メニュー タイトルをクリックすると内容に飛びます 2001年
★オペラ「ヴェニスに死す」新国立劇場中劇場 '2001.DEC.22 ★『NHK交響楽団定期公演2001年12月C公演』NHKホール '2001.DEC.15
★グスタフ・レオンハルト チェンバロリサイタル『優雅なる肖像(ポルトレ)』第一生命ホール '2001.DEC.09
★『エリアフ・インバル指揮 ベルリン交響楽団演奏会』サントリーホール '2001.NOV.21
★『コー・ガブリエル・カメダ リサイタル』横浜みなとみらいホール '2001.OCT.25
★『樫本大進 ヴァイオリン・リサイタル』紀尾井ホール '2001.SEP.22
★『セブンスターズ・ガラ・コンサート』東京オペラシティ '2001.SEP.07
★「ロストロピーヴィチのオーケストラルバレエ『ロメオとジュリエット』」 東京文化会館大ホール '2001.APR.15
★「ユーリー・バシュメット&モクスワ・ソロイスツ合奏団演奏会」 東京文化会館大ホール '2001.FEB.27
★「ロストロポーヴィチ指揮ロンドン交響楽団演奏会」 サントリーホール '2001.FEB.15
- オペラ「ヴェニスに死す」を観に行きました
- 新国立劇場中劇場 '2001.DEC.22
- 作曲 ベンジャミン・ブリテン 全2幕
指揮 若杉弘 演出 鵜山仁 東京室内歌劇場
- 「ヴェニスに死す」というと私の年代というか仲間内では、原作のトーマス・マンの名前より先にヴィスコンティの名前が頭に浮かんじゃいますよね。ちょうどヴィスコンティのブームで、その映画に出てきたタジオ役の美少年ヴィヨルン・アンドレセンは一斉を風靡したものです。この映画が1972年で、ブリテンのオペラもちょうど同じ頃作曲されて、初演は73年だそうです。映画化の話を聞いて、ブリテンはあまり面白くなかったとか。でも、彼のオペラの方が原作により近い出来映えになっているようです。ブリテンの最晩年の作品です。
巨匠として名声を得ている小説家(映画では作曲家にしてある)アッシェンバッハは、スランプに悩み理想郷「セレニッシマ」を求めヴェニスに旅に出る。そこで出会ったポーランド人の少年タジオに惹かれ、その姿を追い求める日々を過ごす。しかしシャイでプライドの高い老小説家はついに少年と言葉を交わすことなく、彼の姿を眺めながら蔓延していたコレラのために息絶える。というおはなしです。外見はそうなんだけど、実際の内容としては「芸術とは、理性とは、美とは…??」と深遠なテーマに悩む老人の姿が、高尚に描かれている話なのです。でも、つい『美少年』がでてくると、下世話に読みたくなるお話でもあります(笑)
オペラというと、ヴェルディやワーグナーの様にぐわわわ〜〜〜んと盛り上がる音楽を思い浮かべてしまうけど、さすがにブリテンさんの場合は、とてもシンプルで押さえたサウンド。ちょうど主人公の悩める小説家アッシェンバッハの心情を表現するのにとても効果的だったと思います。
特徴的なのは、タジオの家族は全てダンサーが演じて声を出すことがありません。主人公のテノール、彼を旅に苦悩にそして破滅に導く謎の人物(7役)のバス、そして脇役などはもちろん歌手で歌うのですが、これは決して交わることの出来ない宿命を表しているようです。タジオのテーマはインドネシアのガムラン風の音楽が使われます。「神秘的な」イメージ、手の届かない遠い存在を表しているのでしょう。アジアではそんなに遠くない音ですが、西洋音楽に慣れている私達にはやはり不思議な響きです。というわけで、楽しみにしていったダンサーなのですが、期待していたイメージはバレエだったのだけど、今回は「体操」でした(^_^; タジオは田中光という、元オリンピック選手です(「タナカ」というスーパーE難度の技を編み出した人らしいんですが、わたし体操には疎くて)振付は堀内充。
今回の公演は3年前(日本初演)の再演で、その時はバレエダンサーだったらしいです。このオペラを薦めてくれたYsさんは、イギリスでも観ていて、その時はロイヤルバレエのダンサーだったそうです。オペラにはやっぱりクラシックバレエがよいなあと思うのは頭堅すぎかしら?
