本のへやへ  入口へ

虹の谷つうしん

2013年1月〜12月



 12月14日
 ラスト★ショット  作:ジョン・ファインスタイン

 アメリカの大学バスケット決勝トーナメントを舞台にしたミステリー。
 学生記者として招待されたスティービーとスーザン・キャロルの二
 人が、憧れの選手が脅されているのを知り、真相を探る。
 バスケットの興奮も、主人公たちの行動力も、“アメリカらしい” と
 思った。大学名や登場人物、地名などが最後まで頭の中で混乱した
 ままでしたが、主要な部分だけ押さえて、ストーリーは面白く読めま
 した。



 12月13日
 いもうと物語  作:氷室 冴子

 北海道で暮らす小学生のチヅルの日々を描いた物語。
 能天気のようでありながら、家族や親戚、友だちとのつながりの中
 で、傷付いたり、切なかったりするチヅルに、いつの間にか自分の
 心もシンクロして切なくなってしまいました。
 子どもには子どもならではの悩みや悲しみがあるよね…と、しみじ
 みと思い出しました。



 12月11日
 チョコレート王と黒い手のカイ  作:ヴォルフ・ドゥリアン

 広告王として採用されるために活躍するカイと仲間たちの物語。
 素朴で楽しいストーリーです。
 子どもたちだけの秘密組織、奇抜な広告のアイデア、警官との追い
 かけっこなど、ドキドキわくわくが満載。



 12月8日
 怪物はささやく  作:パトリック・ネス 原案:シヴォーン・ダウド

 悪夢に怯えて目を覚ましたコナーの前に、イチイの木の怪物がやっ
 てくる。そして、3つの物語をすると言う。
 3分の1くらい読んで、雰囲気が予想と違うかも、と思い、クライ
 マックスで、タイトルがすとんと胸の中で落ち着いた感じ。
 読んで良かったと心から思った作品。



 12月6日
 ヴァイオレットがぼくに残してくれたもの
                    作:ジェニー・ヴァレンタイン

 16歳のルーカスは、タクシー会社のカウンターで運命的な出会い
 をする。相手はヴァイオレット・パーク。死んで骨壷に入れられて
 いるおばあさん。
 いったいどうなるのかと思いながら、あっという間に読んでしまい
 ました。ルーカスが自分の家族や周囲の人々をよく知っているよう
 で、でも、物語が進むに従って見えて来る真実と折り合いをつけよ
 とする姿が印象的でした。



 12月3日
 ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち 作:リチャード・アダムズ

 もう何回目だろう? 本がずいぶんくたびれて来ました。
 うさぎ語も、うさぎの英雄エル・アライラーも、うさぎたちが本当に
 語っているのではないかと、頭の片隅で信じているような気がし
 ます。



 11月15日
 夜のピクニック  作:恩田 陸

 久しぶりに読みたくなって手に取りました。
 高校生たちのどうにもならない想いがせつなくて、でも爽やかで、
 何度でも読みたくなる作品です。
 一昼夜、ただ歩き通すだけという高校の歩行祭。
 「どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。」
 何度も登場する主人公の親友の言葉が、最後には、わたしの心の
 中にも実感として生まれて来るのです。



 11月5日
 闇の守り人  作:上橋 菜穂子

 以前は大急ぎで読んだままだったので、今回じっくりと再読。
 バルサが自分の過去に区切りをつける物語。
 シリーズの中で、この作品が一番心に残っていたのですが、あとが
 きにも「大人の読者から最も支持」されていると書いてありました。
 多くの方が同じように感じているのだと思うと、物語の深さをあら
 ためて感じました。



 10月27日
 きみスキ  作:梨屋 アリエ

 副題「高校生たちのショートストーリーズ」。
 7人の高校生たちの一人称で書かれた、それぞれの想いの物語
 集。思わず、 “ああ、大変なんだなあ…” と思ってしまった。
 でも、理想と現実のギャップに失望したり、他人の目に映る自分を
 気にしたり、自分も大いに経験があるので良く分かります。
 最後に一番の飛躍を見せた恵が読後感を爽やかにしてくれました。



 10月23日
 お任せ!数学屋さん  作:向井 湘吾

 数学で世界を救いたいと思っている男の子 宙<そら>が開いたお
 悩み相談所「数学屋」を、主人公の遥がお手伝いをする、という物
 語。
 数学は本格的ではあるけれど、二人のやりとりは微笑ましくて、読ん
 でいるあいだ、楽しい気分になりました。
 宙の手紙は、何度読み返しても、心にじーんと来るものがあります。



