◆PJ映画第三部「ホビット 決戦のゆくえ(原題:The Hobbit: The Battle of the Five Armies)」の感想をアップしましたよろしかったらご覧ください。
待ちに待った、本当に待たされた映画の公開でしたが、とても楽しく見ることができました。かなり意外なところもあり、なるほど〜と感心するところもあり、とにかく、次が早く見たいと、思わせる展開になっています。いやあ、PJとその仲間たち、さすがです。
何かで見たのですが、PJ監督曰く、映画を見る観客のうち80%は原作を読んでいないと思って作るということでした。私は少ない20%の方ですが、原作を知っているからこその、楽しみ方で、感想を書いていきます。自然、原作は…というところが多くなりますが、そこのところはご了承くださいませ。
長くなるので、原作「ホビットの冒険」の段落のタイトルで分けてみました。◇すこし追記しました。この色の文字の部分です。(2014.MAR.14)
◇さらに追記しました。この色の文字の部分です。(2014.MAR.21)※映画を見た方に向けて書いてあります。ラストシーンまでの映画の内容を、具体的に書いてありますので、未見の方はご了承の上お読みください。
◆不思議な宿り Queer Lodgings
ビヨルンのおうちに行く前に、冒頭、何とブリー村からはじまります。あの道はLOTRと同じ角度かな?最初に道を横切ったのは、カメオ出演のPJ監督でしたか?一瞬でよくわからなかったんだけど。人参はかじって、いなかったと思います。 失礼しました、やっぱりかじっていました。LOTRと同じですね。多分人参です。どうしてなんだろう(笑) ともあれ、こういう遊び心がいいですよね。
3度目にしてようやく人参であることを確認しました(笑) 人参の葉っぱまで見えました。
ネット上の情報によると、ウエイトレス役はPJのお嬢さんだそうですね。彼女は前作のEE(延長版)ではビルボのお母さんベラドンナ・トックを演じていました。懐かしい、「踊る小馬亭」です、「指輪物語」「LOTR」で、フロド達がアラゴルンと初めて会ったところです。大きい人や小さい人やいろいろなお客さんがいて、怪しげな輩もいて、トーリンを狙った賞金稼ぎみたいなのもいましたね。アラゴルンだって、十分怪しかったしね。1年前に、トーリンはガンダルフとここで会っていたんですね。食事はあまり美味しそうではなかったけど、あのパンは食べてみたいなあ(パン好きなので)。そうそう、フロド達がナズグルに襲われたのもここでしたね。今回も、後半で少しナズグルに触れているところがありました。ナズグルは、サウロン(ネクロマンサー)の作った指輪のうち、9個が人間に渡され、その持ち主が指輪の幽鬼となりサウロンの手下として働いているのです。「黒の乗り手」とも呼ばれていましたね。
◆指輪については「ひとつの指輪とスメアゴルのこと」もご覧くださいませ。スメアゴルはゴクリ(ゴラム)のもとの名前です。今回の映画では、原作ではあえて触れられていない、ガンダルフの本業の方が詳しく描かれていますね。トーリンたちの旅を勧めたのが、ガンダルフで、それは竜が闇の勢力に加担したら大変なことになるのを懸念してのことだったんですね。なるほど。初めに観たときは「踊る小馬亭」に驚いて、話は半分しか聞こえてなかったんです。
ガンダルフは、今は行方不明になっているトーリンのお父さんスラインにも、同じようにドーワフの7種族ではなれ山をスマウグから取り返すことを勧めていたそうです。スマウグが持っているアーケン石を盗み出すために、忍びの者(burglar)を紹介しようと言っています。いつ聞いても読んでも、それはビルボが気の毒ではないかと思うんですけれどもね。映画のガラドリエルさまも、なぜホビット、ビルボなの?と訊ねていらっしゃいましたよね。
さて、原作では(本人たちは緊張しているのですが)とてもほのぼのとした展開でビヨルンに会いに行きます。大ゴブリンを退治した話などをするのです。でも、この映画ではいきなり、留守の家に押しかけて、主人のビヨルンを締め出してしまうのでした(笑) ビヨルンはあとでよく怒らなかったね。ここは、追加映像で説明されるでしょうか?
