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虹の谷つうしん

2008年 1月〜12月



 12月26日
 ふたりきりの戦争  作:ヘルマン・シュルツ

 ドイツ軍にとらわれて農村で働かされていたロシアの少年セルゲイ
 と、家族が行方不明になり村に引き取られたドイツの少女エンヒェ
 ンの命がけの逃亡の旅の物語。
 いつも誰かに見つかるのではないかと思いながらの日々は、
 彼らにとって、まさにの戦いの日々。
 2ヶ月の逃亡生活で、半分正気を失いながらも進み続けられたのは
 二人がお互いを信じ、お互いを守ろうとする心があったからだと思う  と人の心とはなんて強いのだろうと感動した。



 12月21日
 クロニクル千古の闇4 追放されしもの  作:ミシェル・ペイヴァー

 トラクとレンが少しずつ大人になってきていて、
 2人の成長にちょっと驚いた。
 今回はウルフの行く末が試されるような展開があり、また、
 一族の仲間と暮らしながらもトラクに付き添ってきたレンの
 それまでの生活での悲しみも語られた。
 ひとつの試練が終わって絆が深くなった3人(2人と1匹)が
 心強い一方、次の試練への不安が掻き立てられるような結末でし
 た。



 12月17日
 大迷宮  作:横溝 正史

 子どものために書かれた金田一耕助シリーズの1冊。
 やさしい言葉遣いに、作者の子どもたちへのあたたかいまなざしが
 感じられる作品でした。
 語り口が紙芝居のような、“さあ、次はどうなるのかな?”的な
 わくわくさせるような文章も楽しさを引き立てます。
 ドラマや映画ではおなじみの不気味な雰囲気は、
 子どものための物語の中でも健在でした。



 12月14日
 魔法使いになる14の方法  作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズほか

 “魔法使い” をテーマにしたイギリスとアメリカの作家の物語集。
 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品はクレストマンシー・シリーズからの1作
 で、この本の中では一番楽しめたかな。
 ほかにはホラー系の作品などもふくまれていて、
 魔法使いものばかりではなかったところがちょっと残念。



 12月9日
 予告殺人  作:アガサ・クリスティー

 推理小説が読みたくて、犯人はわかっていたけれど手に取った。
 クリスティー女史の作品は、探偵役(この本ではミス・マープル)が
 犯人を見つけ出す過程が、物語としてもおもしろいと思う。
 わたしは推理小説は自分では推理しないで読むので、
 人々の生活や心の動きをたどっていく物語性が強い作品が好き。
 たぶんその点で、どちらかというと女性作家の作品が
 性に合っているのかなぁ・・・と、思っている。



 12月4日
 うそうそ  作:畠中 恵

 「しゃばけ」シリーズの5作目。
 長編で、とても読みごたえがありました。
 体の弱い若だんなが、みんなの世話になるだけでなく、
 自分もいつかは人の役に立てるようになりたいと思い、
 だから、今は少しだけだけれど、できることをやりたいと思う。
 その気持ちにわたしも勇気づけられるような気がして、
 読みながら、いつもしみじみとしてしまいます。



 12月1日
 ゴッドハンガーの森  作:ディック・キング=スミス

 ゴッドハンガーと呼ばれる森の中で繰り広げられる、
 生き物たちと森番の男のたたかいの物語。
 とても骨太な物語だと思って読んでいたら、もともとは、
 ほのぼのした作品が多い作家さんだったと知って驚いた。
 哲学的で、ほとんど神のような存在のスカイマスターをはじめ、
 かしこいオオガラスのロフタスや陽気なコキンメフクロウのユー
 ステスなどの鳥たちに、とても親しみを覚えた。
 まるで憑かれたように森の生き物を殺す森番が不気味な存在だっ
 た。



 11月28日
 麦ふみクーツェ  作:いしい しんじ

 奇妙でやさしい、不思議な物語でした。
 登場人物は、だれも本名がでてきません。
 主人公の“ねこ”によって淡々と語られるできごとは、
 ときには不気味で、ときには哀愁がこもっていて、
 でも根底には街やそこに住む人々への愛情が流れています。
 麦ふみの単純なリズムが心を静めてくれるような作品でした。



 11月24日
 秘密の花園  作:F・H・バーネット

 名作といわれる物語に反感を抱いてしまい、
 今まで手に取ったことがなかったけれど、思い切って読んでみた。
 結果は、“もっと早く読めばよかった ”。
 『小公女』『小公子』は主人公が美しい性格で、不幸に打ち勝つ
 物語であるのに対して、この作品の主人公は “ つむじまがり ”。
 両親に顧みられず、誰にも愛されず、しつけられずに育った少女だ。
 そのわがままかげんに、私の猜疑心はすぐに打ち壊された。
 そして素朴なヨークシャーの人々と、庭がよみがえっていく様子に
 心があたたかさで満たされていくような気がした。



