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馬と旅行 特別編 モンゴル 2012 〜乗馬編1〜

《乗馬一日目 天の川キャンプ〜ホスターノロキャンプ》


2012年8月、2度目のモンゴル旅行に行ってきました。前回行ったときには、翌年にでもまた行きたいと思っていたのに、11年もたっていました。
ウランバートル周辺はすっかり様変わりしていましたが、郊外へ出れば、やはりおいしい空気とハーブの香り、青い空、緑の草原と山々、とても気持ちのいい旅でした。今回は、ベテランの乗り手のお友達5人。毎日40〜45キロを移動するトレッキングでした。毎日毎日緑の草原ですが、それぞれに趣が違い、決して飽きることのない風景を堪能しました。

ただし、今回は騎乗中の写真撮影は禁止という事で、馬の上からの写真は無し。前半は騎乗している写真は何もありません。とても残念でしたが、安全の為と言われれば仕方がありません。

ちなみに、何キロと言われても私はピンとこないのですが、たとえばJR東海道線で東京-熱海間が104.6キロだそうです。東京-横浜が28.8キロ、東京-戸塚で40.9キロ…って、やっぱり、分かったような分からないようなですね。

今回は5泊6日の旅で、中4日間乗馬を楽しみました。到着日は夜中にツーリスト用ゲルキャンプについて、翌朝からの乗馬日記です。長くなりますが、よろしかったらお付き合いくださいませ。


乗馬一日目 初騎乗〜ホスタイ国立公園

天の川キャンプ場(アルタンボラク)の朝は、とてもすがすがしく、期待通りのきれいな空気。川の流れる景色、咲き乱れる花や、水を飲みに来た牛の群れをしばし眺めて楽しみました。湿地なので、蚊が多いのは仕方がありありません。


今日乗る馬はまだ来ていず、待っていると向こうから、青年が数頭ひいてきました。若い子も働いているんだね、と話していたら、なんと彼が私たちを先導してくれる、遊牧民(馬官さんというらしいです)さんでした。きゃ〜〜と、おばさんたちは正直に喜びました。彼、B君は弱冠二十歳だそうですが、少し幼さを残した、シャイな青年でした。モンゴルの民族服デールを着て来てくれましたよ。

今回の私たちのお馬は、ぶち毛2頭、粕毛、鹿毛、栗毛、各1頭ずつの5頭。それに、B君と、ガイドさんで、合計7頭で進みます。毛色については、《毛色編》でご紹介しています。


モンゴルではお馬は蹄鉄を付けていません。蹄も小さいですね。お馬の分類でいうとポニーといえるほど小柄ですが、一日中人を乗せて歩いたり走ったりしていても大丈夫。とっても丈夫なお馬たちです。
お馬が割り当てられ、常歩でゆっくり出発です。鐙の長さを調整してもらったのですが、どうも少し短すぎて、初めのうち膝が疲れてしまいました。なので、あまり景色を堪能する余裕もなく、お馬との折り合いもなんとなくしっくりこないまま歩いていました。
ほかのお馬と乗り手たちは、順調に進んでいるように見えていました。が、急にKAさんのぶち毛くんが何を思ったか、砂浴びのように寝っころがろうとして膝をおり、その拍子にKAさんは落馬してしまいました。幸いけがはありませんでしたが、逃げてしまったお馬を、B君が追い回して捕まえました。急回転して右に左に逃げるのをさらに急回転で追いかける様子は、かっこいい〜と見惚れてしまいました。

そのどさくさのついでに、私も鐙を直してもらったら今度は長すぎる感じでしたが、とりあえずそのまま進みます。いつも自分の鞍でそのまま乗っているので、いざ鐙の長さを調整しようとすると意外とうまくいかないものです。実は、お昼にもう一度直してもらって、やっと落ち着きました。その時に「3センチメートル」とモンゴル語で数字を言ったら、ご飯を食べたら背が縮んだの?と運転手のBさんに笑われたけど、わかってもらえました。あいさつ以外で通じた最初のモンゴル語です。やった。

