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馬と旅行 特別編 モンゴル 〜1〜

モンゴル乗馬体験記

OPEN AUG.29.2001

☆小さい写真をクリックすると、他の写真と解説に飛びます☆

いざモンゴルへ☆

 乗馬を始めてから約10年、やっと念願のモンゴルに行くことが出来ました。短かい旅でしたけど夢のように楽しかったです。
 横浜在住の私は、羽田空港から関空へそしてモンゴルへと飛びました。関空からウランバートルへは約4時間と、ヨーロッパやアメリカ旅行が多かった私としては、あっという間のフライトです。
 空港につくと窓から見えるのは大草原、そしてゲルも点在し馬らしき点々が遙か彼方に見えています。すでにそこで舞い上がっている私(笑) ガイドさんの車に乗って空港の敷地を出たとたん、大草原が目の前に広がり、馬が草をはんでいます。「馬がいる〜〜」と思わず口にする私は「これからいくらでもいるよ」と笑われてしまいました。私達は旅行社のパッケージツアーに申し込んだのですが、幸運にも他の人はいなくて、常に3人だけの行動になったので、とてものびのび楽しむことが出来ました。
 1日目はホテルに泊まって、2日目に車でツーリストゲルへ移動しました。途中シベリア鉄道の線路があって、電車が通るのも見ることが出来ました。

ゲルに泊まる☆

 モンゴルに来た楽しみは、馬に乗ることはもちろんですが、ゲルに泊まるのも期待していた事の一つです。今回は旅行社のツーリストゲルですが、なかなかの物でした。外側は真っ白なシートですが、中は赤く塗られた綺麗な模様のモンゴル式ベッドと小さいテーブルとイス。ストーブは薪です。明かりは天窓からの光。入口はみんな南に向いています。モンゴルの大平原で方角が分からなくなったら、ゲルを見ればわかるんだって。
 「ゲル」(中国ではパオ)というのは遊牧民の移動式住居で、木の骨組みとフェルトなどで出来ています。私は草原の中にあるのを想像していたのですが、ウランバートルの街にもたくさんのゲルを見かけました。ホテルの外にも、アパートの間の敷地にゲルが立っているし。特に街の周辺部には、塀で土地を囲ってゲルを建ててすんでいる人が、大勢いるようです。モンゴルの人は定年退職したら、ゲルを建てて住みたいと言う人が多いそうです。ちなみに、空港でパスポートに押された出国のスタンプはゲルがデザインされていました。

わくわくの大草原☆

 大草原を自動車で走ること1時間と少し、とっても良い天気で空気は美味しい。途中「オボー」と言う土地の神様が有ったので、周りを3回まわって旅の安全を祈りました。わ〜〜馬だ〜〜牛だ〜〜羊だ〜〜お花だ〜〜とはしゃいでいる私達をみて、ガイドさんは後はまっすぐだからと、ゲルの手前で車から降ろしてくれました(実はうるさかったのかな?)標高は1500m位なので日本の野原でみるような花とは少し違う高山植物の可愛くて綺麗なのがたくさん咲いていました。フィルム一本お花を撮ってしまいましたわ(笑)前の日まで雨が降っていたとかで、緑は元気に生き生きとしていました。

 ゲルに着くと、いましたお馬が☆ 写真でみたのと同じ、二本の棒に渡した紐につながれて、小さくて可愛い蒙古馬達です。馬を見ると、じっとしていられない私としては、早速さわりに行きました。どの子も大人しい馬ばかり、べたべた触っても全然嫌がりません。威嚇するような子もいません。自然の中だから、蝿がいっぱいいて首をしきりに動かしていまけど、イライラしたような感じはなくて、のんびりお友達同士くっついているのでした。もっとも、観光客を載せるのにカリカリした馬は選んでこないでしょうけどね。

 馬に乗るのは昼食の後、でもお昼までには時間があるので、お馬を見ていました。遊牧民のインストラクターさんとその息子が、馬を捕まえる練習をしていました。馬はまだ半分くらい放牧の状態だったのです。さすがに遊牧民の少年は乗馬が上手だなあ、と思ってみていたら、違う馬に乗り代わりあららっと思ったらコロンと落ちていました。良く見たら裸馬だったのね。さすがに裸馬に乗って馬を追うのは難しいらしいです☆