 11月20日
 鳩笛草/燔祭/朽ちてゆくまで  作:宮部 みゆき

 不思議な能力を持った3人の女性の物語。
 いわゆる超能力といわれる力を持っている彼女たちが、
 それを自分の一部として受け入れて、
 世間には隠しつつも、自分の人生には活かそうとするところが
 新しい、また、女性ならではの視点ではないかと感じた。
 鳩笛草は、その力を失っていく過程を描いた物語で、
 主人公の貴子の私たちとかわらない感情がリアルに感じられて
 怖さと悲しみとあきらめの気持ちを一緒に味わった。



 11月14日
 都会のトム&ソーヤ E  作:はやみね かおる

 創也の自宅に招待されたはずなのに、やっぱりサバイバル体験。
 自分では完璧な少年のつもりでかなりうっかり屋の創也と、
 平凡な少年だけど生き残るための知恵と技術にすぐれた内人。
 いつもの2人の楽しい掛け合いに、
 今回は新しいキャラクターが加わってスパイスが効いたかんじ。
 次の作品がまた楽しみになりました。



 11月13日
 うちの一階には鬼がいる!  作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 母の再婚相手はいつも不機嫌で、怒鳴ってばかり。
 新しい兄弟も嫌なヤツで、キャスパー、ジョニー、グウィニー
 の3兄妹にはゆううつな毎日。
 そんな暮らしが不思議な(迷惑な?)化学実験セットのせいで、
 ますますトラブル続きになってしまう。
 実験セットの意味不明の物質とおかしな効果がこの作者さんらしく
 て、それがきっかけで子どもたちが協力するようになるところが素
 敵。



 11月8日
 ミス・メルヴィルの後悔  作:イーヴリン・E・スミス

 お金持ちの令嬢として育ったミス・メルヴィルが、
 生活のために殺し屋として働くことになるという物語。
 殺し屋を引き受けるまでのエピソードなどはおもしろいけれど、
 全体的に平坦な印象を受けつつ、最後まで読んだかんじ。
 アメリカの上流階級のくらしに興味があると楽しいかも。



 11月5日
 堪忍箱  作:宮部 みゆき

 江戸を舞台にした短編集。
 人の心の中にある悲しみや負の感情に焦点をあてたような
 作品が中心になっています。
 わたしが一番気に入ったのは「お墓の下まで」という作品。
 迷子や捨て子を育てた夫婦と育てられた子どもたちの
 それぞれの迷いや悲しみ、そして愛情に心が打たれました。



 10月31日
 孤宿の人 下  作:宮部 みゆき

 図書館ではなかなか回ってきそうになかったので買いました。
 ほうと加賀様が、交わす言葉の少ない中で、
 次第に相手を大切に思うようになる過程が感動的でした。
 最後の事件では、もう涙、涙。
 通勤電車で読んではいけない作品でした。



 10月26日
 ブラッカムの爆撃機  作:ロバート・ウェストール

 戦闘機乗りの少年たちの体験を描いた短編。
 戦争中の青春物語かと思ったら、もっと奥が深かった。
 “やっぱり” というか、“さすが” というか、
 メインにはぞっとする場面が用意されていました。
 宮崎駿さんの描いた『タインマスへの旅』も、
 この物語を読み進む手助けとなって、とてもよかったです。



 10月24日
 妖怪アパートの幽雅な日常 E  作:香月 日輪

 妖怪アパートのお正月の風景と、夕士の修学旅行のお話。
 このシリーズはアパートの料理人さんが作るお料理が
 どのメニューもおいしそうで、
 「私もこんなところに住みた〜い!!」と、叫びたくなります。
 今回は半分以上が旅行だったので、お料理の楽しみが少なくて
 残念でした・・・。



 10月23日
 日暮らし 上・下  作:宮部 みゆき

 『ぼんくら』という作品の続編らしい。
 でも、こちらを先に読んでも、おもしろさはかわらないと思う。
 いろいろな女性が登場する小さな物語があって、
 それが次第に一つの物語によりあわされていく筋立ては見事。
 弓之助がこれからどうなっていくのかも気になる・・・。



 10月19日
 霊験お初捕物控2 天狗風  作:宮部 みゆき

 とってもおもしろかった!
 神隠し、3匹の猫の謎、右京之介の生真面目さ、
 なによりお初と物の怪の対決。
 どれをとっても大満足でした。
 3冊目はあるのかしら・・・?