実は今回、超片言のモンゴル語を覚えて行ったんです。ただし諸般の事情から、予定より準備時間が短くなってしまい、かなりもどかしい状態ではあったのですが。とりあえず「一言でもモンゴル語を使う」という目標は、この程度でも達成です(笑)


休憩時間には、お馬はB君に足を縛られて遠くに行かないようになっています。でも、一頭だけ、縛らなくても遠くに行かない子がいます。それが、甘えん坊の鹿毛くん。以前に行った時も、ぶち子はどこにも行かないからと、縛られることはありませんでした。

さて、お馬同士はつながれているわけではないのですが、なぜかみんなくっついて団子のようになります。モンゴルのお馬はくっつくのが好きみたいですね。ほかのお馬の首や背中に、自分の首を乗っけて休んでいるみたいです。乗っけられているほうも、別に嫌がるでもなく、そのままにしています。歩いているときも前のお馬に鼻先を擦り付けて進んだりするんですよ。


さて、天の川キャンプを出て、一時間も常歩(なみあし:普通に歩く)をしたかしないうちにホスタイ国立公園に入りました。この日の昼ごろ、厚い雲が出て来て遠くで雷がなり、雨がパラりと落ちてきましたが、すぐやんで晴れてきました。今日の宿泊は、ホスタイのツーリストキャンプで、夕方にはタヒ見学が予定されていました。もう公園に入ったのか〜〜と思ったのですが、ここからキャンプにたどり着くまで、まだ7時間、馬で進み続けることになるとは、だれも予想だにしていませんでした。

ホスタイ国立公園は、地球上で唯一生き残っている野生馬「タヒ」プルツェワルスキー馬(Przewalski's wild horse)を保護しているところです。保護活動を始めて、今年でちょうど20周年だそうです。当初、野生のタヒがいなくなっていたのを、ヨーロッパなどの動物園から還してもらったりして、野生に戻したそうです。タヒはモンゴル語で「精霊」という意味だそうです。私は、今回の旅の楽しみがタヒを見ることでしたので、とても楽しみにしていました。


ただ、ここは公園内なので、通常の遊牧の動物はあまり多くなく、かえって今まであちこちに見えていた動物の姿はほとんど見られません。それでも、昼食を食べたところのはるかかなたの山の中腹に、飼われている馬の群れがいたりしました。

時々、お水休憩を取りながら、楽しく歩いていた夕方5時過ぎ、先頭のB君が遠くに1頭タヒの姿を発見。念願の、野生のタヒです!わ〜い!どうも、1頭だけでいるようで、こちらの馬の姿を見つけて近寄ってくる様子。ちょうどいいので、馬を下りて休憩がてらの撮影タイムとなりました。

野生馬にしては、ずいぶん近くまで寄ってきてくれたので、はっきり姿を見ることができました。テレビや、写真や、動物園では見たことがありますが、野生で生きているタヒを見るのはもちろん初めて。感動しました。普通の蒙古馬より、頭が大きめで、鼻先は白っぽく、体は河原毛で鬣と尻尾は黒。鬣は刈ってもいないのに自然に立っています。背中には鰻線(まんせん)きれいに出ていました。また、シマウマのような横線が足に出る場合もあるようですが、今回見たタヒたちには、はっきり出ているものはありませんでした。
毛色や鰻線に興味のある方は、こちらでご覧ください。モウコノウマ、シマウマ、ロバ、Dun


このタヒが、どう特別なのかというと、人が乗ったり馬車などで使役している馬と、この野生馬とは、遺伝子の数が違う、つまり生物的に違う生き物なのだそうです。アメリカのマスタングや、オーストラリアのブランビーなどは、家畜の馬が野生化したもので、種類としての野生馬ではないそうです。使役できる馬は、ポニーでも、道産子でも、サラブレッドでも、シャイアーでも、ばんえい競馬の大きなお馬でも、みんな遺伝子の数が同じ。しかしタヒはシマウマのように、別の種類で調教はできないと言われています。もちろん、遠い遠い枝分かれする前の祖先は同じだったはずですけれども。