ヴィヨルン・アンドレセンくんが刷り込まれている頭に、二の腕の筋肉が、ひょうたんのようにくびれるほどむきむきした青年は…まあ、人の趣味は色々だからね、アッシェンバッハさんは筋肉美に惹かれたのかも知れないし(笑)元気いっぱいで良かったけど、美少年の妖しさがあったかどうかは別のお話。友達の少年達と戯れに競技をしてことごとく勝ってしまう彼に、人知れず「愛している」と口にしてしまう自分に驚愕するアッシェンバッハ氏で一幕が終わります。苦悩するアッシェンバッハ役は近藤政伸。ほとんど舞台に出ずっぱりの大変な役です。英語って少しは知っている言語だけに、発音はあれで良いのかな?って話になったけど、アッシェンバッハ氏はドイツ人だから、ドイツ訛の英語みたいでちょうど良いのでは?ということになりました(笑)
もう一つ期待していたのは、彼に「美を愛する物は私をあがめよ」と語りかけるアポロ役の米良一美。ただし声が響くだけで姿は出てきません、それも出番は少ないのですが、存在感はありました。7役のバリトン久岡昇も良い味を出していたと思います。ホテルの支配人とか、床屋さんなんか面白かった。伊達男や旅芸人の座頭などはもうちょっとしゃれっけが欲しかったかな。美術は妹尾河童。とてもシンプルなセットで、周り舞台がゴンドラの動きをあわらしたり、ほとんど黒一色のなかで、窓を開けると海岸と青い空が見えるのは効果的でした。
自己鍛錬につかれ、美と愛の情念を受け入ようとしつつも、さらなる苦悩の内に息絶えるアッシェンバッハ、横たわる彼の姿を上から見下ろす様に、海と空の明るい光を受けたタジオの姿が神々しく輝く、象徴的な幕切れでした。芸術家アッシェンバッハの姿には、トーマス・マンやブリテンの姿が投影されているのでしょうか。その苦悩のたまものを、何の苦もなく享受できるのが我々凡人。芸術家さまさまですね、ありがたい事です。
それにしても、字幕が舞台の上にあって、舞台を見ると字幕が見えない状態。首と目が疲れてしまいました。やっぱり横の方がいいわね。
- 『NHK交響楽団定期公演2001年12月C公演』を聴きに行きました
- NHKホール '2001.DEC.15
- ラロ スペイン交響曲 バイオリン:ワディム・レーピン
チャイコフスキー 交響曲 第5番 指揮:シャルル・デュトワ
- レーピンのラロが聞きたかったのです。CDも持っている「スペイン交響曲」。やっぱりよかったわ〜☆ でも、NHKホールの2階の後ろの方は良くないですね。洞窟のように 天井が低くて、オケの音がひしゃげて届くみたいな感じ。デュトワさんって、テレビで良く見るけど、生でみるとさらに動きが大きいですね。チャイコの5番の拍手は凄かったんだけど、私の席まではあまり感動は届きませんでした(^_^; 拍手の音は、周りで渦巻いていたけれど。(席は選んで買いましょう)
- グスタフ・レオンハルト チェンバロリサイタル
『優雅なる肖像(ポルトレ)』を聴きに行きました
- 第一生命ホール '2001.DEC.09
- F.クープラン 第五組曲(1713)より
- プレリュード、ラ・ロジヴィエール:アルマンド、クーラントI&II、
危険:サラバンド、優しいファンション:ジグ、ラ・フローラ(花の女神)、飾り
- フィッシャー シャコンヌト長調
ダングルベール プレリュード・ノン・ムジュレ(拍子のないプレリュード)
ル・ルー 組曲ヘ長調(1705)
バルバートル クラヴサン曲集 第1集(1759)より- ラ・ドゥカーズ、ラ・デリクール
- ネブラ ラ・パストレッラ
ネブラ ソナタ第4番
W.Fr.バッハ 3つのポロネーズ(1765)
- いわゆる「古楽」の演奏会というのに初めて行きました。それも、チェンバロだけのリサイタル。