 10月15日
 海のはてまで連れてって  作:アレックス・シアラー

 おはなし会で紹介しようと思って、久しぶりに読んだ。
 何度読んでも楽しくて、せつなくて、
 誰かを大切に思うことの美しさを感じる物語。
 わたしもいつか旅をしたときに、
 自分の中の何かが変わったと感じることができたらいいな。



 10月13日
 ルーディーボール シュタードの伯爵  作:斉藤 洋

 長編ファンタジー。
 人間が “猫顔”“犬顔” などと種類(?)が分かれていて、
 しかも色も模様もあるらしいところが楽しい。
 スピーディな展開で、大きな事件に巻き込まれていく物語だけれど、
 この作者さん独特のどこかのんびりした雰囲気が、
 絶妙なバランスで組み込まれている。
 読み終わったときに、すっきりした気分になる作品。



 10月10日
 No.6 1〜3  作:あさの あつこ

 戦争で荒廃した世界に、理想郷として造られた都市No.6の
 隠されたおそろしさを描く物語。
 ネズミと呼ばれる少年のことを、
 主人公は自分と同い年(16歳)だと思っていて、
 ほかの人は “自分より上” とか “オレより若い” とか
 人によっていろいろに考えているところがおもしろい。
 まだ先は長そう。



 10月1日
 霊験お初捕物控 震える岩  作:宮部 みゆき

 人には見えないモノを見ることができるお初が主人公の時代小説。
 触れるとその人や物におこったことが見える力は、
 現代ならさながら超能力ともいえるかも。
 人の心の弱みにとりつく亡霊との対決を描きつつ、
 忠臣蔵の真実を推理するおもしろさをまじえてあって、
 ものすごく得をしたような気がする作品でした。


 9月19日
 ダイヤモンド・ガールズ  作:ジャクリーン・ウィルソン

 4人姉妹と母親という女性ばかりの家族の物語。
 主人公は四女のディクシー。
 まだ幼い彼女が、姉たちのけんかや、母親の秘密、
 新しい友達の虐待などに心を痛めながら必死でなんとかしようと
 がんばる姿が健気。
 世間から見ると「問題がある」といわれるような家庭でも、
 愛情という絆で結ばれていれば幸せなのだと思った。



 9月12日
 青い宇宙の冒険  作:小松 左京

 ある時間になると始まる謎の音と振動の原因をさがして、
 中学生のまもるとたち一行が思いがけない冒険に巻き込まれる。
 日本のSF界の大御所が子どものために書いた作品。
 もうずいぶん前の作品ではあるけれど、
 勇気とか、友情とか、世界や宇宙に思いをはせる気持ちなどは、
 いつの時代になっても変わらないものだと思いました。



 9月9日
 夢にも思わない  作:宮部 みゆき

 中学生の男の子を主人公にした作品。
 おもしろかったことは間違いないのですが、
 わたしの好みとしては時代小説のほうが好きです。
 主人公の中学生らしい考え方や行動がほほえましくて、
 その親友の冷静沈着さとさりげない思いやりが
 とても大人びた印象でした。



 9月1日
 スは宇宙(スペース)のス  作:レイ・ブラッドベリ

 短編集。
 SF小説もいろいろ読んできたつもりでいたのですが、
 こんな描き方もあるんだ! と、感動しました。
 “SF・ファンタジー界の叙情詩人” と呼ばれているそうで、
 たしかに、物語が人の感情を軸にして進む作品が多いようです。
 SFとファンタジーを融合させたような、印象を受けました。
 読んだあと、「すごいな〜!」と大満足しました。



 8月23日
 ハリー・ポッターと死の秘宝  作:J・K・ローリング

 とうとう終わりました。
 一番印象的だったのははスネイプの過去が明らかになるところ。
 翻訳者さんのあとがきにも、一番、力を入れたと書いてありました。
 クリーチャーにハリーのまごころが通じたところもよかったです。



 8月21日
 クリスマスの幽霊  作:ロバート・ウェストール

 クリスマスの楽しい思い出に、背すじがぞっとするエピソードをプラス。
 クリスマスの楽しみの部分があまりにも身近であるために、
 幽霊の部分もリアルな怖さになっているような気がする。
 恐ろしい幽霊ではないのだけれど・・・。



 8月19日
 山賊のむすめ ローニャ  作:アストリット・リンドグレーン

 ローニャの自由な心が、自分にも流れ込んでくるような物語でした。
 初めての友だちがライバルの山賊の息子というロミオとジュリエットの
 ようなシチュエーションではあるけれど、2人の山賊の子らしいたくま
 しさと強さが、とても魅力的です。