オートマチック・ポニー☆

 さてさて、蒙古馬はモンゴリアン・ポニーといわれるように、体型の小さい馬です。体高(首の付け根あたりの一番高いところ)が142p以下の馬をポニーといいます。サラブレッドは160p位ですから、だいぶ小さいですね。だから、乗るのもとっても楽です。実用にするにはこのくらいがちょうどいいと思いました。前に木曽馬に乗りましたが、高さ的には同じくらい。でも、太さが違います、蒙古馬達はもっとほっそりしていて、動きも軽快でした。もっとも、乗せて貰った木曽馬はあまりお客さんを乗せて走ったりしていないようでした。こちらの馬は、結構走らせていましたので、その辺の違いだと思います。

 今日の私のお馬は、芦毛くん。(どうも馬に名前は無いらしいんです)ブリティッシュとは調教が違うということは初めから聞いていましたから、さっきから見ている遊牧民の人の乗り方を見よう見まねです。
 旅行社のパンフには「乗馬クラブ」だ「乗馬の指導」だと書いてありますが、レクチャーはほとんど(全く?)無し(笑) 馬にまたがったら「行っていいよ」って一言。先に出発していた少年の後に着いて行けということらしい(笑)文字通り『習うより慣れろ』 ちゃんと動いてくれるかな?という心配をよそに、芦毛くんは素直に発進。加速するときは、ちょっと前に重心をかけます。または口で「チョウ!」と言う。話に聞いたときは、チッと舌打ちするような音を出すのかと思ったら、本当にそのまま言うのですね。でも、この芦毛君にはそれほど必要有りませんでした。サラブレッドに比べて当然足が短いので進みものろいかと思っていたけど、以外とさくさく進むし。減速も、止まるのも重心を後ろにするだけでOK。手綱を右左に少し引くだけで、方向も素直に変えてくれました。今回の旅で4頭乗った中では一番素直で大人しい子でした。でも、実は駈歩が出なかったのね。早歩が凄く速い。前の少年の駈歩にぴったりついて、早歩をしていました。手綱のあまりを肩鞭代わりにしてみたんだけどダメで、少年が持っている鞭が欲しいと言って、もらってしまいました(笑) 鞭と言っても、木の枝です。「こうすればいいんだよ」と少年は近くの枝を折ってまた自分の鞭にしました。なるほど、また一つ覚えたぞ。
 とにかく、この芦毛くんの乗り易さには、とても感動したのでした。こんなに乗り手にたいして好意的に動いてくれるなんて!! モンゴルのお馬さんが大好きになりました、来て良かった☆

 ちなみに馬に乗られない方のために一言解説しますと、鞭はただビシバシ叩くための物ではなく、合図にも使う物です。また、持っているだけで馬がぴりっとやる気を出してくれたりもするのです。競馬でも良く見ると、叩かないで振り回しているだけの事も有るでしょう、あれを「見せ鞭」と言ったりします。もちろん叱るときは、痛い位にビシッとやりますけど…。

初心者奮闘中☆

 今回一緒に行ってくれた、Yさんは乗馬は全くの初めてです。Pさんは去年モンゴルで乗ったのが初めてで、それもゆっくり常歩と早歩をしたくらい、つまり今回が2度目ということです。
 このお二人、かなりセンスが良くて、Yさんなんて初めてなのに、一人でしっかりみんなについて来れるのでした。(他のツアーの人たちは馬を引いてもらっていました)ツアーが私達3人だけということもあり、のんびりと初日の足慣らしで、足下に咲いているお花や景色を見、美味しい空気を堪能しながら、のんびり歩きました。馬たちは、「綺麗な」お花より「美味しい」草の方が好きで草原の方に入っていきます。遊牧民インストラクターのOさんは道に出ろと指示しますが、さすがに馬の意思には勝てず草の上を歩いています。でもお馬さん達も、あんまりそれるとOさんに叱られるし、お仕事がわかっているので前にはちゃんと進んでいきます。

 途中の折り返し地点で、馬から下りて写真を撮って、帰りは少し起伏の有る道や人のいる所を通りました。途中、学生の合宿所があって、馬で通る私達に向かって「ヒューヒュー」などとはやし立てます。先頭の少年と私はともかく後ろの2人は初心者なんだから、あまり驚かさないで欲しいなあと思っていたのですが、馬も人も難なくクリア。その後、早歩になってもしっかり馬の動きについて乗っています。すごいなあ。結局、ガイドさんの代わりに来たゲルの世話役さんの馬の方が遅れて、Oさんに追われる始末でした。
でも、後で聞いたら結構本人達は必死で、あまり周りを見る余裕は無かったみたいです。途中牛の骨が地面に有ったのも、気が付かなかったって。