ただ、ここは、映画としてはとてもわかりやすい良い工夫だったと思います。原作だとガンダルフが、ビヨルンは敵に回したらどんなに恐ろしいかドワーフたちに話して聞かせます。彼は皮を変えるのじゃ、といわれてビルボが、毛皮を売る人ですか?と尋ね、そんなことは絶対に言ってはならん!と言われたりするのです。でも、映画では、始めに恐ろしい大熊の形になったビヨルンを出して、その上、あの強気のオーク、アゾクでさえビヨルンを見て撤退してしまうという、わかりやすい演出をしています。どんなに怖いか良くわかりますよね。おまけに、変身するシーンもシルエットで見せてくれましたね。ビヨルンの食卓、やっぱり蜂蜜がいっぱいでした。ミツバチも巨大だった〜。もう少しじっくり食事のシーンなど見たかったなあ。とっても短かったです。EEの追加映像で見られるかな。ドワーフたちは、噂通り、おとなしくしていましたね。小馬さんや山羊さんたちのお給仕は無いだろうとは思っていたけど、やっぱりありませんでした(笑)
チェス盤があって大きい駒が並んでいました。ビヨルンは誰とやるんだろう。もう一人ぼっちになってしまったと言っていたけれど。ほかの普通の熊さん達が来るのでしょうか。原作では夜、熊さんたちが野原にダンスをしに来たりするんですよね。それとも、チェブラーシカに出てくるワニのゲーナみたいに、一人チェスをしているのかな?だったら切ないですね。ちなみに、吹替え版のキーリの声の土田大(つちだひろし)氏は、新しい方のアニメのチェブラーシカでゲーナの声をあてている方なのでした。
それから、チェス盤や食卓の上にいた白いハツカネズミをみて、映画「スチュアート・リトル」を思い出したのは私だけでしょうか? あの映画、ネズミのスチュアートがとってもかわいくて大好きなんです。ビヨルンのところのポニーちゃんたち、ぶち毛でとってもかわいかったです。もっとじっくり見たかったなあ。馬具はどんなのでしたかね。ビヨルンは乗らないだろうに鞍はあったのかな。ガンダルフのお馬の頭絡はアップになっていて、革ではなく布で編んだようなものでした。
ドワーフたちは、鞍ではなく、布のようなものを馬の背中に置いて乗っていたように見えました。でも、やっぱりこのシーンは短くて、良くわかりませんね。
◆ハエとクモ Flies and Spiders
原作では、ガンダルフは用事があるからと、ドワーフたちと闇の森の入り口で別れるのですが、確かにわかりにくいかも。今回の映画では、ガラドリエルさまの声が聞こえて来て、ネクロマンサー(サウロン)の行動を調べにいくことに、急遽なったのでしたね。これはいい説明だったと思います。 闇の森には、サウロン(ネクロマンサー)の魔力が及んできているようで、「ひとつの指輪」であるビルボの指輪が反応しています。ビルボが指輪の誘惑を感じて不安になり、ガンダルフに話そうとしますが、思いとどまります。中つ国の平和のためにはここで渡した方がよかったのでしょうけれど、この旅のためには渡さなくてよかったですね。原作は「指輪物語」より前に書かれたので、まだ指輪をそれほど恐ろしい物とは扱っていませんが、映画は「LOTR」の方が先だったので、それを踏まえています。となれば、はやり指輪から囁くような声が聞こえるのも、とても分り易い演出です。もちろんここではまだ、ビルボは何も知らないわけですけれども。でも、やっぱりこの声が聞こえてしまうと、ビルボが蝕まれてしまうのではないかと、心配になってしまいますね。
ドワーフたちは、闇の森を何日も歩き続け道に迷いますが、原作のようにボンブールが川に落ちて魔力で眠ってしまったり、美味しい夢をみたり、お腹を空かせたドワーフ達が重いボンブールを運ぶ羽目になったり、白い鹿が出てきたり、エルフが宴会をしていたりは、しませんでしたね。