 8月11日
 妖怪アパートの幽雅な日常 C  作:香月 日輪

 このシリーズの魅力は、主人公の悩みと気付きにあるのかな。
 もののけや型にはまらない人物をふんだんに登場させて、
 主人公 夕士が、自分の中の「あるべき」を打ち壊して、
 もっと自由で柔軟な自分に変わっていく過程が描かれている。
 4巻は、そんな夕士の存在が、周囲にもよい影響を与えるという
 お話でした。



 8月9日
 妖怪アパートの幽雅な日常 B  作:香月 日輪

 魔法使いファンタジーに突入するのかと危ぶんでいたら、
 それほどではなく(多少は出てくるけど)、
 1巻の雰囲気にうまくおさまった感じがした。



 7月31日
 わたしたちの帽子  作:高楼 方子

 5年生のサキが1ヶ月だけ住むことになった古びたビル。
 そこで仲良くなった育ちゃんとの不思議な交流を描いている。
 現実の世界なのか、別世界に迷い込んでいるのか、
 その不思議なあいまいさが魅力の物語でした。
 最後になぞがとけていく過程も、生き生きとしてとてもよかった。



 7月28日
 エラリー・クイーンの国際事件簿  作:エラリー・クイーン

 作家で探偵のエラリー・クイーン氏が、世界中をまわって
 犯罪の話を集める、という設定で編集された犯罪実話集。
 日本できいたというものも収められている。
 これは手口があまりにも大胆で、日本らしくないような気がし
 たけれど、権威に弱いところは日本人的かなとも思った。



 7月24日
 幻色江戸ごよみ  作:宮部 みゆき

 江戸を舞台にした短編12編。
 せつない物語、ぞっとする物語、ほっとする物語など、
 色とりどりでお得な気分になる。
 この中で一番気に入ったのは『器量のぞみ』という作品。
 醜いことで評判のお信が、男前で有名な繁太郎から、
 「美しい人だから」と気に入られて嫁入りするという物語。
 お信が悩みながら、大切な家族のためにやさしくなっていく過程が
 心にしみこんでくるようでよかった。



 7月18日
 妖怪アパートの幽雅な日常 A  作:香月 日輪

 今回は春休み中のお話で、親友にアパートの秘密を
 受け入れてもらえるかどうかの賭けにでる決意をする。
 夕士が魔法の本を手に入れることから、
 第1巻にくらべるとファンタジーっぽさが増したかんじ。
 このことが3巻で、どのように扱われていくのか、
 が気になるラストだった。



 7月17日
 マサの留守番  作:宮部 みゆき

 もと警察犬のマサが、蓮見探偵事務所で謎解きに挑戦する短編集。
 文庫本『心とろかすような』から青い鳥文庫への抜粋4編。
 マサは引退した警察犬という設定で、
 ちょっとシブめのおじさんが語っているような文章がピッタリ。
 かしこくて、やさしいマサと、探偵事務所の姉妹が信頼しあう様子も
 心があたたかくなる。
 もともと犬派の私は、「やっぱり飼うなら大きいワンちゃんだな〜!」
 と夢をふくらませた1冊でした。



 7月16日
 妖怪アパートの幽雅な日常 @  作:香月 日輪

 妖怪アパートというネーミングどおり、
 人と物の怪が住んでいるアパートが舞台。
 アパートの住人たちの現実とはかけ離れた様子がとても楽しい。
 その一方で、主人公の高校生 夕士の孤独な境遇や
 学校生活での悩みや疑問がしっかりと織り込まれている。
 題名からはドタバタ的なおもしろさを予想していたけれど、
 よい意味でちがっていたことが印象に残った。



 7月13日
 禁じられた約束  作:ロバート・ウェストール

 小泉八雲の『牡丹燈籠』の語りを聞いてきた夜に読んでいたら、
 この作品もまた、自分の死後に恋人を道連れにしようとした少女が
 登場して、その偶然にちょっとびっくりした。
 前半は青春小説で、主人公の少年ボブが、
 病気がちの少女ヴァレリーと親しくなっていく過程が語られている。
 後半へのいろいろな伏線がひかれていて、それがヴァレリーの死後、
 ボブがヴァレリーに引きずられていくきっかけになっている。
 やっぱりこの作者さんの作品は怖いものが多いと思う。



 7月9日
 初ものがたり  作:宮部 みゆき

 江戸を舞台に、岡っ引きの茂七が出会う事件と人々の短編集。
 茂七の飾らない、人情味のある人柄はもちろんのこと、
 2人の手下や、何か訳ありの屋台の稲荷寿司屋など、
 メインの人物の存在感で物語がひっぱられていく感じがします。
 読んでいる途中で、“すごく読みやすいなぁ”と突然、思って、
 やっぱり文章がうまいのだと納得しました。