お弁当持って出発☆

 翌日は一日中乗馬の日です。今日は私達3人と遊牧民インストラクターのOさん、ガイドのYちゃんが一緒です。お弁当は私達の分までOさんが持ってくれました。先生に持たせるなんて…でも、私はお水で精一杯でした。YさんとPさんは一眼レフの立派なカメラをリュックに入れて騎乗。風邪気味のYちゃんはしっかり手ぶらでした(笑)
馬はOさんとYちゃんは芦毛、Yさんは鹿毛、Pさんは栗毛、私はPさんの乗る栗毛に乗れと言われたんだけど、昨日一目惚れしたぶち馬に乗りたかったので、お願いして「ぶち子(勝手に命名。牝馬だし)」に騎乗。だって可愛いんだもん。

 さてまずは昨日と同じ道を進みます。今日は少年はお留守番(お客が多くて馬が足りなかったんだって)。私が先頭で、Pさん、Yさん、Yちゃん、Oさんのはずが、Yちゃんは世話役さんに呼ばれて、後からになりました。馬たちはやっぱり道より草の上を歩きたがります。まあ、細かいことはあまり気にせずぽこぽこ進みましょう。昨日の折り返し地点をさらに進むと、大きな岩の麓に羊の群がいました。岩の上には少年「あ、ペーターもいる!」で会話が通じる3人(笑) その先には、牛の群もいました。「けちらせ〜」とか冗談で言ったら他の2人に顰蹙を買ってしまった(^_^; もちろん、牛も人を乗せた馬も、のんびりすれ違います。ああ、いいなあこの感じ。

 その先は、道からそれて少し足下がでこぼこしたところを通りました。不整地を歩くのは、外乗の醍醐味ですね、馬が小さいので反動もそんなに大きくないし、蒙古馬は本当に乗りやすいです。動物の骨が所々に散らばっています。ここには背の低い白樺の木が生えていたので、枯れた枝をぽきんと折って鞭にしました。実は私の乗った「ぶち子」は凄く重かったのです。(そう言えば、昨日世話役さんが乗っていて随分遅れていたものね。彼も乗馬を始めて日は浅いのだそうです) かろうじて歩かせてはいますが、気を抜くと他より遅れてしまいそうになります。これは、戦いになる前に鞭でしょう(笑)というわけ。

 舗装された道路(国道だけど車はほとんど通らない)を渡って視界はさらに開けて大草原だ〜〜、と思ったら少し前に合流したガイドのYちゃんの芦毛君がゴロリ地面に寝ころんでしまいました。病気か怪我かと思って心配しましたが、ひらりと飛び降りたYちゃん、走らせたから疲れたんだよと、馬を立たせてまた乗りました。かなり遅れたので、だいぶ走らせたみたいですね。でも、疲れたからって人を乗せたまま寝ころんでしまうパフォーマンスは、蒙古馬の生命力の強さを感じさせますね(ほんとか?)

草原暴走族☆

 遙か彼方に連なる山々、足下に広がる大草原、青い空と白い雲モンゴルの空気は馬に乗るためにあるなあと感じます。目の前が開けるとさすがのぶち子も走る気になってくれて、駈歩で気持ちよく進みます。ぶち子もやるじゃん、と思っていたら後ろから白い弾丸の様に駆け抜けて行く馬一頭、Yちゃんです。疲れた馬を良くもあれだけ走らせて、馬も体格の良いテニス青年を乗せて、モンゴルの馬は本当にタフです。あっと思って、追いつこうとしたけど、全然及びませんでした。ぶち子には競争心などは全然ないみたい…。Yちゃんは都会育ちですが5歳の時から乗馬をしているベテラン、とはいえ追いつけなかったのはちょっと悔しかったぞ(笑)
 そうこうしながら、私は首から下げた「写ルンです」で写真を撮ったり、おしゃべりをしたりして、進んでいました。足下には珍しいお花が咲いていたり、遠くが一面ピンク色に見えるのはまるでレンゲ畑のようだったり、と思えばハーブ系のとても良い香りの草があったりします。また、リスの様な小動物がいて、とても素早く走っては巣穴に潜り込んだり。始めあれが有名な「タルバガン」かと思ったらこのあたりにはいないそうで、もっと小さい動物でした。〈「タルバガン」というのはモンゴルに多く生息しているシベリア・マーモットという動物で、食べると美味しいそうです。ワシや狼など肉食獣の餌になってモンゴルの自然を潤してもいるそうです。自然史博物館にもワシにつかまっているタルバガンの剥製がありました。〉