ビルボが木のてっぺんに登って周りを見てみるシーンは、予告でも見ましたが、感動的でした。ちょっと、あの蝶々の大群は、粉がかかりそうだったけど、はるかエレボールまで見渡すことができました。しかし、下ではドワーフたちが大蜘蛛につかまって繭玉のようにされていました。怖いですねえ〜〜。ここはビルボが自分の剣に命名する名シーンです。原作では始めの蜘蛛を退治したときに、自分で思いついて名づけるのですが、映画では蜘蛛が刺したな〜〜と叫んだところから思いついていましたね。これからも、活躍し、のちに「指輪物語」でフロドに引き継がれる名剣、スティング(つらぬき丸)の名前の由来です。
吹替え版は、かなり瀬田貞二訳を踏襲していていい感じなのですが、ここは苦しそうでしたね。剣の名前スティングを瀬田訳では「つらぬき丸」としているのですが、LOTRでも今回も映画では「スティング」のままにしているので、刺したという日本語に対して、スティングと言わなければならかったのでした。
英語の台詞だと、頭を刺された蜘蛛「It stings! Stings!」、ビルボ「Sting. That's a good name.」とリズム良く決まるんですけれどもね。ここは、仕方がないです。ちなみに、蜘蛛の話すのが結構高い声でしたよね。BBCのラジオドラマのCDを持っているんですが、ここでもとても高い声で話していて、そっくりな印象だったんです。英語圏の人の蜘蛛の声のイメージってこうなのかしら?と怖い蜘蛛を見ながら思ってしまったのは、観客多しといえど私だけだったでしょうね(笑) CDはこちらに紹介してあります《「ホビットの冒険」のこと》
映画の第一部「ホビット 思いがけない冒険」では、歌がいろいろ聞けたので、今回もいくつかは入っているかとちょっと期待していたのですが、残念ながら、何もありませんでした。ビルボが蜘蛛を攪乱するための即興「糸くりテンテン」の歌を聴きたかったんだけどなあ(笑) この章のタイトル「ハエとクモ」はビルボがドワーフ達から蜘蛛を引き離すため、蜘蛛をからかう歌をうたいながら逃げるところからきています。「ほれほれここだぞ、小っちゃいハエだぞ…のろまグモ…」と歌っているのでした。このシーンだけで、二つも歌があるのです。
蜘蛛と戦いながら、ビルボは指輪落としてしまいます。例によって地響きを立てて指輪は地面におちます。必死に探して見つけて「Mine!」とつぶやいたビルボの形相がかわっていました。怖いですね、こんなに指輪の影響を受けているのかと、心配になります。ビルボ本人もそんな自分に気付いてハッとする様子を見せています。
指輪がアップになるとき、囁くような闇の言葉が聞こえてきます。これはLOTRでもそうでしたね。指輪の内側にかかれていた言葉で、今は消えて見えなくなっている言葉です「一つの指輪は、すべてを統べ、一つの指輪は、すべてを見つけ、一つの指輪は、すべてを捕らえて、くらやみのなかにつなぎとめる」と言っているそうです。これは、「指輪物語」で語られているサウロンの指輪についての言葉です。恐ろしいですね。この指輪のうち、人間の9つの指輪をもらった9人の墓に、ガンダルフは行っています。案の定、そこは廃墟となり、死人はいなくなっていました。第一部でラダガストを襲ったのが、きっとそのうちの一人だったのですね。と、三度目にしてやっとわかりました。この、封印されていた人間の墓場とドル・グルドゥアと混同してしまっていて。この墓で、ラダガストと会って、そのあと、ウサギのソリでドゥル・グルドアまで連れて行ってもらっているのですね。
そういえば、第一部のEEでは、ドワーフの指輪のうち最後の7つ目は、トーリンのお父さんスラインが持っていたけれども、彼は行方不明になっていると、ガンダルフが裂け谷で言っていたような。◆上の方にも一度紹介しましたが、指輪については「ひとつの指輪とスメアゴルのこと」もご覧くださいませ。スメアゴルはゴクリ(ゴラム)のもとの名前です。