 7月5日
 イサナ 龍宮の闘いへ  作:たつみや 章

 『イサナと不知火のきみ』の続きです。
 おもしろかったのだけれど、読み終わったあとに、
 何か足りないような気がしていたら、いつものような
 強烈なメッセージがないのかも・・・と思いました。
 この作者さんの作品は、いつも強く訴えかけてくるものが
 あるのですが、今回は急いで読みすぎちゃったのかな。



 7月3日
 クロニクル 千古の闇3 魂食らい  作:ミシェル・ペイヴァー

 いよいよ父親のかたきである魂食らいに対面する。
 誘拐されたウルフを追って、極寒の地へ。
 雪と氷の土地で暮らす人々の様子がたくましく描かれている。
 きっと、作者さんはとてもたくさんの取材を重ねたに違いないと
 感動しながら、じっくりと読みました。



 7月1日
 惑星カレスの魔女  作:ジェイムズ・H・シュミッツ

 わたしのお気に入りの文庫本。
 何度読んでも、あきない楽しさのスペースファンタジーです。
 SF・・・と分類するのが正しいのかもしれないのですが、
 “カレス星のウィッチ”という呼び名と、彼らの謎めいた
 暮らしぶりが、ファンタジーっぽさをかもし出しています。
 でも、いろいろ考えずに、ありのままを楽しむのが一番です!


 6月27日
 見えざるピラミッド 上・下  作:ラルフ・イーザウ

 とてもおもしろかった。
 3重の宇宙という別々な3つの世界を、
 その結節点として生まれた少年(たち)の成長とともに描いている。
 少年たちが不思議な体験の共有を経ながら、3つの世界を
 つなぎとめようとする者を阻止する役割を自覚していく。
 その過程の冒険と、彼らに味方する人々が魅力的なところが
 とてもよかった。



 6月15日
 ねらわれた学園  作:眉村 卓

 すごく怖かったけど、すごくおもしろかった!
 「こんなこと絶対にない」って言い切れないところがリアルで怖い。
 あっというまに読んでしまった。
                             by(の)



 6月10日
 ねらわれた学園  作:眉村 卓

 超能力は別にして、“ありそうで怖い” というのが感想です。
 規則に従わない生徒を排除しようとする生徒会に対して反旗を
 ひるがえす主人公を、重々しい言葉で支持してくれる父親が、
 とてもありがたくて頼りになる存在に思えます。
 生徒の中にある無関心は、昔も今も変わりなくて、
 生徒会なんて、やりたい人がいればありがたいと思ってしまう。
 そんな気持ちに警鐘を鳴らすような物語でした。



 6月7日
 敵は海賊 猫たちの饗宴  作:神林 長平

 文句なしにおもしろかった!
 黒猫型異星人のアプロが、“異星人”とはいえやっぱり猫で、
 刑事という立場を考えずに無責任に行動するところがかわいい。
 シリアスなのだけどコメディ。コメディなのだけどシリアス。
 そのバランスが絶妙で、ぜひ続編も買いたい。
 作者さんはきっと猫が好きというだけでなく、
 猫をうらやましく思っているのではないかという気がします。



 6月4日
 銀河おさわがせアンドロイド  作:アスプリン & J.ヘック

 大金持ちのフール大尉が率いる宇宙軍のオメガ中隊の活躍を描く。
 人物が個性的でSFコメディとしておもしろいけれど、
 個人的には「マジカルランド」シリーズの方が好きかな。



 6月1日
 まぼろしのペンフレンド  作:眉村 卓

 わたしが小学生くらいの時に流行っていたと思うのだけれど、
 書かれたのはわたしが生まれた年でした。
 中学生の読者を対象に創られた作品ということで、
 平易な文章と自然な会話で、物語が非常に身近に感じられます。
 SF好きにはもちろんのこと、
 SF初心者にもSFのおもしろさを堪能できる一冊です。



 5月31日
 新説 弓張月  文:三田村 信行

 滝沢馬琴の『椿説 弓張月』を書き直した作品。
 源氏の嫡流である源 為朝が主人公の冒険と正義の物語。
 為朝は剛勇と徳を兼ね備えた人物だったようであるが、
 その妻の白縫(しらぬい)も、物語の中で大活躍をする。
 夫が捕らえられれば、奪還を決行し、
 夫が殺されたと思えば、敵討ちを決意して身を潜める。
 最後は海で嵐を沈めるために、人身御供として身を投げてしまうが、
 武士の妻というものは、簡単な覚悟ではすまないと心から思った。