チェンバロはイタリア語で、英語だとハープシコード、フランス語でクラヴサンだそうです。バッハやモーツァルトの時代の音楽は、これが主流だったなんて、今のピアノに慣れてしまった耳には不思議。ピアノのもとになった楽器で、鍵盤を押すと爪が弦をはじいて音が出る仕組みになっています。鍵盤を押すだけとはいえ、和音など均等に音を出すのはとても難しいそうです。音の強弱がつけられないのですが、それを弦を叩く仕組みにしてフォルテやピアノの変化を出せるようにした楽器が作られる様になって、はじめは「フォルテピアノ」というそのまんまの名前の楽器ができ、現在は「ピアノ」という物になったのですね。なんでピアノがピアノという名前なのか、不思議に思ったものですが、ここにも歴史があるのですね。
ちなみに休憩時間に、レオンハルトさんご自身が調律をしていました。繊細な楽器なのですね。本当はお客さんは外に出なければいけなかったのだけど、小さい掲示だったので、気付きませんで、レオ様のお姿を休憩時間にまで客席で鑑賞させて頂く事になったのでした。レオンハルトさんの端正な響きのチェンバロの音色は、淡々とホールを包み、まるでヨーロッパの教会の中にいるような雰囲気でした。ふわっとした暖かみのある、ランプの光のような、静かな音楽があたりを包み込み、ホールという閉鎖された空間が、無限に広がって行くような印象の音楽でした。
レオンハルトさんは、実は良くおじゃまするBBSのお友達の一押しだったのです。東京近郊のオフ会として、聴きにいったのですが、みんなレオ様のお姿にノックアウト状態でした。燕尾服があれほど似合う人はいないだろうという、すらりとした手足の長い痩身で、静かな歩き方も、ああ、なんてかっこいいんでしょう☆ チェンバロの音色とともに、お姿にも感動してしまったのでした。
- 『エリアフ・インバル指揮 ベルリン交響楽団演奏会』を聴きに行きました
- サントリーホール '2001.NOV.21
- モーツァルト バイオリン協奏曲 第5番「トルコ風」 バイオリン:樫本大進
マーラー 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
- 楽しみにしていた大進君のモーツァルトです。聴きに行く度に成長していく大進君。9月に見たばかりなのに、また一回り大人っぽくなったような気がしました。そして、あの音。
マーラーは…私は良くわからないです。インバルさんのマーラーがわからないのか、マーラー自体がわからないのか、あまり語らないことにいたします。演奏のあとの拍手はものすごかったので、とても良い演奏だったのだと思います(*^_^*)
インバルさん、他の公演ではアンコールでバッハの演奏をしてくれたそうですが、さすがにツアー終盤でお疲れなのか、アンコールは無しでした。楽譜は用意されていたので、ちょっと楽しみにしていたんだけど…
- 『コー・ガブリエル・カメダ リサイタル』を聴きに行きました
- 横浜みなとみらいホール '2001.OCT.25
ブラームスのコンチェルトを3曲という、凄いプログラムでした。わかっていたけど、ちょっとお腹いっぱい(笑)
美青年バイオリニストで名高いカメダさんですが、以外と背が高く無くて、ころんとした印象でした。今回、リサイタルでは珍しく楽譜を見ながらの演奏でしたが、ちょっと上目遣いに楽譜を見る顔の角度が、ちょっとトム・クルーズに似ていなくも無かった。確かにハンサムです。
そう言えばファンクラブのでしょうか、ロビーではTシャツなども売られていました。コーくんという名前は「光」らしいですね。演奏スタイルはわりと真面目な感じで、ピアニストもベテランの女性の方のせいもあるのか、大人しい印象でした。この前の大進君とゴランさんのがダイナミックだったせいもあるのでしょうか。
熱い拍手に応えて、控えめなお辞儀をしながら、アンコールに5曲も弾いてくれました。お約束の第3スケルツォほか、クライスラーも3曲、こちらの方がのびのびした演奏だと感じたのは、アンコールだったからかしら。
- 『樫本大進 ヴァイオリン・リサイタル』を聴きに行きました