 モンゴルに行く前の心得として、乗馬技術に差がある場合、上級者が気をつけて急に走り出したりしないこと、と(当たり前ですが)ありまして、肝に銘じてはいました。でも、初心者のお二人が、以外と乗馬センスがあるし、ちょっと離れていれば以外と馬もついてこないなあ、なんて思って気持ちよく大草原で風になってしまったのは私です。ごめんなさい。後ろで何があったのかわかりませんが、Oさんが追ったのか、何かに驚いたのか、Yさんの馬が走り出し、それを追いかけてPさんの栗毛もダッシュ、私が振り向いた時には「きゃ〜」の声とともにYさんが落馬していました。空馬になって走り去る鹿毛を追いかけてPさんを乗せた栗毛はさらに加速、Yちゃんが追いかけましたがやはり、落馬してしまいました。ともに、大きな怪我はなく痣だけですんで、ホッとしましたが、私は冷や汗どころではありませんでした。

 馬から落ちるとき怪我をしない秘訣は、ダメだとおもったら潔く落ちること、だというのが両手両足の指でも足りない落馬経験の有る私の持論(そんなたいそうな物では無いけど)です。このお二人は、落馬のセンスもあったみたいで、痣にこそなっていましたが、大したダメージも無くすんだみたいです。翌日かなりの筋肉痛にはなったようですが。Yさんは馬を止める事より、ついていこうとしたけど出来なかった、という強者ぶり。Pさんに至っては、すぐに写真を撮りに(自分の足で)走り回っていましたから。
 さすがにすぐには乗れないので、落ちたその場にレジャーシートを広げて、お弁当にしました。綺麗な空気と草の香りの中で食べるお弁当はとっても美味しかったです。そのあと、みんなでゴロリと横になってお昼寝、最高の気分です。馬たちも4頭つながれたまま(Oさんが逃げた2頭を捕まえてきてつないだ)草を食べて休憩。ぶち子は「そのままで大丈夫」なんだって、本当にその場からほとんど動かないのでした(笑)この子は良く言う「絶対安全馬」だったのね。

お昼寝するのは良いけれど、周りには何も陰を作る物のない大草原の真ん中です。Yちゃんは上着をかぶって寝ていましたが、上着の無い遊牧民インストラクターのOさんは、なんとぶち子の足下に来て、馬の陰で休んでいました。日本だったら、危ないと言って叱られちゃうわよね。流石、馬とともに生きているモンゴルの人でありました。