 5月21日
 冒険がいっぱい  作:和田 誠

 おじいちゃんが子どものころのお話をしてくれるという設定で、
 戦中から戦後の子どもたちの生活の様子が語られている。
 ちょっとホラーというかオカルトというか、そんな話もあり、
 バラエティに富んだ楽しい作品集になっている。
 イラストはご本人ではなく、長新太さんが描かれていて、
 なんとなく、ぜいたくな気分になった。



 5月19日
 ゆめつげ  作:畠中 恵

 幕末を舞台に、夢占いができる青年 弓月を主人公にした物語。
 弓月がおっとりした性格なのは「しゃばけ」と似ているかも。
 しっかり者の弟がいつも側にいて助けてくれるのだけれど、
 なぜか目立たないように感じるのが不思議。
 夢にとらえられる恐怖と弱っていく体のマイナス要素を乗り越えて、
 誰かを助けたいと思うやさしさと強さが魅力の主人公だった。



 5月16日
 流星ワゴン  作:重松 清

 幸せだと信じていた家庭が崩壊し、希望を失った主人公が、
 5年前に交通事故で死亡した父子のワゴン車で不思議な旅をする。
 誰でも、日々の生活の中に選択肢は意外にたくさんあって、
 あとになってから後悔することも少なくないと思う。
 でも、間違えたと気づいたときに、
 それをどう修正するかという選択では正しいものを選びたい。
 失敗しても、やりなおす勇気を持ちたいと思った。



 5月9日
 火車  作:宮部 みゆき

 行方不明になった女性が、以前に借金で困っていたという
 部分を読んで、“借金だから「火の車」か!” などと
 つまらない連想をしていた。途中で違っていたことがわかって、
 やっぱりそんなに単純ではないよね・・・と、可笑しくなってしまった。
 読み進むうちに、女性を探す主人公の刑事さんの気持ちに
 自分も同調してきて、彼女の話をききたいと心から思った。
 読み応えがあって面白かったけれど、私は時代物の方が好きだな。



 4月29日
 あかんべえ 下  作:宮部 みゆき

 幽霊の謎が少しずつ解けて、その合い間におりんと周囲の人々に
 わだかまった謎もだんだんと整理されていく。
 作者はこの物語の中で、恐ろしいのは幽霊そのものではなく、
 成仏できずに残ってしまうほど強い恨みや憎しみ、悲しみだと
 わたしたちに伝えようとしていると思う。
 そして、そのような強い思念が、その場所に滞ってしまうと。
 残虐な亡者も登場するけれど、読んでいて怖くなくて、
 おりんの存在にさわやかささえ感じる作品だった。



 4月25日
 アーモンド入りチョコレートのワルツ  作:森 絵都

 ピアノ曲をモチーフにした短編3作。
 中学生を主人公にした、優しさの中に危うさをもった作品で、
 主人公がどんな結論に行き着くのかハラハラした。
 残念なことに、私はどの曲もわからなくて
 もったいない気分になってしまった。
 こんどCDでも借りてこようと思う。



 4月23日
 時の旅人  作:アリソン・アトリー

 はじめは田舎の昔ながらの暮らしを描いた物語かと思ったら、
 読み進むにつれてドラマティックな展開をみせて、
 後半は先がどうなるのか気になって止まらなかった。
 過去の悲劇と同時に、主人公の少女の恋が悲しくて、
 やさしさの中にもせつない物語だった。



 4月11日
 あかんべえ 上  作:宮部 みゆき

 江戸の料理屋の娘 おりんを主人公にした、幽霊の謎をとく物語。
 おりんと関わる幽霊たちがとても個性あふれていて、
 おどろおどろしさや禍々しさを感じないので読みやすい。
 表題のあかんべえをする少女の幽霊はまだ謎につつまれていて、
 下巻が楽しみ。



 4月10日
 アンをめぐる人々  作:ルーシー・M・モンゴメリ

 アヴォンリー周辺に住む人々を主人公にした短編集。
 どれも愛情にあふれた美しい物語です。
 中でも『父の娘』と『失敗した男』が特に私は好きで、
 心の中に幸せがわきあがってくるような気がします。



 4月4日
 あやし  作:宮部 みゆき

 江戸を舞台に、ちょっと気味の悪いできごとを描いた短編集。
 人の心に巣くう鬼や、恨みが呼び起こす災難などが
 おもに商家の奉公人を中心にして語られます。
 不気味ではあるけれど、どこかもの悲しくもあり、
 また、心に闇のない者には怖がる必要がないのだと感じました。
 私なんかがこんなこと言うのは図々しいのですが、
 宮部みゆきさんは言葉の選びかたと文章がすばらしいと思います。