 10月19日
 真夜中のパン屋さん 午前3時の眠り姫 作:大沼 紀子

 希実が過去を思い出し、物語もいよいよ本題に迫って来た様子。
 これからどうなって行くのでしょう。



 10月16日
 最強の天使  作:まはら 三桃

 転校を間近に控えた中学3年生の周一郎が、友人や家族とのつな
 がりを確認していく。
 子どものころの記憶で思い込んでいたことが、15歳という “今”
 になって向き合ってみると、違っていたりする。周一郎がそんな戸
 惑いを経験しながら、新しい自分の見方を一つずつ獲得していく様
 子に温かい気持ちになりました。
 今までに読んだこの作者さんの作品とは、少し違う雰囲気でした。



 10月14日
 オン・ザ・ライン  作:朽木 祥

 高校でテニス部に入部した侃<かん>の友情と憧れ、そして悲しみ
 と再起の物語。
 光がきらめくような前半を眩しい気持ちで読み、突然の事件に大き
 なショックを受けてしまいまいした。辛くて、最後まで読めないか
 と思いましたが、温かく素朴な人間関係の中で心を回復していく主
 人公と一緒に、わたしも癒されながら読み終えることができました。



 10月10日
 林業少年  作:堀米 薫

 林業を営む祖父を持つ小学生の少年 喜樹と家族の物語。
 現代の林業経営の難しさをさらりと盛り込みながら、家族の中の感
 情の行き違いと関係の修復が描かれています。
 会話に出て来る方言が温かく、また「家督孫」「相対」など、あま
 り馴染みのない言葉に伝統の重みも感じました。
 喜樹のまっすぐで素直な性格が、物語を明るく爽やかにしていると
 思います。



 10月8日
 鉄のしぶきがはねる  作:まはら 三桃

 工業高校1年生唯一の女の子が主人公。
 この作者さんの作品を読むのは2冊目ですが、どちらも子どもたち
 の気持ちを優しく、大切に描いていて、とても好きです。
 場面の描写に詳細な取材をされていることがうかがえて、すごいな
 あ、と思っています。



 10月5日
 丕緒の鳥  作:小野 不由美

 「十二国記」シリーズの短編4編が収録されています。
 王の物語ではなく民の物語は、空しく辛い現実を描いています。
 でも、その中で人々が希望を見出し、それぞれが何かに託していく
 行動に、心が強く引きつけられます。
 十二国という世界の完成度の高さも素晴らしいのですが、それをよ
 り現実的に感じさせるのは、人々の心がわたしたちが共感できるリ
 アルさを備えているからではないかと思います。



 10月4日
 エンド・ゲーム  作:恩田 陸

 不思議な能力を持つ一族の女性が主人公。
 読み進むうちに、何が真実で、何がそうじゃないのかが分からなく
 なってくる。
 けれど、その中で唯一信じられるものは・・・という結末が良かっ
 たです。



 9月29日
 明るいほうへ  詩:金子 みすゞ

 金子みすゞさんの詩集を読むのは初めて。
 副書名に入っている「童謡集」という言葉のとおり、口ずさむのに
 ちょうど良い語呂とリズム感のある作品ばかりでした。
 読んでいるときに、心がふわりと何かに触れたような感じがしまし
 た。



 9月28日
 ノエル先生としあわせのクーポン  作:シュジー・モルゲンステン

 最終学年のクラスで太った年配の先生が担任になってがっかり…と
 いうところから始まるおはなし。
 ノエル先生ののんびりした雰囲気と、ユーモアと夢のあるクーポン
 の組み合わせがとても良かった。
 こんな先生がいたらいいのに。



 9月27日
 リキシャ・ガール  作:ミタリ・パーキンス

 バングラデシュの10歳の少女ナイマが自分の道を見付ける物語。
 貧しい村の人々の暮らし、女性の置かれている状況など、悲しい現
 実から物語は始まりますが、すでに始まっているという改革に、未
 来への希望が見えて、爽やかな気持ちで読み終わりました。
 お祭りの日に玄関先に描くというアルポナという絵を見てみたいで
 す。



 9月22日
 発電所のねむるまち  作:マイケル・モーバーゴ

 突然、 “ここに原子力発電所を造る” と告げられた人々の困惑と
 悲しみを、少年の目を通して語っています。
 大人になってその町を訪れた主人公に、その町の人が言った言葉
 が、むなしく心に残りました。



 9月20日
 金色の影  作:L・ガーフィールド、E・ブリッシェン

 ギリシア神話を、その同時代に生きた吟遊詩人の旅を軸にして語り
 直した作品。
 神のおこないを語る詩人が、実際に神を見たいと願い、あと一歩の
 ところで届かず落胆する。その繰り返しの旅に伝説が絡んで、以前
 に読んだ神話物語よりも、豊かで瑞々しく感じました。



