本のへやへ  入口へ

虹の谷つうしん 2014年




 12月29日
 ラモーゼ プリンス・イン・エグザイル 上
            作:キャロル・ウィルキンソン

 古代エジプトを舞台にした、王子ラモーゼの友情と成長の物語。
 わがままな王子が王宮の陰謀を逃れて、村で書記の弟子として
 暮らし始める。
 旅をする過程で、ラモーゼと、彼と行動を共にする二人との間に
 友情が育まれるストーリーがとても好きです。



 12月21日
 王妃の帰還  作:柚木 麻子

 面白かった!
 女子中学生の人間関係が、極端ではあるけれどリアル。これは
 まさに女性にしか分からない作品だという気がします。
 驚きと戸惑いの中で主人公が変わっていく様子も共感できまし
 た。



 12月12日
 あなたをつくります 作:フィリップ・K・ディック

 『図書室の魔法』で批評されていたSF作家の作品。
 人間と見分けがつかないアンドロイド(シミュラクラ)の出来
 栄えがすごい。その世界での精神疾患の判断と患者の扱われ方
 も近未来的な雰囲気でおもしろかった。



 12月10日
 ミエナイ彼女ト、ミエナイ僕。
            作:アンドリュー・クレメンツ

 突然、見えない体になったボビーと、図書館で出会った目の見
 えない少女の小さな冒険と恋の物語。
 この作者さんの青春小説は初めて読みました。
 見えない体になったボビーが、それまで感じていた窮屈さから
 解放され、同時に自分自身で考えることや両親との新しい関係
 を身に付けていく。人生に重大な問題に向かいながらも、悲壮
 感がなく、さわやかな主人公たちが心に残ります。



 12月9日
 オレたちの明日に向かって  作:八束 澄子

 中学校の職業体験を通して、主人公が人の生き方を学んでいく
 成長物語。
 職業体験先が保険業という、人生に深くかかわる業種であるこ
 とや、面倒をみてくれた人の生き方に触れるなど、単なる課題
 としての体験に終わらない。それらが中学生の現実の悩みとう
 まく折り合いをつけて、次の一歩を踏み出す勇気につながって
 いくところがさわやかで、読後感の良い物語でした。



 11月29日
 図書室の魔法 上・下  作:ジョー・ウォルトン

 15歳の孤独な少女が、大好きな読書を通して、他の人々との
 関係や自分の生き方を模索していく物語。
 主人公が読んでいるのはおもにSF作品で、わたしが同じよう
 にSF小説に夢中になっていたころに読んだ作品もいくつか登
 場していました。
 嬉しいことに、わたしが感じていたのと同じ評価が述べられて
 いる作品もあり、メインストーリーと一緒に、本についての議
 論も楽しめる作品でした。



 11月14日
 モナミは宇宙を終わらせる?  作:はやみね かおる

 わたしはよくあるのですが、続編を先に読んでしまいました。
 学校でのできごとが世界とシンクロしていて、その学校にとて
 つもなく失敗ばかりする主人公がいる、という設定。主人公以
 外のキャラクターも個性的で、最後まで楽しく読める作品でし
 た。



 11月2日
 文学少年と運命の書  作:渡辺 仙州

 『西遊記』の作者とされる呉承恩という名の少年を主人公にし
 たファンタジー。
 人間の運命を記したといわれる書が人間の子供の姿で現れるな
 ど、不思議で楽しい物語です。
 歴史物語の成立の過程なども知ることができて、興味深かった
 です。



 10月31日
 僕らの事情。  作:デイヴィッド・ヒル

 難病を患う親友サイモンとの日々と複雑な思いが主人公ネイサ
 ンの一人称で語られる。
 読みながら胸に迫ってくるのは「生きることさえ不公平」とい
 う事実。病状が悪化する親友の状況に悲しみと怒りで心がいっ
 ぱいになるネイサンに、気持ちが共鳴してしまいます。けれど、
 読後感は悪くなく、良い作品に出合えたと思いました。



 10月24日
 いとみち  作:越谷 オサム

 作者さんの名前を見たことがあるなー、と思って読んでみまし
 た。『陽だまりの彼女』が有名な作家さんでしたね。
 メイド服×津軽弁×津軽三味線という味のある組み合わせが、
 絶妙なミックス具合でやさしい青春物語になっています。
 主人公いとの祖母が、しゃんとしていて素敵。