さて、蜘蛛と戦う森の中、ここでエルフ登場です。なんとレゴラスです!!もちろん予告で見ていたけれども、やっぱり、面白い展開です。噂の女のエルフ、タウリエルも登場です。エルフたちは、最近増え続ける蜘蛛退治に来ていたんですが、縄張りの森への侵入者として、ドワーフたちを連行していきます。ここの捕まったシーンはいろいろ小細工がしてあって楽しかったですね。何より、ギムリのお父さん、グローイン、持ち歩いていた二つの肖像画をレゴラスに取り上げられて、これは誰かと聞かれ、それは妻だ、そっちは息子のギムリだ、と答えていました。さすがにここでは映画館の客席全体から笑いが聞こえました。みんな、LOTRを見た方たちですね。嬉しい演出です。また、フィーリは後から後から武器が出て来て、いったいいくつ持っていたのでしょう。トーリンも、トロルの穴で手に入れた、せっかくの名剣オルクリストを取り上げられてしまいます。
◆牢から逃げだすたるのむれ Barrels Out of Bond
森のエルフに連行されるドワーフ達のあとを、指輪をはめたビルボが追いかけます。エルフの魔法のドアが閉まる寸前に駆け込むことができました。ここも原作にある通りで、嬉しくなります。 さあ、森のエルフの王、レゴラスの父としても有名なスランドゥイルさんが登場です。美しいですね。冠には季節の飾りがついています。今は、木の実と紅葉した葉で飾らています。ちゃんと木の葉がついていたのは嬉しかったです。木の実もあったら、もっと良かったんだけど。春には森に咲く花で飾られるはずなんですが、それも見たかったなあ。
すみません、ちゃんと小さい木の実もついていましたね、王様の冠。もっと、こぼれんばかりのブドウのようなイメージがあったので、見落としていました。でも、このデザインだと、あの大きさがちょうどいいかもしれません。それから、第一部では緑の葉っぱと、小さいお花も飾ってあったみたいです。テレビ画面だと小さくてわかりづらいのですが、見直してみてわかりました。
一人ずつ別々の牢に入れられたドワーフ達。キーリがかわいかったですね。タウリエルとの会話が良かったです。キーリは文字の刻まれた黒くて丸い石を持っています。お母さんと、無事に帰ると約束した印だそうです。ここは、ぐぐっときますね。PJ、さりげなく憎い演出をしています。また、タウリエルは星空の下を歩くのが好きと言うような話をしていましたね。ここも、原作ファンとしては、ああ…と感動するセリフでした。ここは、「ホビット」の原作にもさらっと触れてあるのですが、「シルマリリオン」という中つ国のずっと昔の神話のような時代の話にさかのぼります。初めに神様であるエル(イルーヴァタアル)がエルフを作った時は、エルフたちは星空の下で暮らしていました。そのあとに人間をつくり人間のために太陽を輝かせたのです。ちなみに、ドワーフはエルが作ったのではなく、天使のようなヴァラールのおひとりが、エルフが作られる前に作ってしまって、神様に叱られて、エルフが生まれるまでは、眠らせたままにしてあったのでした。この最初のドワーフたちの一人がドゥリンです。
星と言えば、思い出すのが「指輪物語」でフロドが旅に出てすぐのころ、エルフに出会った時に言った、ビルボに習ったエルフ語のあいさつです。「エレン シラ ルメン、オメンティエルボ(われらのあい出会う時 ひとつ星が輝く)」というものです。星はエルフにとって、大切なものなんですね。
キーリはタウリエルに淡い恋心を抱いた様子、また彼女も彼を憎からず感じているようです。なにしろ、「ドワーフにしては背が高い」なんて、エルフが普通言いませんよね(笑) ところが、なんとレゴラスはタウリエルを想っているらしく、こんなところで三角関係が発生?面白いですね〜本当に意外な展開で、これからがとても気になるんですけど、PJ監督!おまけに、マイペースのスランドゥイルさんは、タウリエルに息子をたぶらかすな、というようなことを言うし。彼女的には、そんな気はなさそうでしたけど、どうかな。原作からはかなり離れた展開ながら、映画的にはとてもワクワク感が増して、またとても良い感じでした。