 9月17日
 グッバイ バルチモア  作:那須田 淳

 1年前に亡くなった親友に面影が似たロボット・ピッチャーに出会っ
 た中学2年生の遼の物語。
 詳しい心理描写は多くはないのですが、遼の行動から、彼のさまざ
 まな感情や想いが伝わってくるようでした。



 9月13日
 ふたつの月の物語  作:富安 陽子

 親を知らずに育った二人の14歳の少女が出会い、自分たちの過去
 に隠された秘密を知る。
 今までに読んだ富安陽子さんの元気の良い物語とはまったく違う雰
 囲気の作品。
 酒井駒子さんの美しい絵の装丁が似合う、静かで物悲しく、それで
 も希望のある結末の物語でした。



 9月9日
 図書館の神様  作:瀬尾 まいこ

 高校時代の出来事がきっかけで、生きることの意味を見失ってしま
 ったような主人公が、採用された高校で、興味のない文芸部の顧問
 に…というところから始まる物語。
 “べつになりたいわけじゃなかった教師” という主人公の視点によ
 る授業の風景が、なんだか面白い。文芸部唯一の部員 垣内君と
 の温度差が縮まって行くやり取りは、本を読む楽しみの可能性を広
 げてくれた。



 9月4日
 ひとりたりない  作:今村 葦子

 事故で姉を失った少女の目から、家族の悲しみと危機を描いた物
 語。淡々と静かな調子で語られる文章が、ショックや深い傷を見な
 いようにしているように感じます。
 一家の危機を知り、面倒を見に来てくれたおばあちゃんのバックアッ
 プが素敵でした。



 9月2日
 希望への扉 リロダ  作:渡辺 有理子

 タイにあるミャンマー人難民キャンプで暮らす少女が、新しくでき
 た図書館で、自分たちの希望を見出す物語。
 作者は実際に図書館づくりの支援に関わった人。
 紛争のむごさ、悲しさと同時に民族間の争いの難しさを、少女の視
 点から描いていて、心の中にすとんと入って来ました。
 自分たちの言葉で書かれた本を読めることを喜び、将来への希望を
 見出した人々が、安心して祖国に帰る日が来ることを願います。



 9月1日
 夜の光  作:坂木 司

 『ウィンター・ホリデー』に続き、坂木司さんの作品を。
 4人の高校生のそれぞれの戦いの物語。+謎解き。
 敵と言っても、相手は彼らを取り囲む環境に潜む考え方や常識。
 孤独な戦いの裏には誰かを思う心、何かを求める心が潜んでいて、
 そのきらめきが懐かしくてまぶしい。4人が言葉にしなくてもお互
 いを心の支えとしていることは、愛しく感じます。
 久しぶりに眠気を吹き飛ばす物語でした。



 8月28日
 信ぜざる者 コブナント 破滅の種子 上・下
                 作:ステファン・ドナルドソン

 病のために家族に去られ、差別にさらされる生活を強いられた主
 人公コブナントが、招き寄せられた異世界を旅する物語。
 異世界を自分の悪夢だと信じることが狂気から逃れる方法だと信
 じる主人公がもどかしく、最終的にどうなるのか気になりながら、
 結構一気に読みました。
 誤植が多いような気がしたことと、文章が分かりづらい部分があ
 ったことが、少し気になりました。



 8月9日
 ウィンター・ホリデー  作:坂木 司

 チェックしていた作者さんの作品。読み始めてすぐにほかの作品
 の続編だと気付きましたが、特に不都合はありませんでした。
 元暴走族という主人公の設定上、ぶっきらぼうな言葉で語られて
 いますが、全編にわたって優しさに満ちていて、温かい気持ちに
 なりました。誰でも誰かを幸せにできるのだと信じる勇気をもら
 った気がします。



 8月7日
 泣き童子 三島屋変調百物語参之続  作:宮部 みゆき

 お気に入りのシリーズです。
 変わり百物語の聞き手となって約一年。おちかちゃんの口上も板
 に付いてきました。
 黒白の間で語られる物語の不思議さ、恐ろしさはもちろんですが、
 その合間の出来事も興味深く、これからも続きそうなので、今後
 の展開が楽しみです。



 8月2日
 かくれ山の冒険  作:富安 陽子

 不思議な黒猫に異世界へと誘い込まれた尚の冒険。
 普通の、自信のない子どもが、「キミにしかできない」と言われたら
 きっとこう思うよね…と、しみじみ思いました。



 7月31日
 11をさがして  作:パトリシア・ライリー・ギフ

 文字の読み書きに障害のある少年サムが、自分の出自に疑問を抱
 き、真実を追い求める物語。
 サムの不安は、「自分は今の幸せなこの場所にいるべきではないの
 ではないか」、ということ。彼を思いやる周囲の人々が、彼をます
 ます悲しくさせるというのは、切ない展開です。でも、最後は幸せで、
 前向きな気分で読み終えられる、気持ちの良い物語でした。