 10月20日
 ICO 霧の城 下  作:宮部 みゆき

 最初から、何かで知っているような気がしていたのですが、解
 説に「ゲームを気に入った宮部みゆきさんが書きたくなった物
 語」とあり、微かにゲームのコマーシャルの映像が浮かんでき
 ました。
 景色などはそのゲームをもとにしているのでしょうか。迷路の
 ような城内の様子など、そうだと知ると、なるほどと思います。



 10月16日
 魔術 アラルエン戦記5  作:ジョン・フラナガン

 レンジャーとして独立したウィルが試練に立ち向かう。
 このシリーズは、巻を重ねるごとに一層面白さを増していくよ
 うに感じます。最近読んだ冒険物語の中では、一番気に入って
 います。
 物語の途中で終わっているので、次の巻の発売が待ち遠しい
 です。



 10月11日
 ラビットヒーロー  作:如月 かずさ

 特撮おたくの少年が、ある出会いからご当地ヒーローに抜擢さ
 れ…という物語。
 劣等感でいっぱいの主人公がなかなか活躍できないところは、
 もどかしく感じるけれど、共感してしまう。
 誰もが葛藤を抱えていることを主人公が知っていく後半が良か
 った。



 10月10日
 自負と偏見  作:ジェイン・オースティン

 イギリスを舞台にした恋愛小説の名作。
 とても面白かった。
 最初の方で、この人とハッピーエンドになるのだと分かるので
 すが、そこに行き着くまでのすれ違いや困難さ、そして、周囲の
 人々の言動の滑稽さに、読むのが止まらなくなりました。



 10月3日
 ICO 霧の城 上  作:宮部 みゆき

 別な世界を舞台にした冒険ファンタジー。
 全体に力強い凛とした雰囲気があり、物語の世界に引き込まれ
 ました。
 謎を追って下巻へ。



 9月30日
 都会のトム&ソーヤ 9  作:はやみね かおる

 久しぶりに続編を読みました。
 大がかりな話題は一旦おいて、この巻は身近な学校行事のおは
 なし。内人の奮闘ぶりが楽しかった。
 お父さんたちのおまけのお話も微笑ましくて好きです。



 9月28日
 樹上のゆりかご  作:荻原 規子

 何年ぶりかで再読。
 他人と深いかかわりを築かずにいた主人公ひろみが、悪意のあ
 る事件をきっかけに、周囲の友人たちに目を向けるようになる。
 外側に見える姿の後ろに隠れているやさしさや意地など、おと
 なの一歩手前の高校生が理想を追ってもがく姿が瑞々しくて、
 愛おしくなる物語です。



 9月22日
 スパイガール 2  作:アリー・カーター

 新しい恋の気配を感じる第二巻。
 普段はおしゃれに縁のないスパイ候補の女子高生たちが、必死
 で身だしなみに気を配るエピソードが可愛くて可笑しい。



 9月16日
 かまえ!ぼくたち剣士会  作:向井 湘吾

 剣道四段の作者が描いた青春小説。
 それぞれに悩みや心の傷を抱えながら、一心に剣道に取り組む姿
 が爽やかです。
 “構えて向き合ったら、年齢や体の大きさは関係無い” という
 真剣さが心に残りました。



 9月14日
 キャットと魔法の卵  作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 「大魔法使いクレストマンシー」シリーズ。ほかの作品ではピ
 ンチに呼ばれて出てくるクレストマンシーの自宅周辺で起きる
 事件。
 このシリーズらしい、子どもの気持ちに寄り添ったストーリー
 が展開される物語です。自分勝手な大人たちに邪魔をされなが
 ら、自分のやるべきことを見出していく子どもたちの成長が楽
 く、力強く描かれています。



 9月10日
 僕とおじいちゃんと魔法の塔 1・2 作:香月 日輪

 児童書のお手本のような第一巻と、成長した主人公の新しい物
 語の始まりである第二巻。
 三巻からどんな生活が主人公たちを待っているのか、楽しみで
 す。



 9月8日
 空想オルガン  作:初野 晴

 吹奏楽部のハルタとチカが吹奏楽の甲子園と言われる普門館を
 目指しながら、身の回りの事件を解決していくシリーズ。
 登場人物それぞれの個性が楽しく、また、高校生らしい悩みや
 やさしさがまぶしい青春物語でした。