さて、エルフの宮殿の中でも、展開が速いです。原作では何日もビルボは孤独に過ごしながら、ドワーフたちを助ける手立てを考えるのですが、映画だとその日のうちみたいでしたね。またこの辺にも追加映像が入るのかな?樽に入って逃げ出すのは同じですが、なんと、オークが襲って来て、レゴラスたちエルフが退治に来るというすごい展開になっています。樽から出ているドワーフの頭を足場にするなんて、すごいアクションでしたね。ドワーフたちも、樽の中から必至で抵抗し、オークの武器を奪って戦います。地上で戦うレゴラスの背後から、オークが襲ってきたとき、トーリンが武器を投げつけて助けていましたが、それにレゴラスは気づいていなかったようでしたね。トーリンってエルフには抵抗するけれどやっぱり根はいい人なんです。
◆心からの大かんげい A Warm Welcome
オークたちから逃げのび、川岸へ上がることができたドワーフ達。でも、キーリはオークの矢を足に受けて怪我をしてしまっていました。そこへまた、矢を射かけてくる一人の人間。なんと、バルドです。かっこいいですね〜〜。実は原作のバルド、大好きなキャラクターなんです。本来ならまだまだ出てこないんですが、やっぱり映画ならこの辺からですよね。バルドは彼らを怪しんでいますが、ここはお話の上手なバーリンがうまく交渉して、湖の町に運んでもらう算段をします。
ところで、エルフの牢獄につかまった時、武器はとりあげられたけど、お金は大丈夫だったのね、ドワーフさんたち。
バルドはカムフラージュのために、ドワーフの入った樽の中に魚を詰めます。え〜〜〜私としてはここが一番つらかったな。魚嫌いなんです。私ならここで窒息してしまいます(笑) しかしながら、それだけでなく、トイレの穴からバルドの家に導かれるという、何とも散々な目にあうドワーフ達でした。映画のバルドは、ドワーフをお金をもらったから助けたのであって、あまり歓迎はしていませんでしたね。彼の家の窓からは、ドワーフの作った大弓が見えました。これは、第一部冒頭で豊かだったデールの町が火を噴く竜のスマウグに襲われたシーンで、弓を放っている映像が印象的だった、あの四つ又に分かれたような特殊な形をした弓でした。
失礼しました、ここは記憶違い。劇場版の本編では、大弓の映像はありませんでした。エクステンディット版の方にあったのでした。それと、予告編には出ていたのでしたね。
ちなみに、バルドが最初に出てくるシーン、矢じりの形がアップになっていたのを、3度目にしてやっと気づきました。あの、黒い大きい矢と同じ形なんですね。
ここでまた、第一部に続いてバーリンの昔語りです。あの竜の襲撃の時、当時の領主で弓の名手だったギリオンが、大弓でスマウグを狙って何本かの黒い大きな矢を放ったのですが、ついに倒すことはできず、街は廃墟となってしまったそうです。すると、バルドの息子は、ギリオンの矢は、スマウグの胸に当たった、もう少しで倒せたんだと主張します。これは、映画オリジナルの設定ですが、面白いですね。バルドは、ギリオンの末裔なのです。
さて、湖の町エスガロスには、山の下の王が帰って来て、再び町が富栄える、という言い伝えがありました。原作では、エスガロスに着いたトーリンは堂々と正面から入って、門番に町の統領のところまで案内させるのです。そして、伝説が本当になったと民衆が喜んで、その勢いに押されて、計算高い統領も受け入れるという展開なのです。
映画では、もっと大人の事情でしたね。私腹を肥やす統領と、貧しさにあえぐ民衆、反乱が起きないかびくびくしている彼は、バルドが首謀者と思っています。ドワーフたちが、はなれ山に行くのを助けてほしいと、統領に申し出た時、バルドは反対しました。そのバルドに対して逆のことをするために、統領はドワーフたちを受け入れたのでした。まったく、分かり易かったですね。バルドは、トーリンの名前を聞いて何かを思い出し、骨董屋か何かに走って行って、古いタペストリーを探します。それには、トーリンの家系図が描かれていました。そして、古い言い伝えを思い出します。一回目に観た時には、気づかなかったのですが、これは、原作にある歌をアレンジしたものでしたね。