 7月29日
 きつねのはなし  作:森見 登美彦

 図書館で作者さんのお名前が気になったので、借りてみました。
 京都を舞台にした怪奇譚4作品が収録されています。
 現実世界に魔が忍び込んだような物語は好きなので、一気に読ん
 でしまいました。
 この作者さんのお名前を何で見たのか調べたら、『夜は短し歩けよ
 乙女』という作品でした。ずいぶん前に本屋さんで見かけて、気に
 なりながらも忘れていました。今度はしっかり覚えました。



 7月24日
 ハンナの記憶  作:長江 優子

 戦争中だった祖母の女学校時代に、混血の親友がいたことを知った
 波菜子が、その少女ハンナがどうなったのかを調べて行く物語。
 祖母とハンナが隠れて続けていた交換日記、年を取った祖母の言
 動。悲しくもあり、美しくもあるそれらを追いながら、中学生の波
 菜子の日常も織り交ぜた物語は、小さいながらもキラキラと流れる
 小川のような印象でした。



 7月23日
 K町の奇妙なおとなたち  作:斉藤 洋

 「わたし」が語る子ども時代の不思議な話の短編集。
 不思議で、少し怖いできごとたちは、 “子どもだからこそ”「平
 気だった」、あるいは「気味が悪かった」、でなければ……。
 本当にあったできごとのような気がしてくる物語集でした。



 7月21日
 きみが見つける物語 友情編  作:坂木 司 ほか

 10代の読者ために編まれた5人の作家のアンソロジー。
 このうち4人は初めて読む作家さんです。
 どれもとても素敵な物語で一気に読み切りました。
 次は坂木司さんの「ひきこもり探偵」シリーズを読んでみたいです。



 7月20日
 地球の静止する日  作:レイ・ブラッドベリ ほか

 古いSF映画の原作を集めた中短編集。
 「殺人ブルドーザー」という作品中の、巨大なブルドーザーとショベ
 ルカーの戦いのシーンが迫力があっておもしろかった。



 7月13日
 マルドゥック・フラグメンツ  作:冲方 丁

 お名前が珍しい作者さんなので、気になって読んでみました。
 人気シリーズのストーリーの隙間を埋める短編を収めてあるようで
 す。戦闘シーンは斜め読みになってしまいましたが、全体の雰囲気
 が好きです。



 7月5日
 ミンのあたらしい名前  作:ジーン・リトル

 小さいときに捨てられた少女ミンが、自分の居場所を見付ける物
 語。
 新しい生活の戸惑いの中で、ふいにミンを襲ってくる怒りの感情が、
 自分にぶつかってくるような気がします。
 でも、読み終わると心がほっこりと温かくなって、他人の優しさを信
 じられる気分になりました。



 7月1日
 部活で俳句  著:今井 聖

 どこかで紹介されていたので借りてみました。著者は男子高校の先
 生。
 顧問をしている俳句同好会にダンスをやりたい生徒をむりやり入部
 させ・・・、というエピソードから始まる俳句の入門書。
 ダンスと俳句のコラボレーションというアイデアも楽しいけれど、彼
 等が実際に作った句の中にじーんとくるものもあり、読んでみてよか
 たと思いました。



 6月24日
 精霊の守り人  作:上橋 菜穂子

 バルサとチャグムの物語の第一巻に戻りました。
 背景として描かれている世界の現実味、というか、違和感なく入り込
 んでいけるところが、この作者さんのすごいところなんだなあ、とあ
 らためて思いました。
 この世界も、バルサとチャグムそれぞれの物語もどっしりと厚みがあ
 り、何度読んでも “良い作品だなあ” と思います。



 6月20日
 願かけネコの日  作:那須田 淳

 スカイエマさんの絵に惹かれて手に取りました。
 とても素敵な物語でした。
 願かけをした帰りに足を滑らせて死んでしまった中2のコースケ
 が、神社の神様のはからいで、願いをかなえるための時間を与え
 られる。
 軽い文体が中学生らしくて明るく、 “死” と向かい合っている設
 定ではあっても、悲壮感がなくて気持ち良く読み進むことができま
 した。
 中学生らしい意地とプライドにも、思わず共感してしまいました。
 ほかの作品も読んでみたい作者さんです。



 6月19日
 夜行バスにのって  作:ウルフ・スタルク

 久しぶりに読んでみました。
 “強烈に” というわけではないのですが、長く心に残ります。
 父親の愛情を少しうっとうしく感じながらも、父の気持ちを思って、
 それを喜んでいるふりをする、大人になりつつある少年のおはなし。