 9月5日
 夏への扉  作:アーサー・C・クラーク

 何年も、いつか読みたいと思っていた作品。作者は著名なSF
 作家。
 この物語ももちろんSFではあるのですが、その科学技術は物
 語の道具の一つに過ぎず、親友と恋人に裏切られた主人公が、
 自分の人生を新しく見つけて行く物語です。と言っても、その
 道具の活かされ方が楽しい。
 主人公の前向きな考え方と、彼の飼い猫ピートとのやり取りが
 重苦しさを取り去っていて、爽やかなストーリーでした。



 9月2日
 ぼくたちのアリウープ  作:五十嵐 貴久

 バスケ部に入るために入学した高校で、入部を拒否されたジュ
 ンぺーたち1年生が、入部を賭けて先輩たちと勝負するまでの
 物語。
 タイトルの“アリウープ” が何のことなのか分からないまま
 読み進んでしまい、終盤に分かったときにホッとしました。



 8月31日
 銀葉 アラルエン戦記4  作:ジョン・フラナガン

 海賊のもとを逃げ出したウィルとエヴァンリン、二人を助けに
 旅に出ホールトとエラクがようやく出会い、次なる大きな戦い
 に挑む。
 後半の戦いの場面は、手に汗を握る勢い。特にスカンディアの
 首長ラグナックの戦闘は圧巻でした。



 8月27日
 名前探しの放課後 下  作:辻村 深月

 真実が明らかになったときに、そこまでに感じた違和感がすべ
 て一つにまとまる感じ。
 やり過ぎでは? と思う部分もあったけれど、これこそ高校生
 だという気もするし、「青春小説」という言葉が自然と出てく
 る爽やかな物語でした。



 8月26日
 午後からはワニ日和  作:似鳥 鶏

 動物園を舞台にしたミステリー。
 登場人物の個性が楽しく、気軽に読める作品でした。
 わたしたちが見ることのない、動物園のお仕事も興味深くて楽
 しめました。



 8月23日
 ラブ、スター・ガール  作:ジェリー・スピネッリ

 レオと別れて新しい生活を始めたスターガールが、自分らしさ
 を取り戻すまでを描いています。出す当てのないレオへの手紙
 という形で物語がつづられていきます。
 前作の『スター・ガール』を読んだのはもう10年も前なのに、
 この本を読み始めたら、たちまち彼女の世界を思い出しました。
 それほど印象の強い作品だったのです。
 今回は、傷ついた心が癒される過程、そして、未来の幸せを信じ
 る強さを得た姿が、静かにやさしく心の中に残りました。



 8月18日
 氷賊 アラルエン戦記3  作:ジョン・フラナガン

 囚われの身となったウィルとエヴァンリンに襲いかかる危機と、
 二人を助けに旅立ったホールトとホラスの物語。彼らの友情と
 信頼の深さが試される。
 このシリーズはどの巻でも良い意味で裏切られる。すぐに次の
 巻を読みたくなります。



 8月14日
 名前探しの放課後 上  作:辻村深月

 突然過去にもどってしまった高校生のいつかが、友人たちと、
 これから起こるはずの自殺を止めるために行動を起こす。
 それまで他人と深くかかわることを避けていたいつかが、周囲
 に助けを求めることから関係を築いていく。その過程はゆっく
 りではあるけれど、固く撚り合わされた糸がほどけていくよう
 で、読みながらときどきそれに気付いてほっとします。



 8月10日
 舟を編む  作:三浦しをん

 どんな作品かと思っていた本をやっと読みました。
 さらりとした文章なのに、言葉を探求し続ける人々の熱い思い
 があふれてくるような物語でした。作品に合わせた装丁が気が
 利いていて素敵です。



 8月7日
 炎橋 アラルエン戦記2  作:ジョン・フラナガン

 レンジャー見習いのウィルが、友との友情を深めながら、国を
 守るためのレンジャーとして大きく成長する物語。
 戦が終わり、ほっとする間もなく次の苦難へと続く!