ギャロップギャロップ☆

 午後からは、OさんとYちゃんの相談の結果、私達は2組に分かれることにしました。落馬した2人とYちゃんで、のんびり帰還組と、Oさんと私で快速走行組(笑)これは正しい選択でした。さらに馬も乗り替わります。Yさんは私の乗っていた「ぶち子」、Pさんは鹿毛、私はPさんの栗毛。帰還組は今来た道を常歩で帰ります。私達は国道を横切って反対側を大きく迂回して帰ることになりました。といっても、それは結果的にわかったことで、言葉の通じない2人は、暗黙の了解のうちに発進したのでした。何しろOさんの日本語は『右、左、ゆっくり、速く、大丈夫』の5つ、私は『こんにちは、ありがとう』のふたつ、会話にも何もなりゃしません(笑) まあ、かっこよく言えば共通語は『ホースマンシップ』というんでしょうかね、ただ、馬が好きってだけですけど。
 乗り替わってすぐに思ったこと「Pさん、ごめんね」。この栗毛君、かなりの「いけいけ野郎」(Pさん命名)で、前にいる馬は絶対抜きたい、走り出したら止まらない、という子でした(笑) はじめにOさんが私に乗れと言った意味が分かりました。
 みんなと一緒の時は、一番しんがりをゆっくり来ていたOさんも、2人になるとかなりとばして走ってくれました、風が強いこともあって、耳元でごうごう風が鳴ります。凄いスピード感。
 途中で、お友達のうちに寄ってくれて、念願のアイラグ(馬乳酒)も頂くことが出来ました。子供達しかいなかったんだけど「こんにちは」も通じなくて(発音が難しいのよ)…でも、次に使ったら返事が返ってきたから、これも収穫っと。
 さらに今までよりもっと視界の開けた丘の上、景色は素晴らしいし、この栗毛くん走るの大好きでどんどん加速するし、とにかくとっても楽しくて気持ちよかったです。馬のフルスピードのギャロップ(襲歩・競馬の走り方)も少し出来ました。実は初めてなので、良くわからなかったんだけど。もちろん足下の悪いところでは、ゆっくり歩きます。馬の球節まで浸かるぐらいのずぶずぶの湿地や足下のぼこぼこに悪いところでは、Oさんの芦毛くんの後にぴったりつけて歩きました。この栗毛くんは、ちょっと許すと何処でも走り出しそうだったので(笑) 「いい?ここなら抜いていい?走っていい?」と聞いてくるのです。何度Oさんに「ゆっくり〜」と言われたことか(笑)でも、こちらが指示すればちゃんと減速してくれる、実は気のいいお馬さんなのでした。
 日本の乗馬クラブで乗るときは、たいてい一人だし複数でも縦に並んで運動します。まして広いところで自由に走るということをしたことが無かったので、本当に馬によって違うんだということを体感しました。『走るのなら、絶対他の馬の前に出たい』という意思を見せる馬もいれば、乗り手の「進め」の命令が無ければ歩くのも面倒、と言う子もいるし、競馬やスピード競技で勝つ馬とそうでない馬の、気勢の違いみたいなものの片鱗をかいま見た様な気がします。

主張する馬たち☆

 さて、そのころのんびり帰還組は、本当にのんびり歩いていました。私達は走りながらも道中かなり道草をしたので、向こうはとっくにキャンプに帰っている物と思っていたら、途中で合流する事になりましたから(笑)
 まずお昼を食べた場所で、Yさんの乗った「ぶち子」ちゃん、「絶対安全馬(命名・藤木)」の名に恥じず(?)その場から動こうとしません。動かなければ、反動も無いから落馬の危険も無いという物。先に進んでいたガイドのYちゃんが戻ってきて、手綱を引いてやっと動き出したそうです。Yちゃんが言うには、初落馬で「ちょっと怖い」と思ってしまったのが馬に伝わったのでは、ということでした。確かに馬は乗り手や周りの人の雰囲気を察する動物ですからね。でも、手綱を引かれればちゃんと動き出す所は良心的です。もし「動きたくない」と我を張る馬だったら、鞭を使っても動きませんからね、何しろ相手は1馬力(笑)
 常歩だから景色を見る余裕も出来、お話も弾む一行に、またアクシデント。今度はYちゃんの芦毛くんが、ぴたっと止まったと思うと、ごろり〜んと寝転がってしまいました。よほどYちゃんが重かったのか、疲れが限界だったのか。「しょーがねー奴だなあ」と日本語でぼやきながら、Yちゃんは芦毛くんを立たせ、2頭の馬を引いて自分の足で歩くことになったそうです。まあね、疲れさせたって言っておきながら、行きの途中であんなに走らせたんだから…と、追い越せなかった私は、思うのであった(笑)
 かたや、Pさんの乗った鹿毛くんはとってもマイペース。適当に草を食べ、遅れたなと思うと早歩でとことこ前に出て、また草をはむ、距離が開くとまたとことこ…という具合に、つかず離れずぶち子と芦毛くんについてくるのだそうです。

 そんな楽しい一行と、爆走チームが合流し、Oさんと、そのころにはまた乗っていたYちゃんは先にキャンプへ向かい、私達3人も、のんびりペースで進む…はずだったのが、またぶち子です。Yちゃんの手が放れたら、もう動かない(笑)何を考えているのでしょうねこの子は。
 普通お馬さんたちは、行きはあまり動きたがらないけど、帰り道は加速するものなんです。へたをすると指示も無いのに駈歩になったりします。それなのに、このぶち子ちゃんはもう自分の家(?)と言うか仲間達がいるところが見えてくるのに、まだ歩きたがらないのでした。もちろん、足も何処も痛そうではありません。
 仕方がないので、今度は私が手綱を引っ張って歩きました。それにしても、モンゴルの馬たちはとても仲良しで、くっついて歩くのが好きです。つないである時も馬同士べったりくっついているし。ぶち子は甘えん坊で、歩くのがいやというよりは、引っ張って欲しかったのかも知れません。そしたらぴったりくっついて歩かざるをえないものね。