 6月18日
 ラブ&ランキング!
 イケテナイ女子とオレサマ男子の無敵な恋  作:花形 みつる

 学校生活を上手に切り抜けて行こうと思っていた月子が、クラスで
 一番ドジな女子 ヒナコになつかれて・・・。
 面白かった!
 この作者さんは、学校の微妙な人間関係を描くのがとても上手だと
 思います。そして、視線が優しい気がします。
 宮尾和孝さんの絵も、かわいらしくて似合っていました。



 6月16日
 見習い幻獣学者ナサニエル・フラッドの冒険
    2 バジリスクの毒  作:R・L・ラフィーバース

 最初の冒険から帰るひまもなく次の冒険へ。
 行方不明になったナサニエルの両親、大切な本を狙う人物などの謎
 に、次の巻へと誘われます。



 6月15日
 蒼路の旅人  作:上橋 菜穂子

 タルシュ帝国の密偵ヒュウゴによって誘拐されたチャグムの物語。
 『炎路を行く者』のあとがきに、作者さんが出版の順序について説
 明をされていました。『蒼路の旅人』を先に読んでほしかったので…
 と。
 今回の再読で、その意味が、よく分かりました。
 でも、知っているからこそ深く味わえる部分もあると、今は感じてい
 ます。澄んだ主旋律に、ゆったりとした伴奏がついたような印象。
 最後に困難な決断をしたチャグムと短槍使いのバルサが再び交わ
 る物語『天と地の守り人』へ、GO!



 6月12日
 虚空の旅人  作:上橋 菜穂子

 『炎路を行く者』を読んだので、その主人公ヒュウゴがかかわる皇子
 チャグムの物語を読み直したくなりました。
 以前は大急ぎで読んだので、今回はじっくり・・・と思いましたが、や
 っぱり先が気になって、大急ぎになってしまいました。
 14歳という少年の身で、皇位継承者として果たさなければならない
 役割をこなしながら、父に憎まれていることを知っているチャグムの
 悲しみが、胸に迫ります。ひとときでも、一人でも多く、心を許せる
 相手と時間が彼に訪れるようにと、願いながら読みました。



 6月11日
 晴れた日は図書館へ行こう  作:緑川 聖司

 図書館が大好きなひとが書いたんだなあ・・・、と感じる物語でした。
 図書館のサービスや困っていることをストーリーに織り込んで、物語
 を楽しみながら、図書館を身近に感じるような仕組み。
 歩いて10分くらいのところに、図書館があるといいなあ、と思いま
 した。



 6月9日
 白狐魔記 蒙古の波  作:斉藤 洋

 不思議な術を使えるようになったきつね 白狐魔丸の物語、第2巻。
 今回は鎌倉幕府と2度の元寇の時代です。
 白狐魔丸の目を通して見ると、武士の世は戦いに満ちていて、無常
 感でいっぱいです。
 それを一歩離れた立場で観察し、ときどきは巻き込まれながら、気
 持ちの通じる人間と話したり、ときには誰かを助けたりします。
 きつねとして生活すれば衣食住に困ることがないので、白狐魔丸に
 は欲がなく、それが若いきつねの気楽さとマッチして、物語を軽く、
 読みやすくしていると思います。



 6月7日
 怪物ガーゴンと、ぼく  作:ロイド・アリグザンダー

 ファンタジーの王道のような「プリデイン物語」、嵐のような革命と
 愛の「ウエストマーク戦記」と読んできて、この作者さんの作品は
 間違いなく面白いと思っていたのですが、この本は、手に取るの
 を迷いました。
 今は読んで良かったと心から思っています。
 家庭教師代わりの年配の女性と主人公が、お互いに「ザ・ガーゴン」
 「ザ・ボーイ」と信頼と愛情を込めて呼び合う関係が、じんわりと心
 に沁みます。
 原題の『 The Gawgon and The Boy 』の “ The ”には、日本語には
 表現しきれない意味が込められているのだなあ、と思いました。



 6月5日
 見習い幻獣学者ナサニエル・フラッドの冒険
    1 フェニックスのたまご  作:R・L・ラフィーバース

 探検家の両親を亡くした10歳の少年が、幻獣学者であるフィルお
 ばさんの助手として冒険の旅に出かけるシリーズ。
 第1巻目らしく、登場人物の紹介と最初の冒険がテンポ良く進んで
 行きます。いくつかの謎はこれからのストーリーへと続き、挿画も
 かわいらしくて、2巻目以降も気になります。



 6月3日
 バビロンまでは何マイル 上・下 作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

 ファンタジーの勢いがついて、絶対的に面白いダイアナ・ウィン・ジョーンズ
 さんの作品を選びました。
 パラレルワールドと、いくつもの出来事が大きな騒ぎの中で解決す
 る楽しさと、恋のエッセンスと……、とにかく大満足です。
 最後に作者さんの訃報が載っていて、もう新しい作品が出ないのか
 と思うと、とても残念な気分になりました。
 これから以前の作品を読み返して行こうかな、と思っています。