 8月6日
 絵で読む広島の原爆  文:那須正幹 絵:西村繁男

 大きめの絵本。見開きで原爆投下前からその後までの街の様子
 を紹介している。途中に原爆そのものについてや、どのように
 被害が広がったのかという詳しい解説がある。
 わたしは原爆投下直後の絵はじっくり見ることができませんで
 した。でも、解説で知りたかったことを十分に知ることができ、
 資料としても良い本だと思います。



 8月3日
 スパイガール  作:アリー・カーター

 優秀なスパイを養成する女子校ギャラガー・アカデミーの生徒
 カミーが主人公。出会った素敵な男の子はスパイなのか、運命
 の人か?
 中途半端な女子高生スパイが楽しい、気楽に読める作品。
 あり得ない設定ではあるけれど、彼女たちの悩みはシンプルで
 いたって普通。そんなところが気に入っています。



 7月31日
 靴を売るシンデレラ  作:ジョーン・バウアー

 16歳のジェナがアルバイト先の靴店の社長に頼まれて、運転
 手兼付き人として、シカゴとテキサス往復6週間の旅に。
 「靴を売る」という仕事への誇りと愛情や、社長との間に生ま
 る信頼関係、責任感の強いジェナが抱えてきた悩みを打ち明け
 られる人との出会いなど、家族と切り離された時間の中で、ジェ
 ナは生きる力となるものを見つけていく。
 幸せはきっとある、人生って良いものだと思える物語でした。



 7月25日
 冷たい校舎の時は止まる 中・下  作:辻村深月

 読み応えのある物語でした。謎は、やっぱりわたしが推測でき
 るようなものではなく、心から「ああ、すごいな。」と思いまし
 た。
 直前に読んだ『桐島、部活やめるってよ』に続けての高校生の
 物語で、それぞれの描く生徒たちの違いをはっきりと感じまし
 た。もちろん、設定そのものがまったく違うのですけれど。



 7月19日
 桐島、部活やめるってよ  作:朝井リョウ

 ある高校の生徒5人、それぞれの物語。
 映画部の涼也のお話は、わたしには非常にイタかった。教室で
 の行動も、体育での思考も、生徒同士のランク付けも、全部、自
 分がまるまる当てはまっていたから。当時のどうにもならない
 やるせなさと諦めの気持ちがよみがえって、しばらく高校時代
 の負の記憶をたどってしまった。



 7月18日
 魔法泥棒  作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 地球の技術を搾取している別の宇宙に魔女たちが殴り込み! …
 みたいな楽しい作品。
 最初は小さな単なる偶然のような出来事が、次第に寄り集まっ
 て大きな騒ぎに発展していく過程は、この作者さんならではの
 楽しさで大好きです。
 面白かった!



 7月14日
 弟子 アラルエン戦記1  作:ジョン・フラナガン

 アラルエン王国の孤児 ウィルが、レンジャーの見習いとして
 弟子入りし、その才能を開花させながら、仲間や友人との強い
 絆を築いて成長する。
 同じく孤児のホラスがどうなるのか、ドキドキしながら読みま
 した。後半の追跡と戦いは緊張感たっぷりで、読むのをやめら
 れなくなりました。



 7月10日
 路地裏のあやかしたち  作:行田尚希

 気軽なものが読みたくて、選びました。高校生の洸之介が出会
 った表具師の美しい女性が、表装の技で怪異を解決する連作。
 あやかしたちの楽しさと優しさ、そして表装という仕事の興味
 深さに惹かれて一気に読みました。



 7月9日
 冷たい校舎の時は止まる 上  作:辻村深月

 ホラー・ミステリーというのか、心理サスペンスというのか、
 わたしには上手く分類できませんが、今後の展開が楽しみな物
 語です。
 校舎に閉じ込められた8人の背景も気になりつつ、自分の高校
 時代とつい比べてしまい、大人びた登場人物に感心しています。
 座敷わらし的な要素にも興味をかき立てられます。



 7月3日
 バベットの晩餐会  作:イサク・ディーネセン

 一度読んでみたいと思っていた作品。北欧の小さな町で慎まし
 く暮らす姉妹が、長年雇っていたフランス人女性の申し出で、
 初めて本物のフランス料理を食べることになり…。
 穏やかに、静かに流れて行く物語に、ときおりきらりとユーモ
 アが光り、真面目でありながら、茶目っ気のある人間ドラマだ
 と思います。バベットの芸術家魂が格好良い。