名残の騎乗☆

 旅行4日目、ゲルでの最後の日です。今日はYちゃんの提案で、キャンプからウランバートルに向かう道を、午前中馬で進み、途中でYちゃんの車に拾ってもらって帰る、ということになりました。
 名残惜しいですが、ゲルとも馬達とも、周りのお花やバッタや牛や羊達ともお別れです。私としては、遊牧民インストラクターのOさんとのお別れも本当にさみしいです。『でも、途中まではまた一緒に乗れるわ』と思っていたら、Oさんは他の客さんを見るので行かれないということです、それって…でも、もう馬に乗って進んできてしまったので、仕方がありません。実は、モンゴルの人気の観光地の一つカラコルム遺跡周辺が、「タルバガン」という動物に発生した伝染病の影響で、立入禁止となってしまったため、急遽こちらのキャンプに来る事になった人が増えたのでした。世話役さんも、大変そうでした。そんなわけで、馬たちもインストラクターさんも大忙し。一緒に来てくれたのは、もう一人の遊牧民インストラクターさん。それと、スイス人の観光客の男性と息子の2人も一緒に出発しました。

 今日私が乗っているのは、栗毛の牡馬くん。とってもたてがみが長いんです。木曽馬はたてがみが長いほど良い種馬だって聞いたけど、蒙古馬もそうなのかな? 他の馬はみんな短く切ってありました。さて、この子は種馬だけあってちょっとプライドが高い、ような気がしました。「観光客のくせに俺に命令するのかっ」って感じ(笑)「もちろん、私が騎手だもの」って、でも、喧嘩にはなりません。実はやっぱり気のいい子でした。昨日と同じ道で勝手がわかっているので、景色を目に焼き付けながら進みました。そろそろ、国道に出るころ、少し遅れていたインストラクターさんとOさんが追いついてきました。やっぱり一緒に行ってくれるのかと思ったら、スイス人の人が私達と別れてキャンプに帰るのを連れに来たのでした。残念〜〜。みんなで、さようなら、と言って別れたけどやっぱり名残惜しい……暫く進んでから、やっぱり私だけ駈歩で戻って、Oさんと硬い握手を交わしました。(後で考えると、ちょっとドラマのワンシーンの様だったわ)「Oさんありがとう、楽しかったよ、また来年も来るからね!!」って、日本語で言ってもわからないけど、気持ちは通じたと思います。Oさんも何も会話が通じないのがもどかしそうにしていました。本当に名残惜しかったけど、今度こそ本当にお別れです。来年またモンゴルに行ったからってOさんに会えるかはわからないし「一期一会」を実感してしまいました。でもね、Oさんたら投げキッスなんかするし、モンゴルの文化には無いだろうから結構西洋かぶれな奴かも知れない?(笑)

さようなら大草原☆

 そんな間にも、YさんPさん達はぽこぽこ進んでいました。私は一度駈歩を出したら、調子づいてしまって、みんなを追い越してぱかぱか走ったり戻ったりしていました。国道の方へ出て、振り返るとなんと2人とも地面に立っている!一瞬また落馬したのかと思ったら、名カメラマンのお二人は背中の一眼レフを構えて、私の写真をとってくれていたのでした(笑)ははは…
お二人とも、昨日の落馬のダメージにも関わらず、マイペースで楽しんでくれているようで良かったです。調子に乗って走っていると、国道を見覚えのある車が通り過ぎたと思ったら、また戻ってきました。キャンプで作ってくれたお弁当を乗せて、Yちゃんが追いかけて来てくれたのでした。気が付けばもう、お昼です。今度こそ本当にお馬とも大草原ともさようなら。最後にあと一周、栗色の長いたてがみをなびかせながら草原を走って、馬を下りました。ぜったいまた来るぞ、と心に決めて馬をインストラクターさんに託し、車に乗り込んだのでした。
 さよなら大草原、さよなら馬たち、また来るからね!!


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