「山の下にすむ王は」の歌のページを作りましたので、興味のある方は合わせてご覧ください。原作では川でずぶ濡れになったのは、ビルボだけだったので、彼だけ風邪をひいてしまって、具合が悪くなっています。ドワーフたちは歓迎の宴会三昧で、この町に2週間ほど滞在し、疲れを癒して出かけたのですが、映画ではまた、すぐに出発していますね。
そして具合が悪くなったのは、キーリでした。オークの矢には毒が塗ってあって、それが回ってしまっていたのです。出発の時、トーリンはキーリに町に残るように言います。そして、看病のためにオイン、弟を置いて行けないとフィーリ、酔いつぶれて寝過ごしたボフールも町に残ったのでした。これまた、びっくりな展開ですね。いったい、どうなるのでしょう?ここはやっぱり、説明不足というか、頭領の「ウエルカム」から出発までの時間の経過が早すぎです。きっと延長版の追加映像で見られるのでしょう。
◆入り口の階段に腰かけて On the Doorstep
湖の町エスガロスを出た後、ドワーフたちとビルボは、竜の攻撃で荒らされた谷間を目の当たりにします。これが「スマウグの荒らし場」です。バーリンが「The Desolation of Smaug」とつぶやいていますね。この映画のタイトルでもあります。 原作では、はなれ山に着いてから、入り口を見つけるまで数日かかりますが、映画ではすぐに見つかります。そして、ビルボの根気と機転で鍵穴を見つけて入ることができました。
実はここにも、本当はポニーちゃんたちが出てくるんです。エスガロスで用意された小馬たちが、陸路先回りしてトーリンたちが船で着くのを待っているはずでした。でも、その後スマウグに食べれられてしまう運命なので、出てこなくてよかったかも。ほんの一瞬でしたが、ビルボが鍵穴を見つけた時、ツグミがカタツムリをトントンと石にぶつけていましたね。映画の第一部のラストシーンでも、やっていましたよね。地図に隠された月光文字の「…ツグミがたたくとき…」の言葉のとおりでした。
ところで、ツグミのスペルは thrush です。原作者のトールキン教授はオックスフォード大学の言語学の教授でいらっしゃいました。趣味でエルフ語も作ってしまわれた方です。本を読んでいると、教授は「th」の英語独特の発音がお好きだったのねと思います。トーリン Thorin、スライン Thrain、スロール Thror、みんなThで始まりますし、湖の町エスガロス Esgaroth にも、エルフの住むロスロリエン Lothlorien 、スランドゥイル Thranduil、アセラス Athelas 、ミスリル mithril にも使われているし、「指輪物語」でナズグルに襲われたフロドが叫んだ「アー、エルベレス!ギルソニエル! O Elbereth! Gilthoniel!」など、エルフ語にもありますよね。映画第一部でも、裂け谷でエルフたちはガンダルフのことをミスランディア Mithrandir と呼んでいました。ガンダルフのエルフ語名です。この th の音は、英語以外でもいくつかの原語にはありますが、あまり多く見かけるものではなく、独自性を増している気がします。
良かったら合わせて《「指輪物語」を楽しむキーワード》もご覧ください。入口を入ったところの内側に、7つの種族をまとめる王の玉座とその上に輝くアーケン石のレリーフがありました。これも映画のオリジナルですよね。映画の冒頭でも、ブリー村でトーリンがドワーフの七つの種族をまとめるためには、アーケン石が必要だと話していました。