 7月2日
 影の王  作:スーザン・クーパー

 アメリカの少年劇団員 ナットが、十六世紀のロンドンで目覚
 め、当時の劇団員やシェイクスピアとの交流の中で、自分の生
 きる道を見付ける物語。
 当時のロンドンの活気あふれる様子がとてもリアルです。
 ナットが、演劇とシェイクスピアに心の深い傷を癒されていく
 過程が細やかに描かれていて、心に残る物語でした。



 6月29日
 シルバータン  作:チャーリー・フレッチャー

 ジョージが成すべきことを成し、すべての謎が明らかになる完
 結編。
 激しい戦いの場面にドキドキしながら、ジョージとイーディを
 守ろうとする銅像たちの優しさに切なくなりました。二人がそ
 れぞれ抱えていた苦しみを乗り越えて成長する姿も良かったで
 す。



 6月27日
 百年法 上  作:山田宗樹

 不老処置の技術が一般化した日本で、死すべき時を定めた<百
 年法>にからむ人々の思いや行動を描いています。
 人にとって時間が限りあるものだからこそ技術が進歩する、と
 いう部分に、とても納得した。老化しないということは、生き
 上では嬉しく便利なことではあるけれど、一方で、得られなく
 なるものや、失うものも少なくないように思う。



 6月24日
 語りつぐ者  作:パトリシア・ライリー・ギフ

 伯母の家に預けられた少女が、自分にそっくりな少女の肖像画
 に出会い、彼女の人生を追いながら、自分の苦しさや悩みを乗り
 越えて行く。肖像画の少女のつらい体験が、もう一つの物語と
 してはさまれている。
 肖像画の少女ズィーはアメリカの独立戦争時代の少女。こちら
 の物語が私には印象が強くて、そもそもの主人公があまり印象
 に残りませんでした。



 6月18日
 アイアンハンド  作:チャーリー・フレッチャー

 ストーンハート第二巻。
 頼りなかった主人公ジョージが仲間のために運命に立ち向かう。
 ジョージたちを助けるブロンズ像たちが凛々しくて、わくわく
 しつつ第三巻へ。



 6月15日
 オリエント急行の殺人  作:アガサ・クリスティー

 早川書房 クリスティ・ジュニア・ミステリシリーズ。
 ジュニア用のシリーズだとどんな感じか知りたくて、読んでみ
 ました。でも、この作品は結末は知っていましたが、もとのも
 のを読んでいなかったので、比較するにはもう一冊読まなくて
 は。ポアロの個性的な人柄があまり出ていないように感じたの
 で、そのあたりに注目しながら読もうと思います。



 6月11日
 夢の守り人  作:上橋菜穂子

 久しぶりに読みました。
 物語の背景となる世界や思想、それに連なる人々の生き方まで
 しっかりしたリアルさを持っていることが、上橋菜穂子さんの
 作品のすごいところだと、どの本を読んでも思います。



 6月6日
 ストーンハート  作:チャーリー・フレッチャー

 久しぶりにとても面白いと思える冒険ファンタジーに出会った
 気がします。
 ロンドンで見たいものが、また増えました。



 6月1日
 水深五尋  作:ロバート・ウェストール

 第二次世界大戦中のイギリスのある海辺の街で、友人たちとス
 パイ探しに奔走するチャス・マッギル。スパイ探しという目標
 に向かいながら、社会の不公平や不条理を目の当たりにし、自
 分なりのものの見方に気付きはじめる成長の物語。
 モヤモヤとすっきりしない気分、何か思い切って馬鹿なことを
 してみたい気分は、10代の読者にはとても共感できるのかも
 知れません。



 5月31日
 伝説のエンドーくん  作:まはら三桃

 ある中学校で生徒の守り神のように伝えられているエンドーく
 ん。校舎のあちこちに残る「エンドーくんは○○」という落書
 きにからめて、教師の想いや決意を追う物語集。
 先生が主人公の作品は少なくないと思いますが、先生本人の人
 生ではなく、学校現場でのその場その場の気持ちや行動を中心
 に据えた作品は珍しいような気がします。
 高校のときの化学の先生を思い出しました。



