きの尻をはしょって、破れ傘、伸ばしたさかやきから飛び散る水しぶき。水も滴るいい男(「悪の美学」を絵に描いたようなんだこれが)。見物は、思わず感心して、声も立てずに見入っている。ところが、出来が良ければ、掛け声がかかると、期待していた仲蔵は、しくじったと思い、上方へ行って出直すと、奥さんに告げて家を出る。

しばらく行くと、人の立ち話に、
『今日の芝居は良かった。俺は今まで旗本の浪人の「定九郎」が山賊なのは可笑しいと思っていたんだ。仲蔵が、その絵解きをしてくれた。』
と言うのを聞いて、
『ああ、一人だけでも、いいと思ってくれた人がいた!女房に知らせてやろう』
と家に帰る。そこには、師匠のお迎えが来ている。師匠は
『良くやってくれた。俺はおまえの師匠だな、俺まで鼻が高いぜ』
と喜んで、誉めてくれたのだった!!

噺の中に「夢でもいいから 持ちたい物は 金のなる木と いい女房」と言う、どどいつがありますが、いい女房の、言うことをもっともだと聞いてくれる、ご亭主も出来たお人だと思います。良いご夫婦と言うことでしょう。『内助の功』というのは、その受け手の善し悪しもしっかり問われているのだと、これは私の意見でした(笑)

感涙の名作です☆☆☆ テレビで見た、三遊亭円楽のが、最高に良かったの。もう一度見たい!!

ビクターCD落語特選 林家彦六(八代目林家正蔵)「中村仲蔵」 他

淀五郎(よどごろう) 忠臣蔵・四段目・判官切腹の場

これも歌舞伎役者のお話。修行の大変さが良くわかる、人情噺です。
ある時、忠臣蔵の通しをやることになった。座頭は、名人市川団蔵。ところが、判官をやる役者が急病で出られなくなってしまった。
さあ困った。ところが団蔵こともなく「ああ、これでいいや、これにやらせてみな」と指したのが淀五郎。そのために、急に名代(なだい)に昇進した淀五郎、嬉しくて嬉しくて、張り切って演じる判官切腹の場。忠臣蔵一番の見せ場。

中でも、一番のクライマックス、切腹をした判官の側に、由良之助が側に駆け寄る場面。「由良之助か、、、」と目を上げると、由良之助がいない!!あんまり、淀五郎の腹の切り方が下手なので、団蔵が花道に座ったまま、側へ来なかったのだ。どうしたらいいのか、楽屋で団蔵に聞いても
『淀五郎が腹を切ってる所へなんか行かれない』
『では、どうしたらいいでしょうか』
『本当に、切れ』
『本当に切ったら、死にます、、、』
『死んでしまえ』

あまりにも悔しくて、情けなくて、思い詰めた淀五郎、「明日は、舞台の上で、団蔵を殺して、俺も死のう!!」そうと決まったら、お世話になった人たちに、それとなく暇乞いをして、、、最後に寄ったのが、お世話になっている、中村仲蔵。三役腹の切り分けが出来るという名人である。

そこで、淀五郎は、思いを打ち明ける。そんな気を起こしてはいけないと諭され、稽古を付けて貰った淀五郎。次の日の舞台で、見違えるような判官を演じる。
「いい判官だなあ。富士の山は一日で出来たと言うが、、、これならいい!!」と言って、団蔵は側に駆け寄る。「由良之助か、、、」と花道を見ると、団蔵はいない、しかし声は聞こえる、、、気が付けば、側に来ているではないか!!

見込みのある役者には、特に厳しくして、育てていこうとする、団蔵、あまりのつらさに、自暴自棄になってしまう、淀五郎、二人の思いを察して、取りなす仲蔵。役者の修行の厳しさ、人間関係の難しさと、ありがたさが、心に響く、感動のお話です。

朝日カセット 特選圓生十八番集2「淀五郎」 他

七段目(しちだんめ) 忠臣蔵・七段目・一力茶屋の場

忠臣蔵をネタにした落語は、たーくさんあります。中でも、これはかなりポピュラーだと思います。
そしてもちろん伊勢屋の若旦那物です(笑)

若旦那ったら、お使いに行くと鉄砲玉、なかなか帰ってこないのは、こっそり芝居を見に行っているから。今日という今日は、許せない、と、お父さんが、怒るけど、若旦那はまじめなんだか、ふざけてるんだか芝居の声色で答えてくる。つられてお父さんまで、芝居口調になっちゃうわ(笑)、止めに入った番頭さんまで芝居がかって来ちゃうわで、大変。

カンカンに怒ったお父さんに、二階へ行ってろ!!と怒鳴られて、一応自分の部屋へ戻るけど、そこで、おとなしくしている若旦那じゃない。今日見てきた芝居を思い出すと、つい体が動いて芝居の台詞が口をついて出てくる。