 5月30日
 青い城  作:L・M・モンゴメリ

 何度読んでも面白くて、胸が痛いほど感動します。
 森の美しさとユーモアに満ちた恋愛小説です。



 5月25日
 炎路を行く者  作:上橋 菜穂子

 「守り人作品集」として、本編完結後に出版された本です。
 物語の時間的には、本編の途中にあたります。
 物語そのものが素晴らしいのはもちろんのことですが、出版に際し
 ての上橋菜穂子さんの思いを綴られた「あとがき」も心に残りまし
 た。
 購入途中になっていたシリーズ本編を買いに行きました。



 5月23日
 流れ行く者  作:上橋 菜穂子

 守り人短編集。
 『なつかしく謎めいて』を読んだら、久しぶりに本格的なファンタ
 ジーを読みたくなって再読。
 厚みのある世界観と物語に、大きな満足感に浸っています。



 5月19日
 走れ、セナ!  作:香坂 直

 走ることが大好きな5年生の少女 セナが主人公。
 クラスの席替え、学校の陸上クラブの解散問題、友達と違う家庭環
 境など、セナの心は不安定に揺れ動きます。そんな不本意な状況の
 中で、周囲の大人や友人の隠された一面を発見し、自分の行動を
 見つめ直していく過程が細やかに描かれていてとてもよかったです。



 5月17日
 なつかしく謎めいて  作:アーシュラ・K・ル=グウィン

 『ゲド戦記』の作者による連作短編集。
 飛行場の待合室から別の次元に旅行をする方法が発見され、作者
 がそれによって訪問した世界の訪問記、とういう形で進みます。
 それぞれの次元にはそれぞれの人々の姿、言語、習慣、環境など
 があり、その完成度の高さにはひたすら感嘆するだけです。 『ゲド
 戦記』のアースシーの世界は、この作者さんの才能のほんの一部に
 過ぎないのだと思い知りました。
 ユーモアのある軽めの文章も、細密な挿絵も物語に合っていて、一
 冊まるごと楽しめて大満足です。



 5月6日
 白狐魔記 源平の風  作:斉藤 洋

 白狐魔記第一巻。
 人間に興味を持った若いきつねが、人間の話を聞いて白駒山の仙
 人に弟子入りし、白狐魔丸という名前と人間に化ける力を得る。
 人間に殺されそうになった経験を持ちながら、人間と話すことで人
 の心を知り、親しみを感じていく、きつねのおおらかさと優しさが
 好きです。
 仙人ときつねのやりとりも微笑ましくて、楽しい。



 5月4日
 いつも いつまでも いっしょに!  作:フース・コイヤー

 オランダの児童文学作品。
 副題「ポレケのしゃかりき思春期」
 11歳の少女ポレケが友人や家族との関係の変化に戸惑い、自分
 がどうするのかを考えて行く物語。
 オランダの習慣や政治的な部分の日本との違いに少し驚きました。



 5月1日
 アーサー王ここに眠る  作:フィリップ・リーヴ

 吟遊詩人に助けられた少女グウィナの目を通して、アーサー王の伝
 説が作られて行くさまを描いた物語。
 吟遊詩人の口を通して、単なる戦いが輝かしい功績になり、乱暴者
 の武将に過ぎないアーサーが伝説の勇者となる、という過程が現実
 的に感じられて面白いです。
 子供から少しずつ大人になっていくグウィナの想いが、さまざまなで
 きごとの間に控え目に語られて、深く印象に残る物語でした。



 4月30日
 星を継ぐもの  作:ジェームズ・P・ホーガン

 月で見つかった5万年前の宇宙服を着た人間の遺体の謎を解き明
 かすSF小説。
 全地球規模で各分野から精鋭の学者・技術者を集め、それぞれの
 研究や分析を集積していく過程が、緊張感があって面白かった。
 それぞれの立場から対立する意見が生じ、それを互いに曲げない
 科学者のプライドもなんとなく納得できる気がします。
 ちょうど新聞で月に関する本を紹介していたので、そちらも読んで
 みようかな、と思いました。



 4月24日
 つづきの図書館  作:柏葉 幸子

 小さな図書館の司書に採用された主人公が、本から出て来てしまっ
 たキャラクターたちのために、それぞれの本を読んだ子がどうなった
 かを探すという連作。
 児童書コーナーにありましたが、どちらかというと大人向けの作品だ
 と思います。もちろん、子どもが読んでも楽しいと思いますが。
 最後はしんみりと、読後感に浸りました。