 5月30日
 武士道  著:新渡戸稲造

 どんなことが書いてあるのだろうと興味が湧いて、読みました。
 もともとは、外国の人々に日本人の道徳について説明するため
 に英語で書かれた本だということに驚きました。
 難しいかと思いましたが、かなり面白く読むことができました。
 世界のさまざまな思想や宗教と比較して述べているところは、
 著者の研究の深さを感じます。
 今は生活様式や常識が当時とは違っていますが、この基本的な
 部分は消えてはいないのではないかと思いました。



 5月27日
 レッドデータ・ガール 6  作:荻原規子

 最終巻。
 少し落ち着いて、まとめっぽい雰囲気だったかな。



 5月21日
 レッドデータ・ガール 4・5  作:荻原規子

 ようやく続きを読みました。
 姫神の存在の意味が明らかになり、泉水子と深雪の溝が少しず
 つ埋まり、いよいよ次は最終巻です。



 5月10日
 将棋の子  著:大崎善生

 プロ棋士を目指し、それを達成できなかった人々に焦点をあて
 たノンフィクション。友人の勧めで読んでみました。
 一言でいえば「厳しい世界」です。高校にも行かず、ひたすら
 将棋の研究だけをしても、昇段できずに年齢制限に引っ掛かる
 と、もうプロを目指すことはできない。中には社会的な経験が
 少なくて、他人との関わり方が上手くないため、仕事に就きに
 くい人もいる。
 それらの困難な状況を紹介しながら、それでもずっと将棋を心
 の拠りどころとしている人もいることにたどり着き、著者と一
 緒にほっとして、読み終えることができました。



 5月7日
 大草原の小さな町 作:ローラ・インガルス・ワイルダー

 岩波少年文庫 ローラ物語2。
 人々がやってきて町が賑やかになる過程が14歳のローラの目
 を通して語られます。
 家族や友人たち、将来のことなど、喜びと希望と悩みの中で成
 長するローラに親近感を覚えます。
 自給自足から物を買うことへと生活が変わり始めて、<経済>
 のようなものを具体的に教わったような気がしました。



 5月3日
 三銃士 上・下  作:A・デュマ

 岩波少年文庫
 一度、原作に近いものを読んだことがあるので、児童書版を読
 んでみようと思いました。
 事件のスピーディな展開で、とても面白く読めました。
 国の一大事に恋愛事がからんだりするところは、いかにもフラ
 ンスらしい気がします。



 5月1日
 赤毛のアン  作:L・M・モンゴメリ

 せっかくテレビで関連のドラマが始まったので、久しぶりに読
 みました。
 訳文に注目しながら読むと、少し視点が変わって興味深い気が
 しました。すらすらと流れるように読めるのは、翻訳者の村岡
 花子さんの努力と才能あればこそなのだと、感謝の気持ちが湧
 いてきます。



 4月28日
 宇宙への秘密の鍵
           ルーシー&スティーブン・ホーキング

 理論物理学者スティーブン・ホーキング博士と作家でジャーナ
 リストであるその娘ルーシー氏による、少年ジョージの冒険物
 語。
 壮大な宇宙と現実世界の悩みを行き来するストーリーも面白い
 けれど、間にある宇宙に関する解説や写真がより理解を助けて
 くれて良かったと思います。



 4月16日
 エリオン国物語 1  作:パトリック・カーマン

 壁に囲まれた街に住む少女アレクサの冒険物語。
 謎の鍵、宝石に刻まれた秘密、正体不明の敵など、謎が次々と
 あらわれて、テンポ良く読めました。



 4月5日
 仔羊の巣  作:坂木 司

 ひきこもり探偵第二作目。
 助けているようで、依存している。自分の生き方の根拠を、誰
 かの存在に委ねている。完結編を先に読んでしまったせいか、
 そんな部分を探しながら読んでいたような気がします。
 人の心の善良さを信じる「僕」を通して語られる世界は、悲し
 みや恨みがあったとしても、やはり温かくて希望のある場所な
 のだと思えます。