 4月1日
 アンの友達  作:ルーシー・M・モンゴメリ

 アヴォンリーの近くに住む人々の物語をつづった作品集。
 どれも愛に満ちた美しい物語で、そのうえユーモアもあり、
 読んでいる自分も幸せな気分になってきます。
 一番感動的なのは『ロイド老淑女』なのですが、
 ユーモアと軽い皮肉をおりまぜた『隔離された家』も好き。
 なにより、それぞれの物語の中で、アンのことをみんなが
 どう思っているのか知るのが楽しい。


 3月16日
 女探偵 ドロテ  作:モーリス・ルブラン

 怪盗ルパンの作者が、若い女性を探偵役に描いた冒険物語。
 ドロテの快活さと明敏さ、少女のようでいて魅惑的でもある魅力は
 もしかすると、とてもフランス的なのでしょうか。
 謎解きも、悪者との対決もおもしろくて、
 一気に読んでしまいました。
 久しぶりのルブランの作品、心から楽しめました。



 3月13日
 テラビシアにかける橋  作:キャサリン・パターソン

 映画の原作。
 予想していたようなファンタジー的な展開ではなく、
 少年ジェシーが、風変わりな少女レスリーとの出会いと別れを
 経験して、いろいろなことに気付いていくという成長の物語。
 中でも、自分の中にある恐怖心と向き合おうと決心するところと
 いつもばかにしていた先生の思いやりに気付くところに感動した。
 本を貸してくれた友人に感謝♪



 3月11日
 シャナラの妖精石 上・下  作:テリー・ブルックス

 大好きなテリー・ブルックス氏の作品。
 期待通りのおもしろさで、大満足。
 日本での発売は最近だけど、実際に書かれたのは
 ランドオーヴァー・シリーズの前ということで、
 くぼ地に住む魔女や木に変身する乙女など、
 モチーフの原型を見たような気がした。
 この本も、やっぱり買わなくちゃ!



 3月2日
 だれも寝てはならぬ  作:マーガレット・マーヒー ほか

 おもにイギリスとオーストラリアの17人の作家による短編集。
 まるでプレゼントの小箱を一つずつ開けていくような楽しさ。
 ホラーやオカルトからファンタジーや日常の事件を描いた作品など、
 色とりどりで、本当に楽しめました。
 一番気に入ったのは『ウサギのチャーリー』という作品なのですが、
 作者が(やっぱりというか)私が大ファンのガース・ニクス氏だったこと
 に、とてもうれしい気持ちになりました。
 (今までの作品とは全然タイプが違っていたので・・・。)
 この本は家に欲しいなぁ。



 2月26日
 ウィッシュリスト  作:オーエン・コルファー

 償いをするために現世に戻ってきた少女の魂と
 孤独で皮肉屋の老人との交流を描いた物語。
 この作者さんの「アルテミス・ファウル」シリーズが大好きなので、
 雰囲気の違うこの作品を読むのをずいぶん迷ったけれど、
 明るくて、ユーモアたっぷりで、じーんときて、
 “読んでよかった!” と心から思える物語でした。



 2月23日
 トラベリング・パンツ  作:アン・ブラッシェアーズ

 1本のジーンズを中心に、成長する4人の少女のひと夏の物語。
 4人がお互いを理解し、思いやる気持ちがとても素敵。
 それぞれがいろいろな出来事に出会い、危機に陥っても、
 信じてもらえたり、なぐさめてもらえたり、
 時には叱られたりしながら次の一歩を踏み出していく。
 久々に眠気が吹き飛ぶ本に出会い、夜更かしして読み通した。



 2月22日
 一瞬の風になれ 3  作:佐藤 多佳子

 運動が苦手な私には絶対に体験できない短距離走の爽快感を
 主人公の言葉を通して味わわせていただきました。
 余韻の残るラストシーンで、続きが読みたい気もする一方、
 この物語はここで終わっているからよいのだとも思う。



 2月19日
 ブレイブ・ストーリー 上・下  作:宮部 みゆき

 分厚い本だったので通勤に持ち歩けなくて、
 読み終わるまでずいぶんかかってしまった。
 メインは幻界での冒険とワタルの成長なのだけど、
 その伏線となる現実世界でのできごとの部分も私は気に入っている。
 お母さんがワタルの冒険を共有できたラストもとてもよかった。