- 紀尾井ホール '2001.SEP.22
バイオリン 樫本大進、 ピアノ イタマール・ゴラン
- ブラームス バイオリン・ソナタ 第1番ト長調 op.78「雨の歌」
モーツァルト バイオリン・ソナタ 第34番変ロ長調 K.378
フランク バイオリン・ソナタ イ長調
- 楽しみにしていた、大進くんのリサイタルです。毎度ながら、美しい音色に感動して来ました☆
まずは有名なブラームスの「雨の歌」。静かな出だしの第1音目から、柔らかい音色が会場にひびいて、そこはもう大進くんの世界です。少し紗のかかったような穏やかな色調の絵画を見ているような感じです。ああ、この音が好きなんだ、という大進君の音です。そして穏やかなテンポを美しくうたいあげる巧さは、ちょっと去年の(これも私の大好きな曲)ブルッフのバイオリン協奏曲の冒頭の部分を思い出しました。あのときも私の理想にぴったりだと思ったのでした☆
大進君の音色の良さは、その優しさ、あたたかさ、さらに懐の深さ、だと思います。まだ22歳だとかそういう問題ではなく、音楽性でしょう。楽章が進むに連れて、音の奥行きがどんどん深まって行きます。そして最後、静かな全弓をゆったりと使った音の余韻を味わうように、会場中がシーンと静まり返っていたのが、さらに感動的でした。2曲目はモーツァルトです。実は私、モーツァルト苦手なんです。わからないの。でも、今回モーツァルトを聴いて、初めて素晴らしい!!と思いました。 軽やかなメロディーを楽しそうに演奏する大進君のバイオリンの音色は、そう思わせる物が確かにあったのです。作曲者の作品を、さらに素晴らしく表現してくれる素晴らしい演奏家です。演奏のあと「ブラボー」が飛んでいましたね。私も言いたかったわ☆
休憩を挟んで、最後はフランクです。休憩の間には、大進くんのファンページを作っていらっしゃるKAORUさんはじめBBSでおなじみの方達にお会いして「よかったね〜〜」をみんなで言い合っていたのでした。でも、最後に待っていたのは、それどころでは無い、もっと素晴らしい曲だったのです!!
フランクのバイオリン・ソナタは、ほとんどみんなではないかというくらい、多くのバイオリニストが録音し、演奏会でも弾かれるようですが、「こんな素晴らしいフランクは初めて聴いた!!」と言うほど、どーんと感動した演奏でした!!
ちょうど9月5日に発売になった大進君本人のCDにも入っている曲で、何度も聴いているのですが、所詮CDはCDです。繊細な透明感と、エネルギッシュな迫力と、暖かさ優しさと奥行きの深さ、大進君の音の良いところがぎっしりの、素晴らしいフランクでした。CDでも伴奏しているピアノのゴランさんと、2人のエネルギーが良い意味でぶつかり合って火花を散らしているような、息の合った演奏でした。こんなに若い大進くん、こんなに完成度が高くて良いのかしら、というくらい(笑)でも、大丈夫、彼の演奏はいつでも『前回よりさらに素晴らしい』物になるんですから!!お楽しみのアンコールは、エルガー「愛の挨拶」 若々しくサラリとした演奏で良かったです。2曲目はブラームス「ハンガリー舞曲 第五番」 軽快な演奏で会場も盛り上がりました。度々のカーテンコールに答えて出てくる2人、大進君は何度もゴランさんの手を取って高くあげ「2人の演奏でした」と言っているようでした。確かにソナタはピアノとの共演なのですから。ゴランさんはお辞儀をしながら、わざとお客さんに見えるように人差し指をだして『もう一曲?』というジェスチャーをします。客席からは大喝采☆ 3曲目はパガニーニの「カンタービレ」 なめらかなメロディーの美しい音色でリサイタルを締めくくってくれました。
いつも、いつもそうなのですが、大進君は期待以上の演奏を聴かせてくれます。ファンとしては本当に嬉しいです。次は11月、そして3月はまたリサイタル、今後の成長振りに、さらにさらに期待させて頂きます!!