 3月31日
 青空の卵  作:坂木 司

 ひきこもり探偵の第一作目。
 語り手であるお人好しで泣き虫の「僕」とひきこもりの親友・鳥
 井。二人それぞれの違った純粋さに惹かれます。



 3月24日
 飛ぶ教室  作:エーリヒ・ケストナー

 このサイトの更新のために、久しぶりに再読。
 やっぱり、この作者さんの作品は好きです。
 きっと子どもの心を忘れない、優しくて、愛情をたっぷり持っ
 た人だったのだと思います。
 物語だけでなく、 “子どもだからといって、悲しみが小さい
 などということはない” という「まえがき」の内容からも、あ
 たたかい子どもへのまなざしを感じます。



 3月16日
 白い盾の少年騎士 上・下  作:トンケ・ドラフト

 『王への手紙』の続編。
 若い騎士となったティウリとその盾持ちで親友のピアックが、
 ふたたび危険な使命に立ち向かう物語。
 この2つの作品ともに、二人が背負う役割がとても重要であり
 ながらも、二人の若さに見合う方法で果たされるところが現実
 味があって良いと思います。
 また、二人の友情も清々しくて、安心して読めました。



 3月11日
 パストゥール  著:ビバリー・バーチ

 偕成社「伝記 世界を変えた人々」の一冊。
 微生物の研究から、世界に貢献するいろいろな発見をした科
 学者。
 自分の仮説が正しいと証明するためにアルプスにまで登った
 という科学に対する姿勢に感銘を受けました。
 いくつかの研究が名誉やお金のためではなく、困っている人
 からの依頼で始まったということが、世界に対する科学者の
 役割を示唆しているように思います。



 3月10日
 ブライユ  著:ビバリー・バーチ

 偕成社「伝記 世界を変えた人々」の一冊。点字を発明した
 人物。
 当時の盲目の人々が置かれていた状況はなんとなく想像はし
 ていましたが、具体的に知ると、やはりショックでした。
 そんな世の中で、盲目の子どもたちの可能性を信じて教育を
 おこなう人々がいたことに、救われる気持ちでした。
 読んだあとに点字に実際に触れてみて、その優れた特徴がよ
 くわかりました。



 3月8日
 シッダールタ  作:ヘルマン・ヘッセ

 気になったので、ヘッセ作品をもう一冊。
 バラモンの息子シッダールタが、長い人生をかけて悟りを開く
 までの物語。
 “川がすべてを語ってくれる” という思想(意見? 考え? う
 まく言葉が見つかりませんが)が、私の心にも自然に、楽に沁
 みこんでくるようでした。
 ヘッセ氏は生きることの意味を深く探りながら生きて来た方な
 のだなあと、しみじみと思いました。



 2月28日
 不完全な魔法使い 上・下  作:マーガレット・マーヒー

 魔法の力を秘めた少年ヘリオットが、自分の中に隠れている謎
 を解き明かし、真の魔法使いとして旅立つまでの物語。
 人間関係や時間の経過にときどき混乱してしまいました。
 表紙の絵はどの場面かはっきりと分かったのですが、私が感じ
 た主人公のイメージとは違っていて、ちょっと残念。



 2月22日
 車輪の下  作:ヘルマン・ヘッセ

 高橋健二さんの訳文が素晴らしいと聞いたので、読んでみまし
 た。
 厚みのある豊かな言葉づかいが、ときに軽く、ときにゆったり
 とストーリーを語ります。
 主人公の少年は、その純粋さゆえに周囲の人間が自分の能力を
 証明するための道具として利用され、自らの本当の幸せを見付
 けられずに終わってしまう。
 読後に主人公について考えずにいられない作品でした。



 2月17日
 王への手紙 上・下  作:トンケ・ドラフト

 騎士見習いのティウリが、隣国の王に宛てた大切な手紙を届け
 るため、危険をかいくぐり旅をする物語。
 仕事の参考に読んだ本に紹介されていました。
 上質な冒険物語です。前置きが短く、読み始めるとすぐに次の
 展開が気になって止まらなくなってしまいます。
 ほかの作品も読みたい作者さんです。



 2月12日
 ワーキングホリデー  作:坂木 司

 以前読んで気に入っていた『ウィンターホリデー』の前のお話。
 主人公のところにいきなり10歳の息子がやって来る。
 しっかり者の息子に戸惑いながら、自然に父親の役割を果たす
 方向に気持ちが向かって行くストーリーが切なくて温かい。
 もう一度読みたくなる物語です。