 2月17日
 一瞬の風になれ 2  作:佐藤 多佳子

 主人公はものすごくやさしい。
 そして、彼を囲む仲間もやっぱりやさしい。
 失敗や悔しさを経験して、それを他人の気持ちを
 理解するやさしさに転換していく強さがいいなあと思う。
 はじめからずっと感じていたのだけど、
 顧問の先生の雰囲気が、私が習った先生に似ていて、
 声まで聞こえてくるようなリアルさがある。



 2月7日
 南総里見八犬伝 二・三・四
              作:滝沢 馬琴 編著:浜 たかや

 おもしろくて読むのが止まらなかった!
 八犬士それぞれに得意な武器が設定されていて、
 性格も誠実で勇気があり、かなりイケメンとなれば、
 この作品が世に出たころは男女を問わず大人気だったのでは?
 当時の識字率のアップにも貢献したのではないかしら・・・。



 2月4日
 一瞬の風になれ 1  作:佐藤 多佳子

 普通の男の子の不安や憧れ、友人への思いなどを
 かざらない言葉でつづってあって、
 読みながらさわやかな気分になりました。
 400メートルリレーのあっという間の時間を
 主人公と一緒に駆け抜けていくような気がしました。



 2月1日
 ヒーローなんてぶっとばせ!  作:ジェリー・スピネッリ

 主人公は体が大きくて、アメフトのチームですぐにヒーローに
 なれるような男の子。
 「オレはすごいんだ」と信じていた主人公が、女の子にふられたり、
 弱虫だと思っていた同級生の優しさに気付いたり、
 大好きな祖父の病気を経験したりして、少しずつ変わっていく。
 ほかの人の気持ちを考えてみることができるようになって、
 見栄っ張りがなくなっていく過程がほっこりとあたたかい作品。



 1月29日
 南総里見八犬伝 一  作:滝沢馬琴 編著:浜 たかや

 子どものころにテレビで人形劇のシリーズをやっていたので、
 だいたい知っていると思っていて、今回初めて読みました。
 読んでみたら、ものすごく面白い!
 子ども向けに書き直してあるからかもしれないけれど、
 スピード感があって目が離せなくなります。
 それに善玉、悪玉がわかりやすくて、つい応援してしまう。
 早く続きが読みたい!



 1月26日
 狐笛のかなた  作:上橋 菜穂子

 久しぶりに涙、涙の本に出会いました。
 悲しいのだけれど、心温まる物語です。
 妖狐としての孤独な運命を受け入れたまま、
 人間の小夜を愛する野火の心がせつなくて、悲しい。
 最後は美しい景色の中にとけこむような、
 やさしい結末になっていてほっとしました。



 1月24日
 歩く  作:ルイス・サッカー

 不思議な運命と友情の物語 『穴』 の続編。
 主人公は施設の仲間だったアームピット。
 一度のあやまちが、本人の生活をどれほど変えてしまうのか。
 家族までも偏見を持ってしまい、彼を信じることができない。
 そんな中でも自分を信じてくれる人を裏切りたくないと思い、
 一歩ずつ、ゆっくりでも未来へ進もうとする主人公が
 とても頼もしくて、自分もあせらないで進んで行こうと思った。



 1月21日
 12枚のだまし絵  作:ジェフリー・アーチャー

 肝心な部分から目をそらさせるしかけがちりばめられた短編集。
 中でも私が気に入ったのは「海峡トンネル・ミステリー」。
 一度読んで結末を知ってから、もう一度読んでも
 違った意味で楽しめるというお得な作品。
 『あしながおじさん』をおじさんの正体を知ってから読むと
 また違った楽しさを発見するのと似ていると思う。



 1月11日
 トンネル 上・下  作:ロデリック・ゴードン/ブライアン・ウィリアムズ

 中盤から物語にスピード感がでてきて、最後まで一気に読めた。
 シリーズ作品とは知らなくて、事件が解決しないのでおどろいた。
 あとがきや解説もないし・・・。
 思いがけない味方や裏切り者が現れる展開は、
 読み手の気持ちに大きく訴えかけてくる部分だと思う。



 1月5日
 風の陰陽師 1 きつね童子  作:三田村 信行

 平安時代の陰陽師 安倍晴明の少年時代を描いた物語。
 表紙にひかれて借りてみたところ、かなりおもしろかった。
 主人公の晴明だけでなく、大盗賊になりたい多城丸や
 幼馴染みでライバルの忠憲も、これからどうなっていくのか気になる。



 1月4日
 おまけのこ  作:畠中 恵

 体の弱い若だんなと妖たちの活躍を描く第4巻。
 1巻目は捕物帳の雰囲気だったけれど、
 巻を重ねるにつれて多彩な物語を展開します。
 今回は特に、読んだあとにやさしく心に残る物語が
 多かったように感じました。





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