- 『セブンスターズ・ガラ・コンサート』を聴きに行きました
- 東京オペラシティ '2001.SEP.07
チョン・ミョンフン ピアノ(韓国)
近藤嘉宏 ピアノ (日本)
樫本大進 バイオリン (日本)
清水高師 バイオリン (日本)
チェ・ウンシク ヴィオラ (韓国)
チョー・ヨンチャン チェロ (韓国)
ジャン・ワン チェロ (中国)
- モーツァルト バイオリンソナタ第28番ホ短調 K.304
ブラームス ピアノ三重奏曲第2番ハ長調 op.87
ショパン 序奏と華麗なるポロネーズ ハ長調 op.3(レナード・ローズ版)
ブラームス ピアノ四重奏曲第2番イ長調 op.26
- 待ちに待ったセブンスターズです。今回はみんな男性です。出演予定だった韓国のカン・ドンスクさんが来日出来なくなって、清水さんになりました。
はじめの曲はマエストロと大進くんのモーツァルト。マエストロのクリアなピアノと、大進くんの優しいバイオリンの音色でが、とてもすてきでした。ただ、去年のシェーンベルクほどの迫力はなかったですね。まあ、モーツァルトだし(モーツァルトが良くわからない藤木なので)。ステージに出てくるときも、楽章の間も笑顔で言葉を交わしているお2人、何を話しているのか、いつも気になってしまいます。
2曲目は、近藤さん、清水さん、チョー・ヨンチャンさんで、ブラームスでした。きっちり演奏されてはいましたが、お互い遠慮があったのか、代役などの緊張があったのか、少し堅が感じられました。
休憩を入れて3曲目は、近藤さんとジャン・ワンさんのショパン、これはステキでした。さっきの近藤さんはちょっと堅い感じがあったのですが、この曲ではとても綺麗な響きでした。そして、ジャン・ワンさんのチェロの素敵なこと。生で聴いたのは久しぶりなのですが、前に聞いたときもよかったけど、更に良い音になったなあって思いましたわ。
最後はマエストロ、大進くん、チェ・ウンシクさん、ジャン・ワンさんのブラームス。これが圧巻でした。本当にこんな凄い演奏をしてよいのかって(笑)鳥肌が立つような感動でした。一人一人の音楽性が、良い意味でぶつかり合って飛び交うプラズマが、会場を満たしていました。リードしていたのはマエストロのピアノですが、弦の面々もそれぞれのびのびと演奏して、それが更に相乗効果で完成度の高いというより、それ以上の音楽を作り上げていたのでした。
アンコールはありませんでしたが、拍手の嵐のなか、何度も出てきて挨拶する7人の音楽家たちは、とても良いお顔をしていました。今回私の席は、マエストロと大進くんのお顔が見える舞台上手サイドの2階席だったので、袖から出てくる様子も見えたのですが、遠慮する近藤さんが、マエストロに突き飛ばされる(笑)様にして、はじめに出てくる所などほほえましかったです。横の席だと、カーテンコールのときはあまりお顔が見えないのですが、ジャン・ワンさんは、毎回横や後ろの席にも視線を投げてくれます、気配りの細やかな方だと思いました。
普通の室内楽団の演奏も、もちろん良いのですが、実力のあるソリストの奏でる室内楽もまた、素晴らしい感動をくれるものです。素敵な音楽家たちに感謝です。また、来年もやってくれるのを楽しみにしています!!