うるさい、と、怒って、丁稚の定吉(さだきち)に「静かにしろ」と言って来い、と言いつけるんだけど、この定吉、若旦那に負けない芝居好き。とうとう二人で、芝居のまねごとが始まってしまう。狂言は、忠臣蔵・七段目の茶屋場定吉のお軽(かる)に、若旦那の平右衛門(へいえもん)。はじめは、いい感じで芝居をしていたんだけど、そこは乗りやすい若旦那、勢い余って、定吉に刀で斬りつけて・・・

歌舞伎の好きな人には、たまらなく可笑しい話です。落語家さんのやる声色が、さすがに上手い!!なんの芝居の台詞か、解れば、なお楽しいですね。落語家さんによって、少しずつ、使う台詞が違うのも楽しいです。

ビクターCD落語特選13春風亭小朝(二) 
クラウン落語仮名手本忠臣蔵「七段目」他


蔵丁稚(くらでっち) 忠臣蔵・四段目・判官切腹の場

今度は丁稚の定吉(さだきち)が主人公。これまた、お使いに行くと、こっそり芝居を見に行ってしまう。怒った旦那様に、お仕置きのため蔵に閉じこめられてしまう定吉。せめて、ご飯を食べてから・・・と言っても誰も聞いてくれない。

蔵の中は怖いし、お腹はすくしで、泣き出しても、旦那様の手前、誰も助けに来てはくれないし。そうだ、芝居のまねごとをしていよう、そうすれば、気が紛れる(ここが定吉らしいところ☆)。と、蔵にしまってある、裃やら、刀やらを持ち出して、始めたのが、忠臣蔵・四段目・判官切腹の場。そこに、やっぱり心配で様子を見に来た同僚が、これを見てびっくり・・・(笑)

この四段目って言うのは、歌舞伎のページでご紹介した通り、それはそれは、いいお話なんです。歌舞伎が、今の様に堅苦しいイメージの物でなく、庶民の娯楽だった頃は、誰でも知っていて、舞台の様子が頭に浮かぶ所でした。芝居好きなら、ついまねごとをしたくなるのも当然(笑)。そして、定吉のまねごととのギャップは可笑しすぎる(笑)だからこそ、落語のネタにもなっているんですね。


かけとり 忠臣蔵・四段目・判官切腹の場、ほか

これはね、歌舞伎だけじゃ無くて、狂歌やら、漫才やら、相撲、etc.いろいろ出てきて楽しいお話。

落語の主人公はたいてい、貧乏。年の瀬になると、「掛け取り」つまり、借金の催促が、跡から跡からやってくる。来て貰っても、無い物はない。
どうやって断りを言おうかと、考えた末、そうだ、掛け取りに来る人の好きなことを話題にして、煙に巻いてしまおう☆と、芸達者の主人公、相撲好きの八百屋さんには、呼び出しのまねごとをする、洒落好きの米屋さんには駄洒落を言う、喧嘩好き(笑)の酒屋さんには、喧嘩をふっかけてまで上手く帰って貰う。

芝居好きの醤油屋さんには、上使(じょうし:幕府のお使い)に見立てて「お掛け取り様の、おいーーりーーー」なんて言って、上手く乗せて、断りを言う。また、みんな好きだから、上手く乗せられちゃうんだね。落語の登場人物は、お気楽な人が多いです(笑)

朝日カセット 特選圓生十八番集6 「掛取万歳」他

猫の忠信(ねこのただのぶ) 義経千本桜

歌舞伎と言うか、義太夫の話ですけど、まあ、細かいことは言わないでね。
男達が、義太夫の稽古屋に行く理由と言えば、美人のお師匠さん。あわよくば、いい仲になりたい(この人たちを「あわよかれん」と言います)。お師匠さんは、実は自分の事が好きなんだ、、、と思いたいのが男心(笑)。

ある日、次郎吉が、稽古屋へ行くと、友だちのつねやんがお師匠さんと差しつさされつよろしくやっている。怒って、(奥さんに告げ口する気で)つねやんの家にいくと本人がいる!?どうなってるんだーーーと、二人で見に行くとなんと、そこに居たのは、猫が化けたつねやんだった。

と言う、狐忠信の、パロディですね(笑)親の皮で作られた、お師匠さんの三味線をしたって、入り込んでいたというわけ。狐だ、化け物だと怖がっていた次郎吉、猫だと解ったら、大喜び、「今度の会は、うまくいくでー!」「なんでや?」「演目が、義経千本桜、あんたが吉野屋の常吉で義経(よしつね)、お師匠さんの名前は、おしずさんで静御前、狐忠信が狐やのうて、猫のただのむ(ただのぶ)や!」(笑)
落語の登場人物というのは、みんなお気楽でいいですね(笑)



一番上に戻る古典の表紙へホームページに戻る

このページの背景は「千代紙つづり」さんから頂きました。