 4月18日
 シノダ!樹のことばと石の封印  作:富安 陽子

 キツネ一族の血を引く三兄妹が、迷い込んだ世界で事件を解決する
 物語。
 落ち着いた筋の運びと文章で、とても読みやすく感じました。
 大場賢也さんの描く子どもたちの絵も、この作品の雰囲気ににピッ
 タリです。



 4月16日
 リトル・ソルジャー  作:バーナード・アシュリー

 アフリカの氏族間の紛争で少年兵として戦っていた少年が、ロンド
 ンのある家庭に引き取られてからの日々を描いています。
 主人公のカニンダは、実の家族が殺されたときのことが忘れられ
 ず、ロンドンに来てからも、 “敵対する氏族を殺す” という目的か
 ら離れることができません。
 巻末に翻訳者のさくまゆみこさんの子どもの兵士についての解説が
 あり、この物語が単なるフィクションではないことに胸が痛みます。
 カニンダの最後の決断に希望を託したくなる物語でした。



 4月13日
 やまんば娘、街へゆく  作:村山 早紀

 副題 由布の海馬亭通信。
 久しぶりに村山早紀さんの本が読みたくなって、借りて来ました。
 主人公は「やまんば」とは言え、山の神の娘、17歳の由布。10年前
 に行方不明になった父(人間)を探すため、街に家出をしています。
 わたしがこの作者さんに惹かれるのは、たぶん、人の持つ “悲し
 み” を見つめながら、 “幸せ” を描いているからだと思います。
 読み終わると、自分の人生や “今” が、大切なものに思えます。



 4月1日
 十歳の気持ち  作:堀田 あけみ

 かわいらしい絵に惹かれて手に取りました。
 十歳になったリョーコが経験する周囲の変化と戸惑いを、やさしく、
 ふんわりと描いています。
 恋と友情、おしゃれをしてみたい気持ちなど、 “なるほど、10歳だ”
 と頷いてしまいます。
 キャンプの夜に、お父さんとリョーコが話をする場面が特に印象に残
 りました。



 3月28日
 華氏451度  作:レイ・ブラッドベリ

 いつか読まなくちゃ、と思っていた本です。
 “焚書官” という仕事を、消防士の仕事とそっくりに設定してあると
 ころが、ブラックユーモア…というのかな、すごいなと思います。
 人々が知的なことを考える暇がないように流され続けているラジオ
 やテレビの番組の気味悪さもありますが、実際に、今の日本でも、イ
 ンターネットの世界にはまりこんでいる人がいる現実を思うと、この物
 物語を簡単に笑い飛ばすことができないところがあって、なんとも言
 えない気分になります。



 3月25日
 アヤカシ薬局閉店セール  作:伊藤 充子

 小さな薬局を営むさくらさんが、年をとったので店を閉店しようと
 決心するところから始まる連作短編集。
 登場するあやかしはユーモラスで、さくらさんのケチな性格も面白
 い。
 気軽に楽しく読めました。



 3月21日
 鬼の橋  作:伊藤 遊

 これもサイトの更新用に久しぶりに読みました。(でも、次のテーマ
 には無理そうでした。)
 主人公の篁、父を亡くした浮浪児の阿古那、元オニの非天丸、死し
 てもなお都を守る任を解かれない坂上田村麻呂将軍。それぞれの
 悲しみと願いに、何度読んでも胸が痛くなります。
 最後は優しい結末を迎え、爽やかな気持ちで読み終えることができ
 てほっとしました。



 3月19日
 男子★弁当部 オレらの初恋!?ロールサンド弁当!!
                作:イノウエ ミホコ

 去年、書店で見付けて、人気がありそうだと思っていたシリーズの第
 2巻。
 第1巻を読んでいないので、弁当部が結成された経過は分からない
 のですが、登場人物が気持ちがよくて、楽しく読めました。



 3月10日
 影との戦い  作:アーシュラ・K・ル=グウィン

 このサイトの更新のために、久しぶりに読みました。
 読み直してみて、やっぱりすごい作品だと思いました。



 3月3日
 たまごを持つように  作:まはら 三桃

 中学の弓道部に所属する少女・少年の物語。
 タイトルは弓の握り方から。
 不器用な主人公が、友人や先輩、ライバルたちに憧れたり、嫉妬し
 たり、落ち込んだりしながら、自分の進み方を見付けて行きます。
 矢を射て的に当たる音、射場に入り構える動きなど、「 “静” であ
 りつつ “動” 」の世界が感じられる文章が印象的でした。



 2月25日
   作:宮部 みゆき

 収められている4つの短編は、ほかの短編集で読んだことがありま
 した。
 時代小説で人情話が軸になっているので、ぞっとする部分はありま
 すが、怖さはそれほどでもありません。
 でも、平気だと思って寝る前に読んだら、怖い夢をみてしまいまし
 た・・・。