- 「ロストロポーヴィチのオーケストラルバレエ
『ロメオとジュリエット』」を見に行きました
- 東京文化会館大ホール '2001.APR.15
- リトアニア国立バレエ団
- ジュリエット:エグレ・スポカイテ、ロメオ:イーゴリ・エブラ
- 製作・振付・台本改訂:ウラジーミル・ワシリーエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
指揮:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団- ロストロポーヴィチの『ロミオとジュリエット』にバレエまでついてくる、なんてお得な演奏会☆ と思って行った公演でしたが、確かに「今日の指揮者ってロストロポーヴィチなんだ、知らなかった」と言う声も、ロビーの雑踏の中で聴かれました(笑) そうね、バレエをメインに行った人の方が、やっぱり多かったのかもね。もちろん『オーケストラとバレエの両方が主役の舞台』というのが、マエストロ・ロストロポーヴィチの意図するところだったのは言うまでもありません。
そもそも、偉大なるチェリストであり指揮者であるロストロポーヴィチが若かりし頃、プロコフィエフ作曲の新作バレエを名プリマのウラノワの主演で見て感動し、通い詰めて、とうとうその二人とお友達になってしまったという、曰く付きの思い入れの深い作品だそうです。
そして、かねがね思っていた、ダンサーに合わせて指揮をするのではない、音楽とバレエが同等の意味のある舞台を、ボリショイのワシリーエフと一緒に完成させたのが、この作品なんですって。だから、オーケストラは舞台の真ん中にいて、その手前と奥の高くなったところに、二重構造になった舞台があり、ダンサーが行き来して踊るという、立体的な舞台が出来たのでした。おまけに、オケの人たちも衣装を着けているのです。でも、マエストロだけは、普通の服でしたね、どうせなら司教様みたいな服を着ていてくださったら良かったのに、と思ったのは私だけではなかったようでした。
プロコフィエフの存命中の演奏を聴き、話も聞いていたロストロポーヴィチの演奏なので、とても楽しみにしていたのですが、やっぱりバレエの方に目がいってしまいますね(笑)
いつもどおり、演奏がどうだったとか良くわからない私ですが、バイオリンのポルタメント奏法(バイオリンの弦を指で押さえるのを、一音一音ずつではなく指を滑らせて音を変化させる弾き方です)が多く使われていたのが、いつもと違っていたので、さすがの私にもわかりましたわ。いつもなら「タリラリラ〜ン」ときこえるのが「みょ〜〜ぉん」となるのね、プロコフィエフの頃のやりかたなのか、ロストロポーヴィチのなのかはわかりませんが、他の演出などとあわせて、目新しかったです。というより、始めはびっくりしたのでした(笑)バレエの方は、まずジュリエットがかわいい!! 最初に登場したときに、舞台がぱっと明るくなりました、もちろん照明も明るくなったのだけど、それだけでなく、花のあるダンサーなのです。あどけなさを残した少女の夢見るような表情、乳母をからかって遊ぶおきゃんなところ、表情が豊かで、体の線が綺麗。ロストロポーヴィチをして「ウラノワの再来」と言わしめただけはありますね。一緒に行ったYさんが「トゥの先で感情が表現できるダンサー」と言っていたけど、本当にそんな感じでした。
ロミオも負けずに可愛かったです。何処か少年っぽさを残した感じのある、若々しい青年で、やっぱり表情が豊かで、笑った顔が良かった☆ また、親友のマーキュシオを殺されて、怒りに燃えるところも、迫力があって良かったです。ジャンプも高さがあって綺麗だったし、手足が綺麗に伸びたバランスは美しかったです。