サウロンの指輪のうち七つはドワーフの王に渡されていました。やはり、映画としては7つの種族に言及しておいた方が良いのでしょうね。これからどのように展開するのか、ここの所も楽しみです。
◆中に入ってたしかめる Inside Information
原作では、ドワーフたちの物語にはかかわりが無いからと、ガンダルフが別行動をしていたあいだ、どこで何をしていたかは語られていません。ただ、物語の初めに、トーリンにお父さんの地図と鍵を渡したとき、どこで手に入れたかを話しています。彼は、ネクロマンサーの地下牢でお父さんにあったのですが、もう自分の名前もトーリンの名前も忘れるくらい弱り、魂のぬけがらとなっていて、助け出そうとしたけれども手遅れで、ガンダルフひとり命からがら逃げ出すのがやっとだったそうです。
映画では、ここでネクロマンサーの砦に単身乗り込んでいるんですね。なんと、オークの軍隊が組織されているところでした。その指揮官がアゾクなんですね。あまり、見る機会のない、ガンダルフの魔法の力が、ここではフルパワーで発揮されていました。かっこよかったです。しかし、オークに抵抗することはできましたが、何とネクロマンサーが出て来て、とうとうつかまってしまいます。鳥かごみたいな小さい檻に入れられてしまって、また、これからどうなってしまうのでしょう。ガンダルフがネクロマンサーと戦って、壁に貼り付けられてしまったとき、「サウロン」とつぶやいていますね。原作ではあくまでネクロマンサー(瀬田訳では、しびと占い師)なのですが、ここは映画LOTRの後に作られた映画だという事を考えると、やはりそろそろ「サウロン」の名前を出さないといけませんよね。一つの目であらわされる姿も、LOTRを思い出して懐かしい感じがします。
そうそう、今回のガンダルフの衣装には、銀のスカーフを新調しているそうですね。素敵です。あのとんがり帽子は戦いのさなかに無くしてしまったように見えたのですが、大丈夫かしら。
湖の町エスガロスでは、トーリンを探してオークがバルドの家を襲ってきます。ところがバルドはそのころ、統領の手下につかまって、牢に入れられてしまいました。急を救ったのは、レゴラスとタウリエル。レゴラスは一人で大勢のオークを倒します、すごい立ち回りでしたね。最後のオークは、ワーグに乗って逃げ、レゴラスは何と白馬に乗って追いかけるのでした。そうか、ここまで馬で乗って来ていたのね。それまで、森のエルフが馬に乗っているシーンが出てこなかったので、いきなりで、ちょっとびっくりでした(笑)
実は、エルフ王スランドイルさんの趣味は狩りで、良く馬に乗って出かけられるそうです。エルフたちの弓の腕といえば、闇夜に小鳥の目を射抜くことができるほどなのだそうです。映画では見られなくて残念でした。オークは追い払ったものの、キーリは毒が体に回って瀕死の状態でした。アセラスが豚の餌になっていると聞いたボフールが町中を駆け回って見つけて来ていました。そして、タウリエルは、ついて来いと言うレゴラスの言葉に逆らって残り、アセラスを煎じてエルフの技でキーリを治すのでした。
アセラス!王様の葉っぱですよ!! また、PJの嬉しい演出ですね。LOTRでナズグルの剣に傷ついたフロドを、アラゴルンが治したあの薬草です。エオウィンも治したのでしたね。熱に浮かされているキーリは、目の前に思いを寄せるタウリエルがいるのを見て、これは現実ではない…とつぶやきます。複雑な心境のタウリエル。これからどうなるのでしょう。さあそして、いよいよ、ビルボとドラゴンとの対面です。