 2月18日
 作戦NACL  作:光瀬 龍

 友人がこの作者さんを勧めてくれたことを思い出して、児童書の
 棚にあった本を手にとって ――― 思い出しました! このシ
 リーズは小中学生のころに読んだのです!
 今のSFロマン文庫は1986年発行ですが、もとのシリーズがあり、
 ラインナップも変わっていないみたいです。
 『宇宙怪獣ラモックス』『アーサー王とあった男』『うしなわれた世
 界』『迷宮世界』などは、わたしがその後、SFに没頭するきっか
 けになった作品です。(『ラモックス』は大人になってから、原作
 を読みました。)
 30冊のシリーズのリストを見て、とてもなつかしくなりました。



 2月13日
 ミス・カナのゴーストログ4 つばめの鎮魂歌
                      作:斉藤 洋

 夏菜が初めて自分から霊の手助けをしようとするお話。
 霊の遺した思いを聞いたり、親友やボーイフレンドが自分の将来
 を見据えてほかの学校に進学したりするなかで、夏菜がこれから
 どんな決意をして、どんな道を歩むのか、気になります。



 2月9日
 マウントドレイゴ卿/パーティの前に  作:モーム

 光文社の古典新訳文庫で読みました。
 いわゆる<古典>と言われる作品を読む、というのが自分に課し
 た課題なのですが、あまり進んでいません。
 で、今回、手に取ってみたのですが・・・面白かったです。
 6つの短編、どれも好きです。真面目さの持つ可笑しさ、どんで
 ん返し、個人の悩みの哀れさ・・など。ちょっと斜めから世の中を
 見ているような。
 読んでみないと分からないものですねえ・・・。



 2月6日
 帰命寺横丁の夏  作:柏葉 幸子

 5年生の和弘が、この世に戻って来た幽霊の少女を守ろうと奮闘
 する物語。
 人として普通の生活をしている幽霊の存在を受け入れるまでの葛
 藤と、その命の儚さを知り、彼女のために今までにない行動力を
 発揮する和弘の思いに感動しました。
 物語の中に挿入されているもう一つの物語も、ストーリーに関連
 がありつつまったく別の物語で、全体の佐竹美保さんの挿絵とと
 もに、とても心に残りました。



 1月31日
 わたしのママはしずかさん  作:角野 栄子

 6年生のリコから見たママ(しずかさん)のお話。
 とにかく笑いました。
 けれど、単に面白いだけではなく、大人になりかかっているリコ
 としずかさんの関係が、少しずつ更新されて行く過程がじんわり
 と心に沁み込んできます。
 「魔女の宅急便」シリーズのキキを思い出し、この作者さんの子
 どもから大人へと自立していく少女の戸惑いと揺らぎの心を描く
 才能(なんて言い方は失礼でしょうか?)は素晴らしいなと思い
 ました。



 1月29日
 ミス・カナのゴーストログ3 かまいたちの秋
                      作:斉藤 洋

 今回は動物虐待の事件を解決。
 機転が利き、行動力もある俊が、学校ではおとなしくて目立たな
 い生徒だった。心に何かを決意すると、人は大きく成長をするの
 かなあ、と思った。特に十代の時期には。



 1月27日
 真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生
                  作:大沼 紀子

 シリーズ3作目。
 自分は “普通” と言われる範囲からはみ出している、と納得
 している人々が、それぞれに “普通” の世の中との接し方を
 模索している。
 高校生の主人公が、世話になっている二人から心配されて、その
 たびに自分が心配されていることに気付く、という部分に、主人公
 の生い立ちを思って淋しくなります。けれど同時に、人の温かさ
 を知って行く彼女が、これからどう変わって行くのか楽しみでも
 あります。



 1月20日
 夜の小学校で  作:岡田 淳

 小学校の夜警の仕事についた主人公が体験する不思議なできごと
 を描いた短編集です。
 いかにもこの作者さんらしい、優しくて、楽しくて、心があたた
 かくなる物語ばかり。何度でも読み返したくなる本です。
 わたしは、答えを書く使命を持ったボールペンのお話が特に気に
 入りました。



 1月14日
 森に還る日  著:星野 道夫

 アラスカに魅せられた星野道夫さんの写真とエッセイ。
 小型の本は珍しい気がして手に取りました。
 星野さんの写真は、どれを見ても、自分が立っている場所とは違
 うところに連れて行かれたような気持ちになります。





     新しいつうしんへ

     2014年  2013年

     2012年  2011年  2010年  2009年  2008年

     2007年  2006年  2005年  2004年

本のへやへ  入口へ