そして何より、ラストシーンが、素晴らしかった!! ジュリエットが薬による仮死状態で埋葬されているのを知らないロミオが、自分も死のうと思って毒を含んだその時、ちょうどジュリエットが目覚めてロミオの姿に気づき、ロミオはジュリエットが生き返った事を喜ぶ。しかし、二人抱き合うのもつかの間、ロミオはジュリエットの腕の中で事切れてしまうのです。ああ、なんという悲劇、あまりにも胸に迫るシーンでありました。そして、自分の胸に短剣を突き刺したジュリエットは、ロミオと少し離れたところで倒れ、伸ばしたその手が届かない内に息絶えてしまうのです。そこへ静かな音楽の流れる中、指揮のロストロポーヴィチが二人に歩み寄り、離れたその手を結び合わせるのでした。確かに意表をつく演出でしたが、バレエだけではない、『オーケストラルバレエ』の意義がここにあったと、ロミオとジュリエットだからこそ出来た、素敵な作品だったと思いました。これも、愛の指揮者ロストロポーヴィチだからこそなのは確かだと思います。他の指揮者がこれをやっても、似合わないだろうし、マエストロの演奏をただの伴奏としか聞かなかった人には、ただの出しゃばりに見えたかも知れませんね。
もちろん主役二人の、表現力も素晴らしかったです。5階席までほぼ満員の会場は、本当に静まり返って舞台の上の悲劇を見つめていました。涙ぐみそうになったのは、私だけではないはず…マエストロ・ロストロポーヴィチは、小柄なコロンとした体型のおじいちゃまですが、その手はとても綺麗でした、しなやかな長い指が饒舌に語りながら指揮をしていたように見えました。チェロの泣きの入るところなんて、左手で胸のあたりを押さえてビブラートのような振りをなさっていたのは、流石チェリスト、という感じでした。激しいところでは、声も出しながら指揮していましたね。オケも、良かったと思いますが、2階のサイドだったせいか、ちょっと音が小さかったかな? 金管がんばれってちょっと言いたかったかも知れません。フルートのソロは、綺麗だったけど、バイオリンのソロは少し聞こえにくかったです。
面白かったのは、金管と太鼓(笑)の人が黒いマントのような衣装を着けて、ダンサーと一緒に舞台にだされていました。もちろん踊るわけではないんだけど、何となく落ち着かないようすでした。マンドリンの踊りのところでは、マンドリンとトランペットの人が高い方の舞台に出てきましたが、ダンサーが礼をしているのに、緊張しているのか直立不動で、おかしかったです。でも、マエストロの棒が動きはじめると、体を動かしてなめらかに演奏していました、流石。
オケはマエストロの周りをぐるっと囲む形になっていて、マエストロもあちこち向きを変えながら、さらに後ろの舞台の様子も気にしながら、棒を振っていらっしゃいました。休憩が入るとはいえ、3時間の長丁場、カーテンコールでは、ちょっとお疲れのご様子でした。実は、見ていて心配だったのは、オケの人たちは、ダンサーがぶつかって来ないか心配じゃないのかな?っていう事。オケの舞台の中に階段があって、上と下の舞台をつなげていて、かなりの速さで、また大勢で、ダンサーが行き来するので、ちょっとハラハラ見ていました。だって、楽器って結構デリケートだし高価な品物でしょ。上の段の舞台で、どたどた踊っている音が聞こえると、落ちてこないか心配だったのではないかしら(笑) っていうのも、昔どこかのバレエ団のドンキホーテを見に行ったとき、なんと背の高いドンキがドスンと舞台からオーケストラピットに落ちちゃったのを見たことがあるのです。その時は、ダンサーの人は大丈夫だったかな、と思った物ですが、今考えると、下にいた人とかその楽器は大丈夫だったのかしら、と心配になるのでした。
このワシリーエフ版の振付は、当然舞台が二重構造になっているための、特別な物でした。キャピュレット家とモンタギュー家を、上と下の舞台で分けたりしています。舞台装置は至ってシンプルで、正面の十字架と出入り口だけでほとんどないに等しい物でした。小道具もかなり少なくて、その分ダンサーはのびのび踊れたかな? 衣装もシンプルでした。 ジュリエットのお父さんと、お母さんがとても良く踊っていたのは珍しいと思いましたわ。トゥシューズだったし。 ジュリエットの親の決めた許嫁パリスの踊りも目立っていました。全くストーリーに絡まないところで、何も考えずに優雅にクラシックバレエの王子様やっていました(笑)