期待していたけど、期待以上に面白かったです。指輪をはめて入っていくけど、途中で外して、スマウグに姿を見せるのですね。初めにドラゴンの目を見つけてそのあと反対側が動いたのに気付いて、竜の大きさを予測するシーン、良かったですね。あの、巨大な竜と面と向かって会話ができるビルボってすごい。その上、アーケン石を見つけて、目で追いながら話しています。スマウグが、ドワーフのことを言ったとき「ドワ〜フ?」ととぼけて聞き返すところも良かったですね。かなり原作の台詞が生かされていて、嬉しかったです。ドラゴンは巧妙に、ドワーフたちに疑いを抱かせるようなことをビルボに言います。また、竜はホビットの匂いを嗅いだことが無くて、正体を知りたがっています。ビルボは竜に本当の名前を教えないように、いろいろな名前をいいます。熊の友、鷲の客、運のいい数字、樽に乗る者、などと言ってから、スマウグが樽に反応したのをみて、調子に乗りすぎたことに気付きます。この辺の表情がいいですね。大げさすぎず、でも良くわかる、マーティン・フリーマン、さすがです。ここも、記憶違いがありました。スマウグに問われて名乗るところ、鷲の友、クマの客、運のいい数字は省略されていました。山の下から来たとか、空をかけるとか、見えずに歩く者とかは言っていましたよね。
原作では、ビルボは一度スマウグが寝ている間に宝の山から、ゴブレットを一つ持って戻ってきます。映画では省略されて、初めに入った時にもう見つかって会話をしています。でも、良く見るとスマウグが目覚めるとき、手には小さい金のゴブレットを持っているんです。PJ監督、憎い演出ですね。
ドラマ「シャーロック」の相方、ベネディクト・カンバーバッチがスマウグの声と、モーションキャプチャーをやっているんですが、これ、モーションキャプチャーの必要はあったのでしょうか(笑) あんまりにも、竜がくねくねしているので、そう思いながら見ていました。ともあれ、第一部はゴクリ(ゴラム)この第二部ではスマウグとのやり取りが、映画の眼目ですね。迫力の映像で見られて良かったです。これでもかという宝物の山がすごかったし。左胸の、うろこがはがれているのも、ビルボは見つけましたね。バルドの息子の言ったことは本当だったんですね。
さて、原作ではトーリンたちドワーフは、スマウグと対面することがなく、竜退治に来たはずなのにという感じなのですが、映画ではものすごいアクションシーンが繰り広げられました。たしかに「リベンジ」に来ているんですからね。映画としてはこういうシーンはあって良かったと思います。きっとここでかなり時間を使うために、これまでが駈足になったのね(笑)
スマウグが火を噴く前に、胸のところが火をためている感じであかく光るのがわかり易くて良かったですね。ちょっとワクワクしますよね。トーリンたちは、火を噴く竜の攻撃をかいくぐって、精錬所におびき出し、溶かした金をかけて倒そうとします。すごい大がかりな仕掛けでしたね。しかし、倒したと思った竜は、金色の姿になって飛び立ち、湖の町へ飛んで行ってしまうのでした。竜は、ビルボの「樽に乗る者」という言葉から、湖の町と共謀していると思い込んで、攻撃しに行ったのでした。自分の失言が、そして、ドワーフたちがはなれ山を取り戻そうとした行動が、町の人々に被害を及ぼす結果になったのです。湖に向かって飛んでいく竜の姿を見た、ビルボの最後の台詞 「What have we done.」(字幕はどうなっていたでしょうか)僕たちは何という事をしてしまったんだ、という意味ですね。彼の後悔と動揺が、本当にこの一言とその表情によく表れていました。このあと、第三部がどんな展開になるのか、ビルボの行動の動機付けがここでなされているのだと思います。
ああ、早く続きが見たいですね!!
◇PJ映画「ホビット 思いがけない冒険」(映画第一部)の感想のページはこちらです。
《youtubeへリンク》◆エンディングの曲「I See Fire」(別窓が開きます)
http://www.youtube.com/watch?v=uf8Fwiy0Bkc&feature=player_embedded
上に戻る 指輪物語TOPへ SITE MAP HOME
このページの背景は「Little Eden」さんから頂きました