 2月6日
 ステップファザー・ステップ  作:宮部みゆき

 泥棒で継父でちょっぴり謎解き。
 設定も面白かったけれど、どことなくふわふわした主人公が、
 仕方なくとはいえ、次第に父性愛に目覚めていく過程にほっと
 します。
 誰かを大切だと思う気持ちが描かれている物語は大好きです。



 2月1日
 東の海神 西の滄海  作:小野 不由美

 十二国記シリーズの雁国、延王と延麒の物語。
 どんな話だったのか確かめたくて、久しぶりに読みました。
 やっぱり面白くて一気読み。
 挿絵の延麒は、私の印象よりも少し幼く感じました。



 1月30日
 敵は海賊・海賊版 DEHUMANIZE  作:神林 長平

 続けてSFを読みたくて。
 シリアスとユーモアが適度に入り混じっていて、私のお気に入りの
 シリーズです。
 場の動きを表すときの短い文章が、ときどき私の頭の中に独特のリ
 ズムで飛び込んで来て、その場面がフラッシュバックや静止画で見
 えるような気がします。



 1月24日
 たったひとつの冴えたやりかた 作:ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

 遠い未来の宇宙の冒険者の3つの物語。
 気軽に始まった第一話の表題作が、思いがけない結末になってい
 てびっくり! けれど、3つともそれぞれに心に余韻を残してくれる
 物語で、大変満足しました。



 1月24日
 ヒストリーキーパーズ 上  作:ダミアン・ディベン

 14歳の少年ジェイクが行方不明の両親を探すため、時間を遡って
 冒険に乗り出す。
 人物が生き生きとしているけれど、物語の進み具合がゆっくりだっ
 たような気がします。



 1月20日
 動物園の鳥  作:坂木 司

 ひきこもり探偵シリーズの3作目。
 最初の作品から読もうと思っていたのに、結局最後の物語を先に読
 んでしまいました。
 「僕」の友人である鳥井の鋭い推理にスカッとしました。でも、一
 番心に残ったのは「僕」と鳥井の関係でした。
 203〜204ページの鳥井の叫びと、彼にそう叫ばせた「僕」の
 決意が胸に突き刺さるようでした。前に進み始めた二人に、頑張れ
 と伝えたい。



 1月18日
 よろこびの歌  作:宮下 奈都

 女子校の合唱大会をきっかけに、あるクラスの少女たちを主人公に
 した連作。
 それぞれの秘めた想いや過去へのこだわりが次第にほぐれて、少女
 たちの力が抜けて行く。止まっていた心が動き出す成長の物語。
 最近読んだ中では、一番気に入った一冊です。



 1月10日
 化物語  作:西尾 維新

 個性が際立つ登場人物たちのふざけているような会話でストーリー
 は進むのだけれど、読み進めるうちに、主人公の優しさや切なさが
 浮かび上がって来る。
 その匙加減が絶妙だなあ…と思います。
 わたしは好きな作者さんです。



 1月4日
 楽隊のうさぎ  作:中沢 けい

 中学で吹奏楽部に入部したおとなしい少年 克久が、音楽や部員、
 顧問とのかかわりを通して成長していく姿を描いています。
 偶然にもこの冬に映画化されている作品でした。
 いじめの対象になりがちな克久が、成り行きで入部して初めて体験
 する打楽器の練習に心を満たされて行く過程が印象に残りました。
 親や親せきなどの大人を見る目が変わったり、自分をいじめていた
 相手に今までとは違う態度を取ったり、部活漬けの日々の合間に、
 克久の変化がするりと入り込む感じです。
 ずっと静かで淡々とした文章なのに、ラストの演奏のシーンは、わた
 しの胸の中に音が押し寄せて来るようで圧巻でした。



 1月3日
 やなりいなり  作:畠中 恵

 「しゃばけ」シリーズ第10作。
 楽しさと優しさと切なさをちりばめた物語たちは、いつも安心して
 読めます。





     いちばん新しいつうしんへ

     2014年  2013年

     2012年  2011年  2010年  2009年  2008年

     2007年  2006年  2005年  2004年

本のへやへ  入口へ