舞台が別れている分、からみが少なくて返って状況描写は、難しかったかも知れませんね。 一緒に行ったKさんは、ストーリーを知らないで見ていたら、両家が敵対しているというのがわかりにくい、と言っていたけど、確かにそうかも知れないですね。たぶん、この振付、演出は、あえて大胆に『「ロミオとジュリエット」は誰でも知っている』という大前提において、作ってあるのじゃないかなと、実は見ていて思っていました。今度喧嘩をしたら、追放になるとかいう状況も、わかりにくいし。大公様もでて来ないし。ジュリエットの伝言がロミオに伝わらなかった、というあたりは、他の振付ではどうなっていたっけ? でも、最後がとても感動的で、そこに持っていくための全体だったんだな、というのはありました。終わりよければ全てよし☆ 拍手はちょっと早かったな、もう少し余韻を味わって欲しかったわ。たいていバレエを見に行くと、主役の他に「あの人いいじゃない、主役をくってるわよ」という人がたいていいるのですが、今回はとにかく、主役の二人がとっても良かったです。 惜しむらくは、ボリショイならではの、アクロバティックなリフトの多いのが良さのこのバレエで、ちょっと呼吸が合わなかったのが残念でした。リフトの前で、間合いを計っているような様子が見えてしまうのです。まあ、たまにはこんな日もある、という状況だったらいいのですが、いつもこんな風では、ちょっと心配。とにかく、これからももっと人気が出るだろう二人でした。いや、もうあるのよね。ロミオのイーゴリ・エブラ君は初来日なのに、デパートでサイン会をやっていたそうだから(笑) また、機会があったら是非見たいダンサー達です。
なんだか、支離滅裂な感想文になってしまいましたが、とにかく珍しくて、面白くて、楽しい、美しい、そして感動の舞台でした。ブラボー!!
※公演のタイトルは『ロメオと…』になっていましたが、なんとなく慣れなくて落ち着かないので感想文中では「ロミオ」にしています。
- 「ユーリー・バシュメット&モクスワ・ソロイスツ合奏団演奏会」に行きました 東京文化会館大ホール '2001.FEB.27
J.S.バッハ/D.ドルース編曲 ブランデンブルク協奏曲第7番 ハ短調
(原曲:ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ第3番 ト短調 BWV1029)D.ショスタコーヴィチ/A.チャイコフスキー編曲 ヴィオラと弦楽のためのシンフォニア
(原曲:弦楽四重奏曲第13番 変ロ短調 作品138)モーツアルト ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364
バイオリン:樫本大進
- 今日は待望の、樫本大進くん(バイオリン)とユーリ・バシュメットさん(ヴィオラ)のコンサート(順番が逆?)モスクワ・ソロイスツの室内楽でした。東京文化会館は会場としては広すぎの感がありましたね。席が前の方で、チェンバロや、バイオリニストの影に隠れて、バシュメットさんのお姿が、前半は見ることが出来ませんでした。何しに行ったんだ?って、やっぱりビジュアルも大切よ(笑)
一曲目はバッハ、二曲目はショスタコーヴィチでした、この前のロストロポーヴィチの演奏会といい、この春はショスタコを聴く機会が重なります。私は、音楽には全くの素人で、学問的には全然違うかも知れないんだけど、ショスタコの和音ってどこか、雅楽の響きに似ていません? 笙とかの「ミョ〜〜」っていう音が(笑) あの、不思議な感じがこの頃ちょっとお気に入りです。今回の曲は、バシュメットさんの新譜に入っている物なんですね。
大進君、良かったですよ〜、好きの贔屓目があるのは毎度の事ですが、そうじゃなくても、バシュメットさんと、ソロイツとのアンサンブルもとてもバランスよく、いい音楽を作っていたと思います。聴く度に、成長している大進くん☆ ファンとしては嬉しい限りであります。今回、楽器がいつもの「ジュピター」ではなく「ヨアヒム」でした。メンテナンス中とか? よく『楽器の貴婦人』と例えられるバイオリンですが、「ヨアヒム」は貴婦人と言うよりは『お嬢様』という感じ。いつもより線の細い、ちょっと堅い感じのする音だったような気がしました。気がしただけかも知れませんが。楽器が違うと、本当に音が違いますよね。演奏家がこだわるのが良くわかります。
バイオリンが派手な『貴婦人』なら、ヴィオラの柔らかい音は、穏やかな『賢夫人』といったところでしょうか? バシュメットさんのリサイタルも聴きたかったな…。
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