彼は仲間が恋しいのか、しばらくそばをうろうろしてから、ゆっくり去っていきました。でも、私たちの馬が進み始めて、いなくなってしまうのが遠くから見えたのか、ひと声ひーんと嘶いていました。ちょっと、切ない声でした。

  私たちが、タヒで盛り上がっている間、お馬たちはもりもりと草を食んでいました。中でも、超マイペースの鹿毛くんは、寝っころがって食べていました。背中の鞍などまったく気にしていません。なかなかのつわものです。


この日はほとんど一日中常歩で進んでいたので、なかなか距離がはかどらずかなり疲れました。夕方になるのにまだ目的地に着きません。それに、私の乗った栗毛くんは、とってものんびり屋さんで、一番後ろでほかのお馬よりゆっくり歩くのが好きらしいのでした。時々前のお馬から距離が離れてしまいます。鞭は無いので、しょうがないので後ろ手に手でお尻を叩いて(笑)進んでもらいました。時々、手が鞍にぶつかってしまって痛かったです。
前回モンゴルで乗ったお馬は、どの子もとても軽くてすいすい進むし、走るのが大好きな子もいてとても楽だったので、そのイメージが強かったせいで、ギャップが大きすぎたのもあり、余計疲れてしまったのかもしれません。そんなわけで、一日目は栗毛くんとうまく折り合いがつかず、彼にもストレスを感じさせてしまったかもしれません。ごめんね。

やっと、目的地に近くなってきた頃、体調に不安のあったNさんがリタイア。荷物を積んでついて来ていた車で行くことになりました。ガイドさんも一緒に下りたので、空になった2頭の馬は、B君が引いて行きます。
ガイドさんもいなくなったことだし、いい加減ちょっと走りたくなったので、私は栗毛君を励まして先頭のB君を追い越して駈歩をしてみました。お馬もずっと常歩で飽きていたのか、結構いい感じで走ってくれました。起伏のある自然の草原の中を馬で走るのは、やっぱり気持ちがいいです。みんなも一緒にひとしきり駈歩で進んでやっと宿泊するところが見えてきました。このころには夕方になってきて、低い丘の影も地面に延びて、時々日陰を歩くことができてほっとしました。お天気がいいのはいいけど、まるで日陰が無いのが草原のつらいところです。
今思えば、低い丘でも夕方には影ができるという事がわかったのも、新しい発見でよかったです。

キャンプの近くでは、普通のゲルに住んでいる住民の人もいて、番犬を飼っています。私たちが近づくと、犬が吠えかかってきてちょっと驚きましたが、すぐに戻って行きました。民家に近づくときは、やはり気を付けないといけません。

ここ、ホスタイ国立公園は、とても広く観光客もとても多かったです。宿泊はゲルですが、食事はコンクリートの建物でした。大きいバスで来ている団体さんもいて、朝からバーベキューセットのようなものを広げたりしていました。

ここはアルバイトの若者が多く働いていて、モンゴル語で話しかけたら、英語で返事をされてしまいました。質問は通じたという事らしい(笑)日本でも、外国人に日本語で話しかけられても英語で答えてしまうってことがよくあるので、何処も同じだなあと思ったことでした。


キャンプに着くのが遅くなったので、タヒ資料館を見ることができなかったのはとても残念でしたが、生きているタヒの見学にはいくことができました。
キャンプから車でタヒが住んでいる方へ行くのですが、ものすごい起伏のある道で、ジープじゃないのに大丈夫かしらと思うほどでした。野生ですから、最悪見られないこともあるという話で、なかなか見つからずあきらめようかと思いだしたころに、遠くの方に小さい群れがいました。車を止めて双眼鏡でみていると、だんだんこちらに近づいてきます。夕暮れなので写真はあまりよく撮れませんでしたが、私たちの近くで水を飲んだり、草を食んだりしていました。肉眼でも十分観察できる距離で、とても嬉しかったです。行って良かった〜〜☆


このタヒたちには、鰻線が有るか無いかはよく見えませんでした。上からの角度でないと、なかなか分かりにくいのです。お耳の形は、蒙古馬と同じように少し横を向いた逆ハの字型ですね。


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